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改めて特定秘密保護法案に反対する [特定秘密保護法案]

先ほど11月26日に特定秘密保護法案が衆議院を通過しました。
これまでさんざん本ブログにおいて、この法案の何が問題なのか書いてきましたが、改めて「公文書管理制度」の点から批判をまとめておきます。

そもそも国家が存在する以上、「秘密」は存在します。
それは、「公表されると国や国民の安全に支障が出る」という文書に「秘密」指定をして、取扱いに注意をするためです。その情報に触れることが可能な人を制限するためのものです。
兵器の性能が高まった現在において、秘密指定を行って情報を厳重に管理をする必要は間違いなくあるでしょう。

だが一方で、民主主義という制度は「情報を有権者である国民に知らせる」ことが必須となっています。
国民はその情報を元にして、政府を支持するのか否かなど、さまざまな政治判断をします。
そのため、政府に不利な情報を隠蔽することや、誤った情報を流すことは、民主主義という制度を動かすために絶対にしてはならないのです。

この「秘密を守る」ことと「知る権利」を保証するということは、もともと理念としてバッティングします。
ですが、この両方は、現在の国家においては必要不可欠です(前者は「必要悪」とも言えるでしょう)。

よって、この二つのバランスをどう取るのかというのが問題になります。
特に「秘密」は、一度指定されてしまえば国民の前からは「見えない」ものになってしまうため、この指定をどうコントロールするのかが非常に重要になります。

他国では「秘密保護」の仕組みがある一方、できる限り減らすための監視機関が整備されています。
この監視機関が機能しなければ、民主主義という制度自体が機能不全を起こすからと考えられているからです。

今回の安倍政権が出している「特定秘密保護法案」は、この「監視機関」が存在しません。
よって、秘密が無尽蔵に増えていく可能性が極めて高いと言わざるを得ません。

政府はこう言います。

「秘密にできるものは表に掲げてあるものに限定しているから大丈夫!」
「第三者機関が基準を作るから大丈夫!」
「首相が監視するから大丈夫!」
「監視機関の設置を検討するから大丈夫!」
「特定秘密が解除されたら国立公文書館に移管されて公開されるから大丈夫!」


その表に従っているかを誰が確認するのですか?
法的権限が一切決まっていない機関がまともな基準をつくれるんですか?そしてそれを守ってもらえるんですか?
首相が監視するというなら、それをどういう仕組みで運用するのですか?
監視機関は「いつまでに」「どのような」ものを作るのですか?
「特定秘密」が移管される前にこっそり捨てられても、誰も気づけなくはありませんか?


監視機関というのはただ「あれば」いいということではありません。
「機能」しなければ意味など無いのです。
また、いくら「情報類型を限定」したところで、チェックする人が誰もいなければ、拡大解釈されてもわかりません。

もし本気で「監視機関」をきちんと整備をするというのであれば、法案と一緒にどのような監視機関を作るのかを提示するのが当然でしょう。
「これから検討します」では話になりません。
法案が通ってしまえば、まともな検討をしないのは目に見えています。

この他にも報道の自由等、様々な問題がある法案ですが、公文書管理制度という点から見れば、この点が最も大きな問題だと考えています。


なお、この法案を潰しても「秘密」は存在し続けます。
すでに今でも秘密は闇に葬られ続けているのです(「防衛秘密」は毎年廃棄され、国立公文書館に移管されていない)。

なので、私はこのブログで、「秘密を統一的に管理するルール」は必要と主張しています。
そのためには、強力な監視機関を作らなければなりません。

いまのままこの法案が通ってしまえば、全てが闇に葬られても誰も気づけません。
そして、これまでの官僚文化を考えれば、こういう時には文書を捨てるでしょう。

まずはこの法案を廃案にした上で、監視機関のあり方をきちんと検討し直すべきでしょう。
その上で、情報公開法や公文書管理法との関係を整理し、できうる限りの情報は公開し、秘密指定された文書は監視して、いずれはきちんと公開される仕組みを構築しなければならないと思います。

参議院で慎重な審議をきちんと行ってほしいと思います。


追記

この法案、自民党や安倍首相を強烈に支持するような方々は、「スパイ防止のために必要」うんぬんで賛成する人が多いような気がしますが、「スパイ防止」のためなら「官僚が何をやっててもわからない」ことを許すのでしょうか?
前者が必要だとしても、後者を容認するのは別問題ではありませんか?
そんなに政府や官僚は無条件で信じられるものでしょうか?

また、自民党は「永久与党」でいられると思ってるんですかね?
自分たちが野党に回ったときに、あらゆるものが「特定秘密」で覆い隠されていることに気づいて頭を抱える姿が目に浮かびますが。
せめて国会がもっと監視できる機能を作っておかないと・・・
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渡邊健

恐らく、一般人で「賛成」と言っている人の多くは、必要悪としての「秘密保護」に賛成ということであって、本法案や情報公開法、公文書管理法の中身を理解すれば、「本法案」に賛成とは言えないでしょう。
民主主義を進化させるには、政府、或いは既得権者と市民の間に横たわる情報の非対称性を極小化しなければなりません。
本法案はもともと、秘密へのアクセス権の管理を規定しているだけで、記録としての秘密を保管管理することは全くと言っていいほど考えていません。むしろ、「秘密に指定すれば、記録として管理しているかどうかも問われない」のを理想としているかのようです。
by 渡邊健 (2013-11-27 14:05) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> 渡邊さま

コメントありがとうございます。
結局、情報公開という制度がどういう意味があるのかということが理解されていないというあたりから問題があるんですよね。公文書管理制度は言わずもがなですが・・・

本当にどうやって特定秘密を管理するつもりなんでしょうかね。まあそこをそもそも気にしてないんでしょうが・・・
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2013-11-27 19:21) 

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