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公文書等の管理に関する法律施行令、行政文書の管理に関するガイドライン改正案へのパブコメ [2021年公文書管理問題]

1年に1回ぐらいしか更新できていません。久しぶりの更新です。

2021年12月8日締切で、「公文書等の管理に関する法律施行令」と「行政文書の管理に関するガイドライン改正案」のパブリックコメントの募集がなされています。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095211180&Mode=0
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095211210&Mode=0
(おそらく12月8日でリンク先がなくなるかと思います)

参考までに、下記に私の送ったパブコメを貼っておきます。
今回は「電子文書」がメインであり、今後、色々と問題が起きそうな分野でもあろうかと思います。

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「公文書等の管理に関する法律施行令及び内閣府本府組織令の一部を改正する政令案」に対する意見提出

・施行令第9条第2項
 保存期間の延長の総理大臣報告を不要とする改正はすべきではない。
 「令和元年度における公文書等の管理等の状況について」の表4(12ページ)によれば、延長件数は225,228(7.9%)となっており、実際に総理大臣報告が行われていてもチェックがなにもできていないことは確かであろう。だが、これは安易な延長手続きが取られていることにすぎず、その「安易さ」を追認するような改正は本末転倒であり、安易な延長を許さない仕組みを考えるべきである。
 また、今回の第8条第2項の改正で、別表第1について、各行政機関の実態に合わせた保存期間に変更することができることになる以上、適正な保存期間を設定し、延長を減らすということが目指されるべきではないのか。保存期間が満了した際には、原則廃棄か移管の選択をすべきである。
 特に満了後移管とされる文書については、ガイドライン案36ページ⑰の規定を利用し、保存期間満了時に延長を許さず、正本を国立公文書館等に移管した上で、電子媒体への変換したデータを保存するようにすべきである。

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「行政文書の管理に関するガイドラインの改正案」に対する意見提出

・全体を通して
 「課長通知」に多くの事項を落とすことになっているが、課長通知はガイドラインとならべてわかるような形でウェブ公開をするべきである。
 また、課長通知についても、これまでガイドラインに記載があったものである以上、公文書管理委員会の意見を聴取するべきである。

・「第3 作成~第5 保存」までについて
 電子文書の定義や保存期間の設定方法についての原理原則は、課長通知ではなく、ガイドラインに書くべきである。
 たとえば、SNSによる広報を行っていた場合、これらは政府広報の重要な文書であり、一定の年数の保存が望ましいと考えるが、このSNSの書き込みはいつ作成(取得)したものであり、保存期間は何年であるのか、行政文書ファイル管理簿にはどのように記載するのか、保存媒体はどのような形式で行うのか(twitterなどの民間サービスの仕様に依存しており、これをどのような形で保存するのか)などを考える必要がある。twitterのようなSNSの場合、双方向性に意味がある媒体であるため、「いいね」やリツイートの回数、リプライの内容などを保存するのか否かにも、基本的なルールが必要となる。また、「炎上」して削除したツイートがあった場合、その削除したデータも行政文書であるはずであるが、どのように保存するのか(炎上への対応は行政の職務であり、なかったことにはできない)。しかし、現在のところ、これらの基本的なルールについて、あまり考えられていないように思われる。
 また、近年は行政機関内でLINEなどのSNSのツールによって、部局で政策が練られるといったことがなされている。新型コロナウイルス感染症の流行によってテレワーク化も進んでおり、情報共有ツールをどこまで行政文書として取り扱うかの基本的なルールが必要である。また、業務上の連絡を個人のSNSやメールなどで行っていれば、情報流出のおそれがあってセキュリティー上危険であるだけでなく、「個人メモ」扱いとして行政文書化逃れを許すことになる。情報共有ツールの利用は各行政機関が契約しているものに限定するなど、作成にルールが必要である。
 グループLINEで政策の計画立案をしていれば、当然それは「組織的に共用」された情報であり、行政文書に該当するものも少なからずあると思われる。政策決定過程を保存するという公文書管理法第4条の規定から考えれば、LINEをどこまで行政文書として取り扱うかは重要な問題である。
 電子文書が今後原則となることが政策として決定している以上、紙をベースとして考えていたガイドラインの各規定を、電子文書に合わせた規定に変えていく必要がある。メールの作成(取得)、保存期間の設定など、電子文書をどのような形で作成、取得、整理、保存、移管、廃棄をするかの基本的なルールは、課長通知レベルではなく、ガイドラインのレベルで規定し、各行政機関の行政文書管理規則に反映されるべきである。

・「第3 保存」について
 「取得」の定義をガイドラインにきちんと書き込むべきである。
 WORDなどのソフトで文書を作成した場合、意図せずにアクセスログなどが取得されているはずであるが、現在はアクセスログは行政文書として扱われていないとのことである。
 電子文書は、改ざん防止のためにログを残すことは必須であり、それが真正性を担保するものとなる以上、「取得」は意図的に取得した情報だけが対象となるという考え方では対応できない。「第3」の部分の考え方は、「起案」が行われるような「作成した」文書しか対応できていない。
 「取得」についても項目を立て、基本的なルールを明確にするべきである。

・「第3 作成」の<文書の作成等>⑦、10ページ
 現在のガイドラインにある「法第1条の目的の達成に資するため」という公文書管理法の大原則は記載すべきである。
 これを削除することは、審議会等などの「議事の記録」の作成を軽視することにつながりかねない。現在のガイドラインにある文言を加えるべきである。

・「第4 整理」3 保存期間(6)②、13ページ
 「日程表」は削除するべきである。
 首相や大臣の日程表といった、閣僚の行動がわかる記録が1日で廃棄されていることが、新聞報道などでも明らかになっているが、それはこの記述が根拠となっている。本来、閣僚の毎日の日程表は、行政の活動において重要な意味を持つものであり、1年以上の保存期間が定められるべきである。よって、「日程表」は削除するべきである。

・「第4 整理」<保存期間>⑦、17ページ
 「規則においてガイドライン別表第1に定める期間を超える保存期間を定めることができる」について、上限を30年とするべきである。
 この書き方だと100年保存など、際限なく保存期間を増やすことができかねない。「常用(無期限)」がもし多用された場合、いつまでも国立公文書館等への移管が進まないことも考えられる。
 行政文書管理規則は、確かに公文書管理委員会での審議を経る必要があり、問題のある提案については撤回させることが可能であるが、少なくとも、保存期間は、最長30年しかできないといった上限を設けるべきである。

・「第4 整理」<保存期間>⑯、19ページ
 「過去に作成した行政文書の保存期間の変更」のうち「短縮」する場合、その保存期間の満了日は年度末にするべきである。
 短縮することで保存期間満了日を変更時点以後の日(当日も可)にできるとあるが、政治的に問題になった文書の保存期間を短縮して廃棄することを正当化することに繋がりかねない。そのような疑念を持たせないためにも、保存期間を短縮した場合でも、満了日は年度末にするべきであり、年度の途中で突然廃棄が可能となるようなルールを設定すべきではない。

・「第5 保存」<引継手続>24ページ
 「府省の枠を超えたプロジェクトチームの文書」の引き継ぎは明確にするべきであり、ガイドラインに残すべきである。
 組織の新設、改正、廃止については、26ページに記載があるが、プロジェクトチームは組織の新設、改正、廃止とは別のものである。きちんと文書が残すための責任を明確にするためにも、従来の規定は残すべきである。

・「第5 保存」<保存>27ページ
 紙媒体の文書を電子媒体に変換した際に、正本を1年未満の保存期間と設定できることになっているが、「真正性を担保されたのち」といった内容の文面を挿入するべきである。
 電子媒体にして保存し、正本を廃棄することはやむをえないと思われるが、その際に、正本が改ざんされていないことや、電子化されたデータのページに飛びがないかなどといった「真正性」を担保することは必須である。また、電子化した後に改ざんが行われないかといった、ファイルへのアクセスログも保存する必要がある。
 電子媒体に変換した際の作業記録やアクセスログを残すことなど、どのように「真正性」を担保するのかをルール化するべきである。電子媒体への変換や正本との照合を複数人で行うことや、総括文書管理者などが責任をもって管理するなど、「真正性」が損なわれないような仕組みが必要である。

・「第5 保存」<保存期間の延長>35~36ページ
 別表第2で国立公文書館等に移管となっている文書の保存期間の延長は、原則認めないことにする項目を追加するべきである。
 施行令第9条第2項の改正で、延長が安易に行われる可能性がより高くなる。少なくとも国立公文書館等への移管が定められている文書については、閲覧の利便性を考慮し、延長をさせずに国立公文書館等に移管するべきである。もし文書を各行政機関が引き続き保存したい場合は、36ページの⑰を利用して電子媒体に変換したデータを保存するようにすべきである。

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すべてを解説する時間はないのですが、特に強く主張したい点は

・電子文書の定義、取得の定義をガイドラインで明確化する
・紙を電子媒体に変換し、紙の正本を廃棄できる場合は、真正性を担保することができた場合に限る。
・保存期間満了時に国立公文書館等へ移管が決まっている文書は、延長を禁止する。各行政機関で保存を継続したい場合は、電子媒体に変換して保存する。


の3点でしょうか。

今回のガイドラインなどの改正で、電子文書化の推進が強く図られることになります。
ただ、電子文書の定義など、紙とは想定が異なる点について、まだ十分に練られていないという印象があります。

紙文書は電子に媒体変換したら廃棄できることや、国立公文書館等に移管後も、コピーは各行政機関で持つことが可能になるなどが提案されています。

内閣府公文書管理課から「紙媒体を電子媒体に変換する場合の扱い、行政文書ファイルが紙媒体と電子媒体で混在する場合の管理の手順等」が2021年3月25日に出ていますが、スキャンのやり方が書かれているだけで、どのようにして「真正性」を担保するのか、配慮がないように思います。
https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/conversion.pdf

原本とスキャンしたデータが同じものであるという保証をどうやって確保するのか。そのルールを明確にする必要があるのではと考えます。

以上です。
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