SSブログ
2011年公文書管理問題 ブログトップ
前の10件 | 次の10件

【連載】情報公開法改正案解説 第4回 第18条~第21条、第26~28条 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回←ココ  / 第5回4/30更新 / 第6回5/1更新

震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、数回かけて法律案に沿って解説を行いたいと思います。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第4回 第18条~第21条、第27、28条

今回は内閣総理大臣関係の条文をまとめて。
なお第19条は技術的な変更のみなので略。

まず、第18条と第21条を理解するために、簡単に不服申立制度について説明。

請求者が情報公開請求し、その結果に納得がいかない場合、不服申立を行うことができる。
申立以後は簡単に述べると次のような流れになる。(その決定をした行政機関をAとする)

①請求者が行政機関Aへ不服申立
②Aは情報公開・個人情報保護審査会へ諮問
③審査会が審議をし、答申
④Aが答申に基づいて最終決定
⑤請求者に通知

これが前提の知識。

(審査会への諮問)
第18条→不服申立に対する諮問義務

2 前項の規定により諮問をした行政機関の長は、当該諮問に係る不服申立てがあった日から当該諮問をした日までの期間(行政不服審査法第二十一条(同法第四十八条において準用する場合を含む。)の規定により補正を命じた場合にあっては、当該補正に要した期間は、算入しない。以下この項において「諮問までの期間」という。)が九十日を超えた場合には、第二十七条第一項の報告において、諮問までの期間及び諮問までの期間が九十日を超えた理由を記載しなければならない。

新設された条文。
不服申立を行った際、上記②の「諮問」までの日数を90日以内とし、これを超える場合には内閣総理大臣への理由説明を義務づけるとしたもの。

すでに「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立て事案の事務処理に関する取扱方針」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)によって、諮問までの期日は、改めて調査する必要のないものは30日、調査をしても90日を超えないようにし、90日を超える場合、総務大臣への施行状況調査の際に報告することとなっていた。
要するに、この申し合わせの内容が、法的な根拠を手に入れたということになる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(内閣総理大臣の勧告)
第二十一条 第十八条第一項の規定により諮問をした行政機関(会計検査院を除く。次項及び第二十八条において同じ。)の長は、当該諮問に係る不服申立てに対する裁決又は決定をしようとするときは、当該不服申立てに係る行政文書の全部を開示することとするときを除き、あらかじめ、その内容を内閣総理大臣に通知しなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による通知に係る諮問に対する情報公開・個人情報保護審査会の答申の内容及び第七条の規定の趣旨に照らして必要があると認めるときは、当該行政機関の長に対し、当該答申の内容に沿った裁決又は決定、同条の規定による開示その他の必要な措置を講ずべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。


情報公開・個人情報保護審査会の答申に関する内閣総理大臣の権限について書かれた条文。
上記の④の最終決定を行う際、各行政機関は答申に対して従う「義務」はない。あくまでも参考にすれば良いだけである。
しかし、答申が公表される以上、これに従わないケースはよほどのことがない限りあり得ない。
そして、各行政機関が最終的に決定を下した判断に対しては、訴訟を起こす以外にはひっくり返す可能性はほぼ無いと言ってよかった。

第1項では、④を行うとき、該当する文書に不開示部分が少しでも残っていた場合、内閣総理大臣へ内容を通知する義務が定められた。
ここで注目は、答申が異議申立を認めず、情報の不開示を維持した場合でも、内閣総理大臣への内容通知義務があるということである。

第2項は、第1項で受けた通知に対して、内閣総理大臣が積極的に介入ができるというものである。
つまり、不開示部分が残っていて、かつ第7条に定められた公益上開示した方が望ましい情報に適合する場合、内閣総理大臣が各行政機関の長に対して開示などの勧告を出すことができる。
例えば、答申に反した決定を下そうとした場合に、これに従うように勧告すること、あるいは、答申も含めておかしいと判断し、開示へと判断をひっくり返すことが想定される。

内閣総理大臣の勧告に、その部下である各行政機関の長が逆らうことは考えられないので、事実上この勧告は強制力を持ったものになるだろう。
この内閣総理大臣によって「判断をひっくり返す」というのは、かなり強力な権限なので、不服申立の答申への決定に対してしか行うことができないようになっている。

これまでは、行政機関の長が最終的な決定権を独占していたが、これによって内閣総理大臣の勧告によってその決定権に介入が可能になったことになる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(開示請求をしようとする者に対する情報の提供等)
第二十六条(略)
2 内閣総理大臣は、この法律の円滑な運用を確保するため、開示請求に関する総合的な案内所を整備するものとする。

(施行状況の報告等)
第二十七条 行政機関の長は、この法律の施行の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
2 内閣総理大臣は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、その概要(第十八条第二項に規定する九十日を超えた場合における報告については、諮問ごとに、同項の規定により記載しなければならないとされる事項)を公表しなければならない。


第26条と第27条は、元々総務大臣が管轄していたもの。第27条は新設されたことになっているが、旧第23条にあたる。
今回の法改正で、情報公開法を管轄する機関が、総務省から内閣府へと変更になった。
これは、この法律が各行政機関全体に対するものであること、さらに内閣府管轄の公文書管理法との一体的な運用をすること、また内閣総理大臣の勧告権などが加えられたということといった理由があるためである。
このために、内閣府設置法や総務省設置法の改正が盛り込まれた(管轄を変更)。

そこで、これまで総務大臣が行っていた総合的な案内所の整備や各行政機関から法律の施行状況について報告を内閣総理大臣が受けることになった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(内閣総理大臣の勧告)
第二十八条 内閣総理大臣は、この法律を実施するため特に必要があると認める場合には、行政機関の長に対し、情報の公開について改善すべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。


新設された条文。公文書管理法第31条とほぼ同文。
情報公開法においても、内閣総理大臣による勧告権を作った。
もし情報公開法の運用で問題が生じた場合、内閣総理大臣から各行政機関の長に勧告を行えるようになった。


行政透明化検討チームの議論を見ると、これらの内閣総理大臣の権限の強化の目指す先には、情報公開法第7条の「公益裁量開示」を実効性のあるものにするということというところがあるようである。
「公益裁量開示」は、各行政機関の長が、第5条の不開示規定に適用のある情報であったとしても、公益に資すると判断した場合、これを開示させることができるという制度である。
しかし、自分たちが「不開示」にしたものを大臣がひっくり返すというような事態はあまり起きなかった。
珍しいケースとしては、先日外務省で公開されたいわゆる「密約」関係の文書の開示が、大臣による「公益裁量開示」にあたるだろう。

そして、今回の改正案では、審査会答申への決定に対する勧告には限定しているが、第7条を利用する形で内閣総理大臣が行政機関の長の決定に介入することができるようにした。
また、情報公開法の運用上問題が起きた場合の勧告権も内閣総理大臣に付与した。

ただ、これがどこまで機能するかはよくわからない。
このあたりは、国会できちんと話を詰めないと、形だけはあるけど実効性は無いということになりかねないかなと思う。

次回へ続く。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

【連載】情報公開法改正案解説 第3回 第9条~第16条 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
第1回 / 第2回 / 第3回←ココ / 第4回4/29更新 / 第5回4/30更新 / 第6回5/1更新

震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、数回かけて法律案に沿って解説を行いたいと思います。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第3回 第9条~第16条

(開示請求に対する措置)
第九条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示するときは、その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨及び開示の実施に関し政令で定める事項を書面により通知しなければならない。
2 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。
3 前二項の規定による通知(開示請求に係る行政文書の全部を開示するときを除く。)には、当該決定の根拠となるこの法律の条項及び当該条項に該当すると判断した理由(第五条各号に該当することを当該決定の根拠とする場合にあっては不開示情報が記録されている部分ごとに当該決定の根拠となる条項及び当該条項に該当すると判断した理由、開示請求に係る行政文書を保有していないことを当該決定の根拠とする場合にあっては当該行政文書の作成又は取得及び廃棄の有無その他の行政文書の保有の有無に関する理由)をできる限り具体的に記載しなければならない。

第9条は情報公開請求に対する返事の仕方を定めたもの。
改正案では第3項が新たに追加された。
これは、これまで不開示決定の理由の説明が不足していて意味がわからないということから入れられたものである。

私もよく不開示決定を受けるのでこの点についてはよくわかる。
例えば、宮内庁では、個人情報で不開示の場合、「特定個人を識別することができる情報が記録されている部分があり、情報公開法第5条第1号に該当するので、当該部分を不開示にした」という文面が付いてくる。
これは、「1号が適用されたよ」ということを説明しているだけで、「なぜ1号が適用されたのか」という説明には全くなっていないことがわかる。
また、1号と4号が一緒に適用されていた場合、どの墨塗り部分が1号で、どの墨塗り部分が4号なのかということについては、特に記載されることはない(聞けば教えてもらえるが・・・)。

今回の改正で、行政機関側は不開示部分毎に理由を説明をすることとなり、さらに、「不存在」を理由とした不開示の場合、「なぜ存在しないのか」を説明しなくてはならなくなった。
そもそも作ってないのか、作ったけど廃棄したのか、などなど。

この項目を入れたことによって、安易な不開示・不存在といった回答が減るものと思われる。
一つ一つの情報に説明責任が問われるということになるからである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(開示決定等の期限)
第十条 前条第一項及び第二項の決定(以下「開示決定等」という。)は、開示請求があった日から十四日(行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日の日数は、算入しない。)以内にしなければならない。ただし、第四条第二項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を三十日以内に限り延長することができる。この場合において、行政機関の長は、開示請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
3 開示請求者は、第一項に規定する期間内に開示決定等がされない場合であって前項の規定による通知がないとき、又は同項に規定する延長後の期間内に開示決定等がされない場合には、次条第一項後段の規定による通知を受けた場合を除き、行政機関の長が開示請求に係る行政文書について前条第二項の決定をしたものとみなすことができる。

第10条は開示決定の期限について。
これまでは、30日+延長30日だったものが、14日(土休日除く)+延長30日に変更になった(第1、2項)。
速度が上がるのは歓迎。

第3項は新設された。
これは、行政機関側が「この日までに出しますよ」と通知した期限を破った場合、「全て不開示にされた」とみなして訴訟などの対応が取れるということである。

この規定は、私がこのブログを作るきっかけになった宮内庁との裁判をやったときに問題になったところである。
私の事例は、特例期限を宮内庁が破ってから3年以上経過した文書がいつまでも開示されないので、行政事件訴訟法の「不作為」(仕事をさぼっているんじゃないか?)の規定を使って裁判を起こした。
ただ、このような訴訟の方法だと、判決が出る前に相手が頑張って開示してしまえば、その「不作為」自体が消滅するので、裁判自体が続けられなくなる。
また、この場合、無理矢理相手が「不開示部分」を多くした状態で開示してきた場合でも、裁判は終わってしまう。
つまり、裁判を起こしても、結局相手を「急がせる」だけの効果しかない。

これが、「みなし不開示」を入れると、「不作為」で裁判をするのではなく、「不開示」に対する「開示要求」として裁判を起こせることになる。
そうすると、その後、文書開示が進んだとしても、裁判を起こした当時に行政機関が「不開示」を決定したのだと「みなす」ことができるので、そのまま「不開示」の可否について裁判を続けることが可能となるのだ。
もしこの規定があったならば、私の裁判もかなり様相が変わったことだろうと思う。

ただ、この規定はあくまでも「みなしても良いよ」という規定なので、行政機関側が期日に間に合わなかったからといっても「違法」になるわけではない。
理由に納得して「待ちましょう」となればそのまま待っても良い。
ただ、いつでも裁判や審査会に訴えることが可能になるので、期限を守ることに対する行政への心理的な圧力になるだろうと思われる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(開示決定等の期限の特例)
第十一条 開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、前条第一項に規定する期間に三十日を加えた期間内にその全てについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、同項及び同条第二項の規定にかかわらず、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし、残りの行政文書については第十六条第五項の規定による予納があった後相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合において、行政機関の長は、前条第一項に規定する期間内に、開示請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一 この項を適用する旨及びその理由
 二 残りの行政文書について第十六条第五項の規定による予納があった日から開示決定等をする日までに要すると認められる期間
2 前項の規定により行政機関の長が開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき開示決定等をした場合における第九条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項中「その旨及び」とあるのは「その旨及び第十六条第五項に規定する見込額その他」と、同条第二項中「その旨」とあるのは「その旨及び第十六条第五項に規定する見込額」とする。
3 開示請求者は、第一項第二号の期間内に開示決定等がされない場合には、行政機関の長が同項の残りの行政文書(第十六条において単に「残りの行政文書」という。)について第九条第二項の決定をしたものとみなすことができる。


第11条は、第10条の日数でも開示が不可能な場合に関する規定。
第1項は、第11条適用の際、第10条に定められた14+30日の間に一部を公開した上で、全部の処理が終わる期日を通知しなければならないことを決めたもの。後述する「予納制度」が新たに加えられた。
第2項は、一部を公開した際に、見込額も通知しろということ。
第3項は、第1項で決めた開示日を破った場合、「みなし不開示」と見なしてよいということ。第9条第3項と同じ内容。

これまでと大幅に異なるのは、「予納制度」ができたことにある。
「予納」とは、請求している資料の開示の際に必要な手数料(複写代など)をあらかじめ納入させる制度である。
詳しくは第16条第5項から第7項に規定されている。
ついでなので、先に紹介しておく。

5 第十一条第一項の規定により行政機関の長が開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき開示決定等をした場合には、開示請求者は、政令で定めるところにより、第九条第一項又は第二項の規定による当該開示決定等の通知があった日から三十日以内に、残りの行政文書の全部を開示するとした場合の開示実施手数料の額の範囲内で政令で定める額(次項及び第七項において「見込額」という。)を予納しなければならない。
6 前項の規定により見込額を予納した者は、当該見込額が残りの行政文書について納付すべき開示実施手数料の額(次項において「要納付額」という。)に足りないときは、政令で定めるところにより、その不足額を納めなければならない。
7 第五項の規定により予納した見込額が要納付額を超える場合には、その超える額について、政令で定めるところにより、還付する。ただし、残りの行政文書についての開示決定に基づき行政文書の開示を受けることができることとなった者が第十四条第三項に規定する期間内に同条第二項の規定による申出をしない場合において、行政機関の長が当該期間を経過した日から三十日以内に当該申出をすべき旨を催告したにもかかわらず、正当な理由がなくこれに応じないときは、この限りでない。


第16条第5項は、請求者が、第11条第2項で算出した見込額を30日以内に払わないと、請求そのものが取り消しになるという内容。
第6項は最終的に足りなかった場合には追加料金を取ること、第7項は逆に余ったら返すということが決められている。

この「予納」制度は、明らかに「大量請求」への対策という意味を持っている。
検討チームで話題になっていたのだが、大量請求して開示決定を受けても、それならば要らないとばかりにそのまま決定を放置する人がいるらしい。
なので、大量請求をする人から「担保」を押さえておくというのがこの制度の主旨である。
そのため、第7項では、開示決定後に返事をよこさない人には「担保に取った金を還付しなくてもよい」という項目が加えられている。

ただし、あくまでも「返事をするかどうか」で還付が決まるので、「全部見ない」という返事をしても一応還付は受けられる。しかし、それこそただの「嫌がらせ」であり、これは「権利の濫用」と言われても仕方がないだろう。
部分的に先に開示されるわけだから、それを見た上で、請求者側は続けるか否かを判断するべきだと思われる。

なお、この第11条の適用について、検討チームの「とりまとめ」では次のように書かれている。

 なお、現行法の運用上、当該特例規定の適用要件である「開示請求に係る行政文書が著しく大量」か否かにつき、解釈上、「一件の開示請求に係る行政文書の物理的な量とその審査等に要する業務量だけによるわけでなく、行政機関の事務体制、他の開示請求事案の処理に要する事務量、その他事務の繁忙、勤務日等の状況をも考慮した上で判断される」とされており、行政機関等においては、大量開示請求に対応する体制の整備をすることなく、事務体制や繁忙等をも理由として当該特例規定を適用することまで正当化されている。そこで、当該特例規定の解釈上、「開示請求に係る行政文書が著しく大量」かどうかは、「一件の開示請求に係る行政文書の物理的な量とその審査等に要する業務量だけによる」ものとして、限定する。(8ページ)

これまで、この第11条による延長措置を取る場合、請求された文書量が多いか否かだけで決められていたわけではなく、「他の事務が忙しいから」ということも理由とできた。
なぜなら、情報公開法の施行時に総務省が作ったマニュアルにそのように書かれていたからである。そのために、そもそもバックアップ体制が不十分なために請求を捌けていないのに関わらず、遅延の不利益を請求者側に押しつけることが行われていた。

検討チームは、あくまでも、請求された文書の「物理的な量」や「審査等に要する業務量」だけで開示までの期日を決めろと主張している。
これを強く主張することは、各省庁に対して、情報公開への体制を整えさせる理由となるので、国会において首相や行政刷新相あたりの言質を取っておいた方が良いと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第12条の2→略。独法への事案移送のことなのだが、何が変わったのか良くわからない。あまり重要な所ではないので説明を省く(というかできない)。

第13条→略。技術的に条文を書き換えただけ。内容変化なし。

第14条→略。大量請求対策との関わりで、微妙に表現が変わっているが、これまでの説明以上に加えるような内容はないので、説明は省く。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(手数料)
第十六条 次に掲げる者が開示請求をするときは、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料(第八項において「開示請求手数料」という。)を納めなければならない。
 一 会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第一号に規定する会社、同条第二号に規定する外国会社その他これらに類するものとして政令で定める法人(第三号において「会社等」という。)又はその代理人
 二 営利を目的とする事業として若しくは当該事業のために開示請求をする当該事業を営む個人(次号において「個人事業者」という。)又はその代理人
 三 会社等若しくは個人事業者の事業として又は当該事業のために開示請求をする当該会社等の役員若しくは従業員又は当該個人事業者の従業員
2 行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の開示の実施に係る手数料(以下この条において「開示実施手数料」という。)を納めなければならない。
3  開示実施手数料
の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならない。
 行政機関の長は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、開示実施手数料を減額し、又は免除することができる。
5~7 前述
8  開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、それぞれ、開示請求手数料又は開示実施手数料のほか、送付に要する費用を納付して、第九条第一項若しくは第二項の規定による通知に係る書面又は行政文書の写しの送付を求めることができる。

第16条は手数料に関する条文。
まず第1項は大きな変更。
開示請求のための手数料は、これまで300円(ネット申請は200円)だったが、基本的に0円になる。ただし、①会社、②営利目的の個人事業者、③①②の事業として開示請求する社員、についてはこれまで通り手数料が必要となる。
情報公開は国民の権利であるのだから、請求するのにお金を必要とするのはおかしいということで無料となった。
しかし、営利目的で情報公開を使う人たちのコストまでを行政が負担するのは問題があるということで、これについては手数料を徴収することになった。

ただし、前述したように、情報公開法は目的を問わないというのが大原則であるので、会社からの請求はすべて有料などといった一律での料金徴収となった。
会社については、送付先が会社であればすぐにわかるので問題ないが、②が個人名で自宅を事業所兼としていた場合などは簡単ではないだろうなとは思う。
ただ、実際にこの手数料は複写代として使うことができる(300円手数料を払っていた場合、複写代300円まではこの手数料から支払われる)ので、実際にはそれほど混乱は起きないかなという気もする(無理に個人を装わなくても、それほど実害がない)。

第2項は開示実施手数料を定めている。
請求にはお金がかからないが、見るにはお金がかかるということ。
この費用は政令で定まる(閲覧代や複写代など)。
これまでは、閲覧する場合も100枚毎に100円取られており、この値段がどう変わるかが気になる。
複写代の自己負担は仕方がないとは思うが(紙代のコストは請求者が負担しないと、他の請求しない人との公平性が著しく偏る)、閲覧だけなら無料でしても良いのではないかと思うのだが。

第3項は前と同じ。
第4項も前と同じなのだが、検討チームの「とりまとめ」では、「経済的困難その他特別の理由」の「その他特別」に、学術的利用、報道機関の代表による利用等を含めるべきではないかという主張がなされている(9ページ)。
これが導入されるかは、自分にとっては結構切実な問題ではある。

第5項から第7項は第11条のところを参照。

第8項はちょっと問題あると思う条文。
まず、そもそも日本語としてどこで切れるのかがさっぱりわからない。
「のほか」の次か「納付して」の次かとは思うんだが・・・

ただ、少なくとも分かるのは、第9条第1項、第2項の通知を受けるための送料を請求者側が負担しなければならないというのはわかる。
第9条第1項と第2項は、開示(不開示)決定の際に、書面で通知する義務を各省庁に課している。
それなのに、その書面を送付する送料を、請求者の側に課している。
これは、第9条第1項、第2項の主旨に明らかに反していないだろうか。

もし、請求者が送料を送付してこなかった場合、第9条第1項、第2項の各省庁側の義務はどのようにして果たすつもりなのだろうか。
請求者に不備があるとして、請求そのものを却下するつもりなのだろうか。
請求者側だけでなく、各省庁も80円切手を貼られた封筒を1枚1枚保管しなければならない。
しかも書類がちょっと重くなったら80円で足らないかもしれない。その場合あと10円送れとでも言うのか?
いずれにしろ、手間だけかかって全く実益があるとは思えない。

この第9条第1項、第2項にかかる部分は必ず削除するべき。
これは双方にとっても絶対に利益になるはずだと思う。

全体として、この第16条に関する事項は、政令で定めるものが多い。
政令(施行令)は国会で審議されないが、手数料については重要な問題をいくつもはらんでいるので、是非とも国会で内閣府からきちんと内容について説明させた方がよいと思う。

次回へ続く。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

【連載】情報公開法改正案解説 第2回 第5条第1項~第6条 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
第1回 / 第2回←ココ / 第3回 / 第4回4/29更新 / 第5回4/30更新 / 第6回5/1更新

震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、数回かけて法律案に沿って解説を行いたいと思います。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第2回 第5条第1項~第6条

第5条→開示しない情報について定めた条文

第1項 「個人に関する情報」
→下記の部分は、開示しない情報の「例外」を定めた部分(つまり開示する情報)

ハ 当該個人が公務員〔中略〕である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分(当該氏名を公にすることにより当該公務員等の職務遂行に支障を及ぼすおそれがある場合又は当該公務員等の権利利益を保護するため当該氏名を公にしないことが必要であると認められる場合にあっては、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分)

ニ 当該個人行政機関に置かれた審議会その他の合議制の機関又は行政機関において開催された専門的知識を有する者等を構成員とする懇談会その他の会合において意見の表明又は説明を行った場合において、当該情報が当該意見表明又は説明に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該個人の氏名及び当該意見表明又は説明の内容に係る部分(当該個人の権利利益を保護するため当該氏名を公にしないことが必要であると認められる場合にあっては、当該意見表明又は説明の内容に係る部分)


個人情報に関わる部分で2点改正があった。
「ハ」については、公務員の氏名は公開しましょうということ。
ただし()のような場合(例えば暴力団対策などの業務)、職名と業務内容のみ公開(氏名は非公開)にできる。

すでに、2005年8月3日の「各行政機関における公務員の氏名の取扱いについて」(情報公開に関する連絡会議申合せ)において、公務員の氏名は原則公開となっている。
なお、警察は警視以上のみが公開されている。上記の()の除外規定が使われていると見なしてよいだろう。
よって、現在の公開方法に法文が追いついただけである。

「ニ」は今回新設されたもの。
行政機関が主催する審議会などに出席した人の名前と発言は、原則公開するということである。
出席した人は、公務員であるか否かを一切問わない。

なお、行政機関において「開催された」会合という表現があるので、私的に専門家を大臣室に呼んで話を聞いたというレベルのことでも公開の対象となる。
公開されるのが嫌なら料亭とかで話を聞くようになるんだろうが・・・

最近では審議会の議事録の多くはネット上に上げられるようになってきたが、「公務員でないから」といって名前を隠したり、発言内容を隠したりするようなことは一部ではまだ残っている。
これを原則的に許さないということである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二 法人その他の団体〔中略〕に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。

第2項は法人情報についての不開示規定。
ここの修正は、これまで「イ」「ロ」と2つあった不開示規定のうち、「ロ」が削られて、残った「イ」を前に繋げただけである。
よって、青字の部分は新たに加わった文章ではない。

これまで、第5条第2号ロでは、行政機関が法人から「公開しないから情報下さい」と約束して貰ってきた情報は公開してはならないという規定があった。
この部分を削除するということである。

この改正は、「情報は時間が経つと劣化する」という概念を組み込んだものと言える。

つまり、これまでは「公開しませんよ」と約束してもらった情報は、たとえどのくらい時間が経過しても、約束に従って公開できなかった。
でも、本来、公開するか否かは「その情報の内容」によって決まるべきものである。
今回の改正は、まさにこの「内容」によって開示かどうかを決めるということであり、もらったときの契約は関係ないということである。

行政の政策決定には、さまざまな民間からの情報提供があって作成されている。
この根拠となるデータが非公開のままだと、政策決定過程の検証が行えないのである。
つまり、この条文の改正は、政策決定過程の公開を目的としているのだ。

なお、この条文改正によって、民間側が行政に情報提供を渋る可能性がありうる。
提供した情報を勝手に公開されるのではないかという危惧を抱くためだ。
だが、情報を隠さないと提供者に被害をもたらす可能性のある文書については、第2号の残った条文や第6号といった別の条文で非公開にすることになるので、情報が垂れ流しになるわけではない。
行政側は、こういったことをしっかりと情報提供者に伝える必要があるだろう。

また、今回の改正案の附則の第2条第2項で、情報公開法改正前に非公開の契約があった場合は、その契約は有効との記載がある。つまり、前に遡って契約を破棄しないということである。
遡及して法律は適用しないというのは法律の世界では当然なので、これは仕方がないかなと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき十分な理由がある情報
四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき十分な理由がある情報

第3項は外交関係、第4項は公安関係の情報。
「相当の」となっていた部分を、「十分な」という表現に変えた。

この条文は、検討チームでものすごく議論になった部分。
現在の情報公開法は、これらの情報について、「行政機関の長」、つまり警察庁長官や外務大臣、防衛大臣が不開示にすると「決定した」ことは、ほぼ絶対であった。
また、「おそれ」という裁量が利く根拠で良かったが故に、不開示が広く適用されるケースが多く、本当は隠さなくても良い情報までも隠しているという疑いがぬぐえなかった。
また、「おそれ」を根拠としている以上、その不開示を撤回させるためには、おそれが無いことを開示請求者側が立証しなければならなくなり、裁判などで争うこと自体が困難な状況になっていた。

そこで、ここに風穴を開けるために、行政刷新相の当初の案では「行政機関の長が認めることにつき」を削除するとしていた。
つまり、行政機関の長の意見を優先するという部分を削除しようとしたのである。

そのため、この部分を削ろうとする改正には、警察庁、外務省、防衛省の強い抵抗がおきた。
7月9日の検討チームのワーキンググループ会合の議事録を見てもらえばわかるが、彼らは「公安や外交は専門的な見地が必要であり、自分たちの判断が尊重されるべきだ」と主張した。
これに対して、各委員が「裁判所だってあなたたちの説明の筋が通っていれば、あなたたちの判断を尊重しますよ」といった反論を繰り返していた。

しかし、結局押し返されて、「とりまとめ」では「「相当の理由」とあるのを、「十分な理由」に厳格化する」という記載で決着がついた(2ページ)。
そして、法文でもそれが反映された。

この部分については、国会でもう一度きちんと議論をするべきだろう。
そもそも、「相当の」を「十分な」に変えたことで、何が具体的に変わるのかをきちんと詰めておく必要がある。
「行政機関の長」が「おそれ」を理由として不開示にできるという項目が残った以上、裁量権をできる限り狭めるための方策はきちんと取る必要があるだろう。

また、インカメラ審理の部分で解説するが、外務省等の抵抗はここで済まなかった。
検討チームの「とりまとめ」の意図に反する条文を、裁判に関する部分に挿入していくことになる。それは後述する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

第5号からは「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」が削除された。
「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」を判断するのが行政側なので、それはおかしいでしょうということ。
不開示にするなら別の項目で処理できるということもあり、検討チームでもほとんど議論にならなかった。そのまま削除することに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(部分開示)
第六条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されているときは、開示請求者に対し、不開示情報が記録されている部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該不開示情報が記録されている部分を区分して除くことが困難であるときは、この限りでない。

これは「情報単位論」(独立一体説)というのを否定するために書かれた部分。
法律学のマニアックな話になるのだが、情報公開訴訟の判例で、「開示されるべき情報」であるにも関わらず、他の情報と一括して考えると不開示情報が含まれていると解釈することが可能となるので、その「開示されるべき情報」すらも不開示にできるという判決が最高裁で出てしまった。
情報公開法では、本来区分けできる情報であるならば、「開示されるべき情報」は開示することが決まっている。しかし、裁判官の不勉強だったのか判決で認められてしまったらしい。

今回の改正で、この「情報単位論」の判決が二度と出ないように、誤解を生まない条文に変えようということがこの部分の主旨である。
なので、特に利用者側に不利益になるような改正ではない。

次回に続く。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

【連載】情報公開法改正案解説 第1回 第1条~第5条冒頭 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
第1回←ココ / 第2回 / 第3回 / 第4回4/29更新 / 第5回4/30更新 / 第6回5/1更新震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
この改正案は、昨年、行政刷新相の下で開催されていた「行政透明化検討チーム」の「とりまとめ」をベースとして作られたものです。

この「とりまとめ」については、すでに3回に分けて解説を行ってます。

「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9

今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、これから数回かけて、法律案に沿って解説を行いたいと思います。
なお解説は、行政機関情報公開法に基づいて解説します。独法の方は、違う部分のみ追記する予定です。
相変わらず長い文章になりますが、法律文そのものが長いので、そのあたりはご容赦のほどを。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第1回 第1条~第5条冒頭

(目的)
第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利及び行政機関の諸活動に関する情報の提供につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって国民の知る権利を保障し、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民による行政の監視及び国民の行政への参加並びに公正で透明性の高い民主的な行政の推進に資することを目的とする。

行政透明化検討チームの「とりまとめ」では、第1条の目的について、次のような提言がされていた。

 法律の目的において、「説明責務」の視点を維持しつつ、「国民の知る権利」の保障の観点を明示する。
 加えて、行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法が、行政の透明性を向上させ、行政に対する国民の監視と参加に資するものである趣旨を盛り込む。


内容的にはこれに沿ったものだと言えよう。

特に、「知る権利」が用語としてきちんと入ったことに注目。
公文書管理法制定時には、この「知る権利」を入れるかどうかで論争があった。
結局、「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」という言葉で、事実上の「知る権利」をなんとか組み込むことに成功した。
しかし、「知る権利」という言葉自体は、おそらく内閣法制局の抵抗もあり(最高裁の判例でまだ確定していないため)、組み込まれなかった。
今回の改正案で、ついに法制局が落城したと言ってよいだろう。

また、後半部の「国民による行政の監視及び国民の行政への参加」という部分は重要な変更である。
特に「参加」という言葉が重要。

現在の情報公開法の第1条では、この部分には「国民の的確な理解と批判の下にある」という言葉が入っている。
つまり、行政側が国民への説明責任を果たすという主旨で書かれており、国民の側はあくまでもその説明に「理解と批判」を加えるにすぎない。

そこに「参加」という国民の側を主体にした文章が組み込まれることになる。
これは、情報公開とはそもそも何のためにあるのかという理念と関わる。

情報公開は、ただ単に行政を「監視」をするためだけにあるのではない。
公務員側が持っている情報を積極的に公開することで、国民の側がそれに基づいて意見を積極的に打ち出していくことこそが情報公開の本来の意味であり、それこそが「民主主義」の原理である。

この部分を変えたことで、国民は「受け身」ではなく、積極的に行政に関わっていく「主体」と位置づけられることになったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(行政文書の開示義務)
第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。ただし、当該開示請求が権利の濫用又は公の秩序若しくは善良の風俗に反すると認められる場合に該当するときは、この限りでない。

第5条は、行政側が開示しないようにすることができる情報を定めた条文。

この冒頭に加えられた部分は、検討チームの「とりまとめ」には無かったもの。
請求者側が次のようなことをした場合、文書開示を行政側が拒否できるということが加えられた。

①権利の濫用・・・想定されているのは大量請求のことだと思われる。一人で100件とか請求したり、また数万ページにわたるような文書を請求した場合など。
②公の秩序、善良の風俗に反する・・・一般事務を混乱させるような請求(①に近い)や犯罪行為のための請求などが当てはまるものと思われる。

だが、これを法的に定めることはそもそもおかしい。
まず、②については、情報公開法は「利用目的を聞かない」という前提条件がある。
利用目的に合わせて開示するか否かを判断することは、行政の恣意的な制度運用につながる。
つまり、自分たちに不都合な目的(例えば訴訟の証拠とされるような情報)であれば、開示を拒否できるようになってしまう。

「いやいや犯罪行為に使われたら大変でしょう」という意見に対しては、そういった情報は第5条の他の部分(公安情報などは不開示にできる)を使えば良いことであり、そもそもそんな犯罪に使われるような情報は一般的に開示するなという話にすぎない。利用目的以前の問題である。

また、①については、次回以降に書く「手数料の減免」の話と関わっている。
検討チームの審議の際、手数料を引き下げる話が話題に出たとき、多くの省庁が「手数料を引き下げると大量に請求する人が出てくるから困る」という不安を表明した。
確かにその可能性はあるだろうということで、検討チームの「とりまとめ」では次のように記載された。

濫用的な開示請求が生じるときには、行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法を所管する府省において、他の省庁と協議し、ガイドラインを作成し、適正な運用を進めることにより対処することとする。(9ページ)

つまり、そもそもは「ガイドライン」で弾力的に判断しましょうという話だったはずである。
にも関わらず、法律の文章としてこれが登場した。
当然、法律に記載されれば、規制の強さが大きく変わってくる。

例えば、私は先日、ある資料を宮内庁に情報公開請求していた。
この文書は、最終的にはコピーにして約3000枚になった。

私はある資料群をまとめて請求しており、これは歴史研究だと当然の資料の集め方である。
歴史研究においては、簿冊全部を見て資料構造を理解しない限り、元の資料を使うことができない。

しかし、これを行政の側から見たらどうだろう。
ただの「嫌がらせ」に取る可能性がありうるのではないか。

今回の改正案で「権利の濫用」かどうかを判断するのはあくまでも「行政側」である。
しかも、そもそも情報公開法はその利用目的を聞くのは「御法度」であるのだ。
よって、これを大量請求ということで「不当」とみなし、開示を拒否できるかもしれない。

もちろんガイドラインの作り方次第ということになろうが、この場合、権利の濫用か否かを判断するためには、私の利用目的を聞く必要が出てくるだろう。
それは、利用目的を問わない情報公開法の根底を揺るがす話になる。

よって、私はこの部分の改正に反対する。
あくまでも濫用などについては、ガイドラインなどによって弾力的に反応するべきであり、法的に定めるべきではない。
なぜならば、情報公開法の趣旨に反するからである。

なおこの問題については、すでに検討チームのメンバーだった三木由希子氏が政治資金規正法との関係でブログにおいて指摘されているので参考のこと。

条文の途中だが、長くなったので次回に続く。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

国立公文書館、宮内公文書館、外交史料館利用規則まとめ [2011年公文書管理問題]

2011年4月1日から公文書管理法が施行されました。
今回は、歴史資料の保存機関である国立公文書館(NA)、外務省外交史料館(外交)、宮内庁書陵部宮内公文書館(宮内)の3館の利用規則を紹介したいと思います。

なお、すでに施行前に大まかな解説は行っています。→こちら
この時の解説の文章を改変して、最新版にしたいと思います。

利用規則は
国立公文書館
http://www.archives.go.jp/guide/regulations.html#regulations01

外交史料館
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/annai.html

宮内公文書館(このページの一番下にリンクあり)
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shinsei/kobunshokan.html

となっておりますので、そちらを参照して、下記の解説を読んでください。

基本的には3館は同じ規則で動いています。違う場合はその都度明記します。
なお、参考にした条文は繁雑になるので省略します。

・利用までの手続きの仕方

まず、私が作成した図を参照。請求から利用までのフローチャートです。
左上が始点です。

基本は2通りのルートがある。
①全面公開もしくはすでに審査が終わっている文書
②「要審査」「非公開」となっている文書


①の場合「簡易閲覧」という制度がある。
これは館に直接出向いて、その場で請求をして資料を出してもらうという手続きのことである。
②の手続きに則って行うと繁雑なので、問題のない文書は簡単な手続きで見せましょうということ。

NAや外交は今までもそうやってきたので特に変化がないと思うが、宮内がどうなるのか気になるところ。
宮内はこれまで、閲覧室の席数が少ないということで、事前に席を予約しないとそもそも中に入れなかった。
でも、規則上は簡易閲覧制度が作られているので、今後は予約しなくても入れるということなのか。
後日確認したい。

②の場合、利用者が閲覧申請を行う場合には必ず「文書」にて申請を行わなければならない。
各館のウェブサイトに閲覧申請用紙がアップロードされているのでこれを利用し、館に直接行くか、郵送して申し込む。
なお、外交は「情報通信技術」(インターネット)でも申請可能と利用等規則で定めているが、今のところ外交史料館のサイトからは、そのような手段で送る方法は記載されていない。

次に、館側は、申請書を受け取ってから30日以内に開示決定を行わなければならない。
ただし、量が多いなどの理由があった場合、+30日延長が可能。
これでも日程が厳しい場合(例えば開示文書が1万ページ以上あるとか)は、遅れる理由と開示される予定日を利用者に書面で通知する義務がある。

このやり方は、情報公開法と同様の対応となる。
よって、申請してから数ヶ月待たされるような状況は大幅に改善されるだろう(ただ、施行直後は、情報公開法の時と同じように、延長が連発される可能性がありそうだが)。

開示が決定した際には、必ず「文書」にて通知がなされる。
NAは郵送されてくるが、外交と宮内は郵送料がかかる(事前に切手を送る必要)。
当然通知がなされなければ、利用者はいつ開示になったかがわからないので、外交と宮内からはおそらく電話かメールといった手段で開示決定通知がなされるものと思われる。

こういった手間から考えても、なぜ外交と宮内が無料で開示決定通知を郵送しないのか理解に苦しむ。
パブコメも結局無視されたようだし・・・

通知書が届いた後、利用者は30日以内に「利用の方法申出書」を館に送らなければならない。
この「申出書」は、情報公開法に準じたものだとすると、「閲覧するか、閲覧せずに複写するか」「閲覧日はいつか」といったようなことを書くことになると思われる。
送付の仕方は、館に持って行くか郵送。NAはFAXも可、外交はネットで可能になるが詳細は不明。

ただし、決定書を自動的に送ってこない外交や宮内は、この手続きをどのように行わせるつもりなのかはわからない。これはおいおい利用していくうちに明らかになるだろう。

このように、閲覧までの手続きがすべて「書面」でなされるようになる。
手続きが厳密になるので、利用者がいきなり館に行って、審査が必要な資料を「すぐに見せろ!」というような無茶は通用しなくなるだろう。

なお、事前のレファレンスも受けられるので、申請する際には、きちんと各館に相談をした方が良いかと思う。
開示されてみたけど、ほしいものと違ったというようなケースは、お互いにとってもムダな労力になるので。

・不開示規定

各館に移管された文書が、すべて自由に見られるということはない。
個人情報などには、30年経ったからといって見せられないものはたくさん存在する(例えば犯罪情報など)。

各館の基準は以下のとおり。

国立公文書館
http://www.archives.go.jp/information/pdf/riyoushinsa_2011_00.pdf

外交史料館
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/riyo_shinsakijun.html

宮内公文書館
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shinsei/pdf/kobunshokan-sinsakijun.pdf

この基準は相当に細かいので、いちいち文章で説明するのは繁雑なので解説は省略。
口頭であれば解説はしますが・・・。もし疑問があればtwitterやメールで呼びかけてもらえればお答えします。
NAと外交はほぼ同文なので、片方を読めばわかります。

ただ1点、NAと外交の文末にある別表はきちんと見ておいたほうが良いかと。
個人情報を類型分けしており、どの情報がどの程度経過すると開示されるのかが分かるようになっている。
宮内が結局この別表を採用しなかったのは残念。パブコメは出したんだが・・・

なお、NAの審査基準の掲載場所は問題。「利用案内」からリンクが貼られていない。
サイト内を探しまわった結果、「情報公開」の「利用等規則等」のところにこそっと置いてあった。
私ですら検索しなければ見つからなかった所にあったので、こんな所に置いてあっても意味がない。
利用案内からリンクをきちんと貼ってほしいと思う。

・部分開示

不開示情報が文書に入っているときの対応。
墨塗り(コピーした上で、不開示部分を墨塗りする)公開が基本。ただし、利用者の同意があれば、被覆(袋とじで隠す)も可能。
前者の方が見れる情報は多くなるが時間がかかる。被覆は時間がない人向けの措置となる。

なお、NAは、墨塗りか被覆(袋とじする)かを利用者に選ばせない(外交、宮内は選べる)ことになっているが、公文書管理委員会の審議の際に、被覆は資料が全面不開示の時にしか使わないと説明があった。

なお、外交はこの部分開示のやり方をかなり細かく規定している(細則の第6、7条)。
一部の文書が全面不開示の場合、その文書をファイル(簿冊)から抜いて別置し、抜いたことが分かる用紙を挿入することにした。
これは、おそらくアメリカの国立公文書館が行っている制度を導入したものと思われる。
用紙には、おそらく「審査内容を見直すのはいつから」という期日を記載するのではないかと思われる。
また、その再精査を要求する手続きも細則に記載されている。

NAや宮内はこの制度を整備していないので、再審査を要求する場合、正規の手続きに則って利用請求の②の手続きを踏むことになるだろう。

・複写

複写については、セルフコピーの枠が拡大した。
表は私が作成した3館のセルフコピーの基準。これを参照のこと。
業者に頼んだ場合は、基本的にはどの複写手段も可能だと考えて良いと思われる(原本からの複写は、一度マイクロorデジタル化してから行う)。

ちなみに、NAは複製物(紙)から紙へのコピーを規則に想定していない。
パブコメで指摘したんだが、答えが「うちは複製物として紙媒体は使っていない」みたいな解答で・・・
部分開示の際のコピーした紙に墨塗りした文書をどうコピーするつもりなのか。その規定がないんだけどなあ・・・

なお、セルフコピーの価格は、NAはマイクロ・デジタルから紙へのコピーは30円との記載があるが、外交と宮内はネットに情報を上げていない。
これは是非とも上げてほしい情報。
業者に依頼する料金しか書いていないと、利用者にセルフはできないと誤解を与えるのではないかと思われる。
それにそもそもこの情報は利用者へのサービスとして、当然上げるべき情報だと思うが・・・

なお、3館とも利用者持ち込みのデジタルカメラでの撮影が可。もちろん無料。
NAは「順守事項等」に具体的な撮影の注意点を記載している。。
三脚の利用が禁止されているので、NA側が撮影台を貸してくれるものと推測される(貸してくれなかったら、資料を傷めるような撮影をされかねないと思うが・・・)。

・複写手数料

各館によって大幅に変わる。委託業者の価格設定によって異なるため。
各機関の利用等規則の最後のページに複写料金一覧表があるのでそちらを参照。

・異議申立

開示方法に不服がある場合、公文書管理委員会に異議申立ができる。
現在は、NAであってもNA館長にしかできないわけだから、かなり大きな変化。
これまで不開示になって見れなかったものがあった場合、再チャレンジをしてみて、ダメなら異議申立をするというのもありかと思われる。

・開館時間

NAは9:15-17:00。
外交は10:00-17:30。
宮内は9:15-17:00。昼の出納停止は特に細則に書いていないがどうなるのか・・・。昼休みに閲覧ができるようになることだけでも大きいが。

以上です。
なお、他に注目すべき所として、外交が細則にて「利用者責任」を明記したことを挙げておきたい(第9条)。
これは、外交の資料を使って問題が起きた(名誉毀損など)時は、すべて利用者が責任を取るということである。

これは私は必要な条文だと思う。
個人情報であっても、時が経過すれば公開される。だがこういった情報は、使い方によっては他人を誹謗中傷する際に利用することができる「おそれ」がある。
その「おそれ」があるから出すのを止めるというのではなく、使った方側の責任を問うのが筋だと私は思う。
「おそれ」があるから開示しないという方法を導入してしまうと、自己規制でその幅が拡大していき、数多くの文書が「せっかく保存しているのに見ることができない」ということになりかねない。
だからこそ、利用者責任は明示されるべきだと思う。

公文書管理法の施行によって、資料の開示状況や閲覧方法は大きな変化を迎えている。
これまでは見れなかった資料が見れるようになっていることもあるだろう。
是非とも、各館に足を運び、公文書管理法の力を感じてほしいと思う。
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

地域資料拡大研究会のお知らせ [2011年公文書管理問題]

追記3/12
地震により中止になったとの情報です。


知り合いの方から広報の依頼を受けたので転載。
私は行けませんが、大阪の公文書館問題についての報告もあるようですので、関西地域にお住まいの方はぜひぜひ。


*****************************************************************

地域資料研究会及び地域資料シンポ実行委員会
      関係者の皆さま

 地域資料シンポ実行委員会では、4月の公文書管理法施行とここ数年
取り組んできた大阪府・市公文書館問題をにらんで、今回、下記の拡大
研究会を企画しました。

 今回は、神奈川県立公文書館の石原一則さん(内閣府の公文書管理
委員会のメンバーでもあります)をお招きして、神奈川県での長年の経験、
公文書管理法の内容や課題、現在進行中の国による公文書管理・公開
体制の準備状況などもふまえ、今後、自治体文書館が目ざすべき方向性
について論じていただきます。

 あわせて実行委員会からの問題提起では、大阪府・市公文書館問題の
最新の状況についても紹介し、今後の課題について議論したいと思います。

 ふるってのご参加をお待ちしています。

 地域資料研究会(・地域資料シンポ実行委員会事務局)
    佐賀 朝

(転送歓迎)
……………………………………………………………………………
         ■地域資料拡大研究会(通算第2回)■

 「自治体文書館が目ざすべき道―公文書管理法施行をひかえて―」

 日時 2011年3月12日(土) 17:30~20:00ごろ
                  (◆開始時間にご注意ください)
 場所 キャンパスポート大阪(大学コンソーシアム大阪)
    (電話:06-6344-9560)
    (地下鉄梅田駅またはJR北新地駅下車、大阪駅前第2ビル4階)
     URL→http://www.consortium-osaka.gr.jp/about/access.html
 内容
   ・問題提起:地域資料シンポ実行委員会事務局
           「大阪府市公文書館問題の到達点と課題」
   ・メイン報告:石原一則氏
          (神奈川県立公文書館・公文書管理委員会委員)
           「公文書管理法と神奈川県立公文書館」

   *終了後、ささやかな懇親の場をもちます。

 主催 地域資料シンポ実行委員会
    (構成団体:あおぞら財団、大阪歴史科学協議会、大阪歴史学会、
     西山夘三記念すまい・まちづくり文庫、地域資料研究会)


 連絡・問い合わせ先:
    地域資料シンポ実行委員会事務局
    〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
    大阪市立大学大学院文学研究科日本史学教室
    (大阪歴科協 研究委員、佐賀 朝、06-6605-2398)

……………………………………………………………………………


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

国立公文書館、宮内公文書館、外交史料館への私のパブコメ [2011年公文書管理問題]

前回の続き。
国立公文書館、宮内公文書館、外交史料館が現在募集しているパブリックコメントを書いて送りました。
下記に貼り付けておきます。強調や色付けはブログ読者用に読みやすくするために付けたものです。
「→」から先は私の解説です。

基本コンセプトは「三館共通のルールにすること」です。なので、ズレがある部分に焦点を当てて、それをより良い方向に一致させる書き方をしています。

○国立公文書館利用等規則案 第11条第3項 (宮内公文書館にも同文送付)

 「情報通信技術を用いて館に送信する方法」を入れるべきである。
 利用請求者の便利を考え、利用申請にインターネットからの申し込みができるようにするべきである。システムが無くてできない場合は、早急に導入を行うべきである。

→ネットからの閲覧申請を可能にするということ。外交はOK。システムの問題なので、この意見が反映されることは無いだろうが、後に導入をきちんとはかるべきだと伝えるために送ったもの。

○国立公文書館利用等規則案 第20条第2項第1号イ 

 「用紙に複写したもの」の中に、「第8条に基づく複製物」も加えるべきである。
 原本保護や利便性向上のために紙焼きコピーを作っている場合、これを電子コピーするのは問題ないと思われる。また、外交史料館、宮内公文書館の規則案でも認められているので、この条文を加えるべきである。

→コピーの所で、国立公文書館だけが、利便性等のために紙焼きで複製されたものの複写が認められていない。これは入れ忘れなのではと思うので指摘。

○「宮内庁宮内公文書館利用等規則案」 第16条第3項 (外交史料館にも同文送付)

 利用請求者への利用決定の通知にかかる郵送料は、宮内公文書館が負担するべきである。
 開示決定を利用請求者に対して通知することは、館側の義務である。その通知書の送料を利用請求者側に負担させることは、制度の主旨からしても理に合わない。また、開示決定後30日以内に、利用請求者側は利用の方法申出書を提出する必要があるため、開示決定通知書が手許にない状態で、方法の申出を行うことは不可能である。
 国立公文書館利用等規則案第17条第3項において、国立公文書館はこの郵送料を館側が負担することを明言している。また、この理由として「確実な徴収を期し難く、督促に係る事務量(人件費等)と郵送費を比較考量した場合、当館が負担したほうが、効率的な経営管理を計ることができる」述べている(→9ページ)。また、情報公開法における利用請求に対する決定通知は無料で送られている。
 以上の点から、利用決定の通知にかかる郵送料は、宮内公文書館が負担するべきである。

→通知にかかる送料は館側が負担するのは当然だと思う。ガイドラインにそのように書いてあったこと自体が問題だった(私も気づいていなかった)。

○「宮内公文書館公文書管理法に基づく利用請求に係る審査基準案」

 公文書管理法の国会での附帯決議によれば、「十五 宮内庁書陵部及び外務省外交史料館においても、公文書等について国立公文書館と共通のルールで適切な保存、利活用が行われるよう本法の趣旨を徹底すること」(衆議院。参議院では十一に同文あり)とされ、国立公文書館、外交史料館、宮内公文書館においては「共通のルール」において運営がなされるべきだとされている。
 今回の基準案を見比べると、国立公文書館と外交史料館は文面もほぼ同じものになっており、共通のルールで行う意思がうかがえる。しかし、宮内公文書館は他の2館と文面が異なるものになっている。
 国会の附帯決議の主旨からすれば、本来この3館の審査基準は「共通のルール」であるべきである。よって、宮内公文書館の審査基準案は、他の2館と同じ文面にするべきものだと考える。
 特に問題となるのは、国立公文書館と外交史料館の基準案の末尾に記載されている「30年を経過した特定歴史公文書等に記録されている個人情報について」が宮内公文書館の基準案には掲載されていない点である。たとえ天皇の個人情報であったとしても、「公文書」に書かれていた「個人情報」である以上、永久に不開示にすることは法の趣旨にそぐわない。また、国立公文書館や外交史料館では、この表を「目安」として提示しており、この「目安」を宮内公文書館が提示できないはずがない(そもそも「目安」が無ければ、内部審査も行えないはずである)。
 公文書管理法の第1条には、「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」と書かれている。宮内公文書館は、「その諸活動」を「国民に説明する責務」を果たすために、明確な審査基準を提示するべきである。

→今回のパブコメの最も強調したい所。3館共通のルール作成は「国会の意思=国民の意思」である。これに宮内公文書館が反することは、国会を軽視していることに他ならない。
宮内庁は天皇の個人情報の開示基準については、自分たちのフリーハンドを確保しておきたいというのがあるのだろうが、それは公文書管理法の主旨からしても明らかにおかしい。
この点は絶対に修正が必要である。

○「国立公文書館における公文書管理法に基づく利用請求に対する処分に係る審査基準案」の「30年を経過した特定歴史公文書等に記録されている個人情報について」 (外交史料館にもほぼ同文送付)

 現在、国立公文書館では、利用規則「別表」において、「学歴又は職歴」等は30年以上50年未満、「国籍、人種又は民族」等は50年以上80年未満などの基準を提示している。今回の基準案では、前者は「50年」、後者は「80年」といずれも長い方の期間に合わせた基準となっている。よって開示されるまでの期間が、現在よりも長くなったと判断できる。公文書管理法の制定によって基準が厳しくなるのは、法の趣旨に反すると思われる。よって、この期間の短縮を求めたい。

→これは実際にこれまでの運用がどうだったかわからないので(実質長い方の期間に合わせて行われていた可能性もあり得る)、明確な説明がほしいかなと思って書いた。

他にも、書こうかと思ったことはあったのだが、指摘することで逆に規則が厳しくなる可能性もあったので、それは書くのを止めた。

まだ締め切りまで半月あるので、何か思いついたら追記するかもしれません。
みなさまがパブコメを書く際に参考になれば幸いです。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

国立公文書館、宮内公文書館、外交史料館の利用規則及び審査基準への意見募集 [2011年公文書管理問題]

国立公文書館と宮内庁書陵部宮内公文書館、外務省外交史料館において、パブリックコメントの募集が始まりました。
募集内容は、4月に施行される公文書管理法に合わせて改訂される「利用規則」と、新たに作られる「審査基準」です。
この両者に基づいて資料の開示不開示が決まるので、関係者、とくに歴史研究者の人は是非とも読み込んだ上で意見を述べてほしいと思います。

国立公文書館は2月23日、宮内と外交は2月24日まで。1日ずれているので注意してください。

簡単に解説しておきますと、「利用規則」は「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」に基づいて作られていますので、3館の規則はほぼ共通です。
利用者の側面から読み込んだ部分はすでに前のブログで書いていますので、そちらを参照してください。
その他の点については、ガイドラインがまだ「案」だった段階で詳しく解説をしておりますので、そちらを参照してください。

「審査基準」は、国立公文書館と外交史料館はほぼ同じものです。おそらくすりあわせをしているため、フォントまでも同じものを使っています。
一方、宮内公文書館だけは、別の独自路線をとっています。
なので、読む際には、国立公文書館と宮内公文書館で何の違いがあるのかに注意して読めばよいと思います。(特に「巻末の表」の有無については注目!

詳しい解説はしません。元々、この文書自体が法律をかみ砕いて解説した文書のようなものなので。
私が書いたパブコメをできる限り早くに公開しますので、その際になぜそのような意見を書いたのかについては解説するつもりです。

質問があるかたはツイッターやここのコメント欄に呼びかけてください。

独立行政法人国立公文書館利用等規則案及び国立公文書館における公文書管理法に基づく利用請求に対する処分に係る審査基準案についての意見の募集について
http://www.archives.go.jp/news/110124_1.html

「外務省外交史料館利用等規則案」及び「外務省外交史料館における公文書管理法に基づく利用請求に対する処分に係る審査基準案」に対する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=350000053&Mode=0

「宮内公文書館利用等規則(案)」に関する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=140000001&Mode=0

「公文書管理法に基づく利用請求に係る審査基準(案)」に関する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=140000002&Mode=0

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

【連載】法人文書と公文書管理法 第5回 国立大学法人における研究文書の扱い [2011年公文書管理問題]

【連載】法人文書と公文書管理法
第1回 行政文書と法人文書の管理の違い
第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係
第2回 国立大学法人における文書移管問題(前)
第3回 国立大学法人における文書移管問題(中)
第4回 国立大学法人における文書移管問題(下)

連載の続き。
第5回では、公文書管理法の下での国立大学法人における研究文書(教員が研究で使う文書)について考えてみたい。

第5回 国立大学法人における研究文書の扱い

まずはおさらい。公文書管理法における「法人文書」の定義を確認してみる。

5  この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
 一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
 二  特定歴史公文書等
 三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
四  略


まず、この定義から、「法人文書」として公文書管理法の対象になるには、(1)「役員/職員」、(2)「職務上作成/取得」、(3)「組織的に用いる」の3点が条件となることがわかる。

さて、国立大学法人の教員は当然「職員」に当たるので、(1)の条件は満たす。

その上で、日頃から研究している際に作っている文書(論文の原稿や資料メモ)はどうなるだろうか。
これは(3)に当てはまらないので、「法人文書」にはならない。

では、共同研究をしている場合はどうだろう。これは「組織的」に用いている。
そうなると、(2)の「職務上作成」したものと言えるかどうかがカギになる。

大学教員の研究は「職務」であると言えるだろう。
そうなると、共同研究で研究しているデータなどは「法人文書」となるのだろうか。

おそらく「ならない」というのが今のところの状況だと思われる。

まず、共同研究をしていても、それぞれ個人の研究者がデータを保持していれば、これは3には当てはまらないだろう。
ただ、問題となるのは、データベースとして情報を共有しているケースだろう。

これを考える際には、この部分と同様の主旨が書かれている情報公開法を参考にしたほうが良いだろう。
情報公開法解釈の権威と言ってよい宇賀克也氏によれば、「組織的にもちいるもの」とは「組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上の必要性から利用・保存している状態にあるもの」とのことである(『新・情報公開法の逐条解説[第5版]』有斐閣、2010年、50-51ページ

この解説から、「国立大学法人の業務=運営」と考えれば、研究に関する文書はやはり入らないという解釈なのではないかと思う。
また、公文書管理法の上記の第3項に「歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」という例外規定があることからしても、学術研究に関する文書は基本的には「法人文書外」であり、公文書管理法から外れる博物館などの施設で保管・公開される類の文書であると思われる。

ただ、共同研究の予算執行に関する文書は「職務上作成」したものと見なされる可能性が高い。
研究内容に関する文書については外れるが、研究費に関する文書は対象となると思われる。

また、「大学行政」に関与している教員が作った文書は、当然「法人文書」となる。
例えば、○○委員といった職務において作成した文書がこれにあたる。
なので、研究者でもあり事務員でもある教員が作った文書は、その使用目的に応じて、「法人文書」となるケースとならないケースがあるということになる。

まとめてみると

研究文書→法人文書の対象外
大学行政文書(+予算関係文書)→法人文書


と考えて良いと思う。
なので、今回の公文書管理法で新たに適用になるのは後者だけということになる。


ここまで読んできて、「それなら前となにも変わらないよ」と思ってませんか?

第2回で少し触れたが、公文書管理法の第4条において、政策決定のわかる文書をきちんと作成する義務が課せられることになった。
よって、国立大学法人の教員で、大学行政に携わっている方は、自分の業務が後から検証できるように文書を作成する「義務」が発生するのだ。

私の推測だが、おそらく大学教員はこれまで「大学行政文書の作成方法」について研修を受けたことはほとんど無いのではないかと思う。
公文書管理法の第32条には、職員に対する「研修」を行うことが書かれている。
よって、「大学で役職についている教員に対する「文書の作成方法」の指導」をきちんと行うべきだと思う。

この研修は是非とも積極的に行ってほしいと思う。
研修によって文書がきちんと作成されるということだけではなく、教員に公文書管理法の意義を理解させるための絶好の機会であると思うからだ。
教員の側も、「なんで研究者である自分が、事務員みたいな研修を受けねばならんのだ」と思わず、きちんと研修を受けてほしい。
職員の側も積極的に教員に研修参加を呼びかけてほしいと思う。

法人文書に関する解説は以上です。
また付け足すことがあれば続きを書きます。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

国立公文書館等の利用に関するまとめ(公文書管理法) [2011年公文書管理問題]

この4月から、待望の公文書管理法が施行されます。
その準備のため、公文書管理委員会で次々と色々な規則が決まっています。

委員会の第5回(2010年12月14日)では、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の利用等規則、第6回(2011年1月19日)では独法に設置される国立公文書館等(日本銀行、東北大、名古屋大、京都大、神戸大、広島大、九州大)の利用等規則が審議されました。
これで、公文書管理法上の「国立公文書館等」になる館の規則が出そろいましたので、ここで「利用する側にとって、4月から何が変わるのか」について、まとめておこうかと思います。

なお、基本的には、ほぼすべてが「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」に沿って作られていますので、各館ごとにそれほど変化はありません。
よって、国立公文書館の規則をベースにして解説をしたいと思います。

以下、繁雑になるので、国立公文書館は「NA」(National Archives)、外交史料館は「外交」、宮内公文書館は「宮内」と略します。
規則案は、NA・外交・宮内はこちらの18から20を、独法についてはこちらの1から7を参照してください。

・利用までの手続きの仕方(独立行政法人国立公文書館利用等規則案(以後「NA規則案」)第11、16-18、27条)

館に直接行って、その場で申請して見ることについては、それほど変化は無いものと思われる。
変化があるのは、「審査がある場合」(NAの「要審査」文書、宮内のすべての文書など)について。

これまでは、口頭で「○○の簿冊を見たい」と申請し、見られるようになったときに館の側から電話があるといったようなことだったはず(宮内はそうだった。NAもそうだと聞いた記憶が)。
この手続きが、かなり厳密なものになる。

まず、利用者の側が閲覧申請を行う場合には、必ず「文書」にて申請を行わなければならない。
館に直接行くか、郵送するかが基本。外交はネット上でも可能。ネットからの申請は、行う館と行わない館と分かれているので注意が必要。

次に、館は申請書を受け取ってから、30日以内に開示決定を行わなければならない。
ただし、量が多いなどの理由があった場合、+30日延長が可能。
これでも日程が厳しい場合(例えば開示文書が1万ページ以上あるとか)は、遅れる理由と開示される予定日を利用者に書面で通知する義務がある。

このやり方は、情報公開法と同様の対応となる。
よって、申請してから数ヶ月待たされるような状況は大幅に改善されるだろう(ただ、施行直後は、情報公開法の時と同じように、延長が連発される可能性がありそうだが)。

開示された際には、必ず「文書」にて通知が届く。
なお宮内だけは、郵送で通知する場合は料金を「利用請求者が負担する」としている(第16条第3項)。正直、繁雑なだけ(80円切手でも送らせるのか?)だと思うんだが。→訂正(2/1)外交もそうでした。すみません。

通知書が届いた後、利用者は30日以内に「利用の方法申出書」を館に送らなければならない。
この「申出書」は、情報公開法に準じたものだとすると、「閲覧するか、閲覧せずに複写するか」「閲覧日はいつか」といったようなことを書くことになると思われる。
送付の仕方は、館に持って行くか郵送。NAはFAXも可、外交はネットで可能になる。
ただ、宮内などは、閲覧日の調整(閲覧スペースが少ないから)が必要だろうから、結果的には電話でのやりとりもすることになるのかなと思う。

このように、閲覧までの手続きがすべて「書面」でなされるようになる。
手続きが厳密になるので、利用者がいきなり館に行って、「審査が必要なものをすぐに見せろ」というような無茶は通用しなくなる可能性が高いだろう。

なお、事前のレファレンスも受けられるので、申請する際には、きちんと各館に相談をした方が良いかと思う。
開示されてみたけど、ほしいものと違ったというようなケースは、お互いにとってもムダな労力になるので。

・不開示規定(NA規則案第12条)

NAに移管された文書が、すべて自由に見れるということでもない。
個人情報などには、30年経ったからといって見せられないものはたくさん存在する(例えば犯罪情報など)。

NA規則案には、公文書管理法が引き写してあるだけなので、詳しくは「審査基準案」が出ているのでそちらを参照のこと。

NA / 外交 / 宮内

なお、宮内は、他の2館と調整しないで作ったように見える。
本来3館が同じ基準にならなければならないものなのに、なぜ文面の調整しなかったのか理解に苦しむところ。

この「審査基準案」はパブリックコメントにかかるとのことなので、詳しくは募集がかかったときに再度解説する予定。なので、今回は略。

・部分開示(NA規則案第13条)

不開示情報が文書に入っているときの対応。
NAは、基本が墨塗り(コピーした上で、不開示部分を墨塗りする)公開。
なお、文面では、墨塗りか被覆(袋とじする)かを利用者に選ばせない(外交、宮内は選べる)ことになっているが、審議の際に、被覆は全面不開示の時にしか使わないと説明があった。

・複写(NA規則案第20条)

複写については次のようになった。

○原本から直接電子コピーは不可。マイクロフィルム化やスキャンして電子コピーするのは可(業者委託)。ただし、部分開示のためにすでに紙のコピー作られているものは可。
外交・宮内では、原本保護のために複写物を作っているものについても、同じく可(NAはなぜかこの点が入っていない)。
なお、他の国立公文書館等にあたる施設(日銀など)では、ほとんどが原本コピーが可になっている。

○マイクロフィルムはネガからも、紙にコピーしたものからもコピー可。

○スキャナで読んだデータは、ディスクに複写したものや紙にコピーしたものからコピー可(ディスクからディスクへも可)
スキャナから読みこんだ一次データは直接複写させない(一次データのセキュリティーが保証できないため(外部からの改変をされるおそれがあるからかと))。つまり、「スキャンデータ→データをDVDに焼く→それを閲覧・コピー」という流れ。

○電磁的記録(初めから電子データであるもの)は、ディスクに複写したものや紙にコピーしたものからコピー可。
ディスクに複写の説明はスキャナと同じ。

○規則には明文化されていないが、中央3館とも利用者持ち込みのデジタルカメラでの撮影が可。他の館でもほぼ可能という回答だった。無料。

・複写手数料(第21条)

各館によって大幅に変わる。委託業者の価格設定によって異なるため。
各機関の利用規則の最後のページに複写料金一覧表があるのでそちらを参照。
委員会で問題にはなったが、結局はそのまま。

ただ、この表には「裏メニュー」みたいなものがある。
ここに書かれているのは、あくまでも「業者を使った場合」である。
つまり、利用者がセルフコピーをする際の価格が別に存在するのだ。

なお、この手数料についての中央3館のコメントがあるのだが、例えば宮内では、コイン式のマイクロフィルム用複写機や電子コピー機を閲覧室に置いて、セルフコピーをできるようにするとのこと。
よって、基本的にこの表にある手数料を使うのは、来館せずに遠隔地からコピーを取り寄せようとする人に適用されるものだと考えられるだろう。

他には、この料金表はネット上で公開される。
そもそも、これまで公開されていない時点で、何か間違っていると思うんけど。

手数料の納付方法は各館によってかなり異なる。
来館して現金払いが基本だが、その他は現金書留、収入印紙、銀行振込など、各館によって対応がバラバラなので注意したい。

・異議申立(NA規則案第22条)

これは公文書管理法にあるとおり。
4月以降、開示方法に不服がある場合、公文書管理委員会に異議申立ができることになった。
現在は、NAであってもNA館長にしかできないわけだから、かなり大きいと思う。
これまで不開示になって見れなかったものがあった場合、4月以降再チャレンジをしてみて、ダメなら異議申立をするというのもありかと思われる。

・開館時間(NA規則案第29条)

9:15-17:00。注記がないので、現在の11:45-13:00の出納停止がなくなるものと推測。
外交は10:00-17:30。

なお、宮内は規則案の段階で、9:15-12:00、13:00-17:00と昼休みがある形で書かれていたが、委員会の場で加藤陽子氏に指摘を受けて、結局、昼の出納は停止するが、閲覧時間は9:15-17:00書き換えられた。
現在の開館時間は9:30-12:00、13:00-16:30なので、かなり閲覧時間は延びることになる。

なお、ガイドラインにあった土日開館の検討は、結局見送られた。
さしあたり、各館の人員がかなり増員されないと厳しいかなと思うので、仕方がないかなと思う。


以上が、利用者の視点から見た公文書管理法施行後の変化です。

最後に1点だけ気になる点を。

デジカメでの撮影が可能になる点についてだが、原本を撮影することが多くなるので、利用者の「原本保護」の姿勢が問われることになる。
つまり、カメラで撮影するために資料を無理に押しつけたりして、原本を傷めてしまうようなことがあり得るということだ。

ただ、資料の扱い方を学ぶ場が、いまのところどれだけあるのだろうか。
私は史学科出身ではないので、資料の扱い方に関する訓練を一度も受けたことがない。
気をつけて扱うようにはしているが、正直、自分の資料の閲覧の仕方が大丈夫なのか不安になることはある。

もちろんデジカメで撮影できるのはありがたい。なのでそれは是非とも推進してほしい。
その一方で、原本が壊れてしまったら元も子もない。
なので、利用者への教育をどうするのかを、アーカイブズ側も、史学科などでも考えた方が良いと思う。

なお各アーカイブズは、「利用者のための資料ハンドリング講座」のようなものを企画してみたらどうだろうか。
資料の扱い方に不安を覚えている人は、私だけでなく、それなりにいるように思うんだけども。
修復現場とか書庫の見学コースなども入れれば、それなりに需要があると思うんだが・・・

以上です。
もし上記の説明でわからないことがあれば、コメント欄に書き込んでください。ご返答いたします。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問
前の10件 | 次の10件 2011年公文書管理問題 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。