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情報保全諮問会議について考える [特定秘密保護法案]

特定秘密保護法に関連するさまざまな基準について意見を述べる「情報保全諮問会議」が発足し、2014年1月17日に初会合がありました。
この会議の権限とメンバーについて、分かる範囲でコメントしてみたいと思います。

情報公開諮問会議のウェブサイトはこちら
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/index.html


まず権限について。

諮問会議の行う職務については次のように書かれている。

(1) 会議は、次に掲げる意見を、内閣総理大臣に対し述べることとする。
 ア 特定秘密保護法第3条第1項、第18条第2項及び第3項並びに附則第3条の規定に
   基づく意見。
 イ アに掲げるもののほか、特定秘密保護法の適正な運用を図るために必要な意見。


イは+αの職務が発生するかもしれないための保険。
アから見ると主に3つの職務がある。

特定秘密の指定・解除、適性評価の統一的な運用を図るための基準への意見を述べる(第18条第2項)。
②毎年、①の実施状況を内閣総理大臣から報告を受け、意見を述べる(第18条第3項)
③施行から5年間「特定秘密」を保有しなかった機関を特定秘密を指定できなくする際に意見を述べる(第3条第1項、附則第3条)。


施行前に行う職務は①にあたり、今後、そのために会議が開かれることになる。
権限の薄さなどの問題については、以前書いているので今回はそこには触れない。


次にメンバーについて。

メンバーは7名。以下、繁雑になるので敬称略。

宇賀克也 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
塩入みほも (駒澤大学法学部准教授)
清水勉 (日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長)
住田裕子 (弁護士)
永野秀雄 (法政大学人間環境学部教授)=主査
南場智子 (株式会社ディー・エヌ・エー取締役 ファウンダー)
渡辺恒雄 (読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆)=座長


菅義偉官房長官の1月14日の記者会見(15:25~)によれば、「安全保障、情報保護、情報公開、公文書管理、法律、報道」の識者を集めたとのこと。
なお、諮問会議第1回資料5を見ると、このうち「安全保障」は書かれていないので、この部分は官房長官の勘違いかもしれない。

では、この識者を分類してみると、

情報保護  南場?
情報公開  永野、塩入
公文書管理 宇賀
法律     清水、住田?
報道     渡辺


という分類であろうか。

秘密保護法との関係で考えると、永野、宇賀、清水の人選は非常によくわかる。

永野はCiNiiの論文検索を見ると、元々は米国の環境法や労働法が専門だったのが、その関係で情報公開などに興味を持ち、次第に秘密保護法制について論陣を張るようになったようだ。
保護法の審議の際にも与党の参考人として賛成意見を述べており、「主査」として議論の中心的な役割を担うことを期待されての起用だろう。

宇賀は公文書管理委員会の委員も務めており、公文書管理法や情報公開法の解説本を書くなど、この問題の第一人者の法学者。
政治的な発言をそれほどしないことも、政権にとっては安心材料ではあるだろう。

清水は日弁連で秘密保護法反対の先頭に立っていた弁護士。
反対派から1名は入れないとバランスは取れないということから起用されたものと思われる。

残り4人。

渡辺は誰もが知っている読売新聞のドン。政治記者としても著名。
報道の自由については強く主張するとは思われるが、なにぶん87歳。
法律の細かい部分まで理解しているのかどうか(会議での議事録が公開されれば、理解度はわかると思うが・・・)。

別に渡辺が入ること自体の是非は問わないが、メディアの代表が「彼だけ」であるというのはそれで良いのかと疑問に思う。
今現在、取材活動を行っている現役の編集委員クラスの記者が起用されるべきだったのではないか?

次に塩入だが、CiNiiで論文を検索してみると、判例解説などで情報公開などについて書いたものはあるが、基本的にはドイツ法(公権論)の専門家。
駒澤大学のサイトでの紹介を見ると「行政法上の国民の請求権」が研究テーマとなっている。
だが、秘密保護に関係するような論文を書かれているわけではない。
海外の法制との比較を期待されてなのだろうか?

住田と南場については、何の「識者」なのか正直よくわからない。
官房長官の分類からすれば、住田は「法律」、南場は「情報保護」にあたるのだろう。

住田は、本人のサイトの経歴を見ると、元検事で弁護士に転身。
男女共同参画などについての論文などがあり、基本的には民法系の専門のように見える。
テレビの「行列のできる法律相談所」に出演していたことで知られているので、橋下→安倍のラインで推薦されたのだろうか。
刑事法の専門家は誰か入るべきだと思うが、その役割を期待されているとはさすがに思えないのだが・・・

南場はモバゲーなどを運営するDeNAの創業者として知られている。
だが、マッキンゼーの出身などを考えても、経営者ではあっても、情報保護の専門家では全く無いだろう。
もちろん、運営しているサイトにおける個人情報保護などについては、それなりに知っているだろうが・・・
情報セキュリティ対策については結構重要だと思うのだが、その代表としてはどうなのか?

この7人のメンバーを見てみると、秘密保護についての議論をするのにふさわしいメンバーが揃ったのかと言われると正直疑問である。
依頼をして断られたケースがひょっとすると多かったのかもしれないが、それにしても不安の残るメンバーではある。


最後に、この会議の公開の問題について。

各紙ですでに報道されているが、この会議については一般公開せず(記者にも公開しない)、議事録は作成されるが公開せず、「議事要旨」のみが公開されるとのことである。
朝日の1月18日の報道だと、永野主査は「機密性の高い事柄も議論になり(議事録全文の)公開には問題がある」とし、要旨の公表で「透明性は確保される」と述べた」とのこと。
また、渡辺座長は「秘密なしの秘密会議だ」述べたという。

これは非常に問題がある。
私は以前から、この諮問会議の「議論をオープンにすること」を主張してきた。

国民からはこの法律が「恣意的に」運用されることへの不安が多く提示されてきた。
その不安を払拭するためにも、議事録はきちんと公開するべきである。

ちなみに「議事要旨」で透明性が確保できるという永野の発言は、あまりに楽観的にすぎる。
審議会などの「議事要旨」が、いままでどのようなものとして作られているのかを知らないのだろうか。

私がこれまで見てきたものでは、だいたいがA4で2枚ぐらいで、書かれている内容は出席者の一覧+「○○について議論した」「○○については疑問があるとの意見があった」ぐらいのことしか書かれず、はっきり言って内容はスカスカで意味をなさないのがデフォルトである。
よって、議事要旨で透明性など確保されるわけがない。

なお、センシティブな議論があるから全て公開できないというのであれば、毎日新聞が1月18日の社説でも書いていたとおり、「機密性が高かったり、プライバシーにかかわったりする部分は伏せて公開すればいい」のだ。
その部分だけ墨塗りにして公開すれば良いのであり、全てを非公開にする必要性があるとは思えない。

また、議事録を「作成」することは明言している以上、日弁連などが情報公開請求を行うことは目に見えており、いずれにしろ部分的には公開されることになるはずである。
それならば、最初からできうる限りの情報は公開するべきであろう。

秘密保護法は、その運用面で多くの不安を抱えている法律である。
そうである以上、できうる最大限の情報は政府が自主的に公開するべきだろう。
そうしなければ不安など解消されるはずもないだろう。


議事録無しでの分析は相当に厳しいが、公開された資料を見ながら、できる限りの分析を今後も続けていく予定である。
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