大阪大学アーカイブズ [2013年公文書管理問題]
2013年3月7日から8日にかけて、所属大学のプロジェクトの一環で、大阪大学アーカイブズと神戸大学附属図書館大学文書史料室を訪問してきました。
せっかくなので、簡単な見学記を。
なお、ここでの記述は、私が見聞きしたことを私の解釈で書いているものです。よってその施設の公式見解では無いことはあらかじめお断りしておきます。
大阪大学アーカイブズ
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/ed_support/archives_room
■概要
大阪大学アーカイブズは2012年10月1日に設置された。一般公開は2013年4月1日予定。
場所は箕面キャンパス(旧大阪外国語大学)の管理棟(事務があった所)にある。
大阪大学は2006年に文書館設置準備室が作られたが、その後、なかなか文書館の設置が決まらない状態が続いた。
特に「場所」の問題が大きかったようだ。
だが、合併した外語大の管理棟が空き、そこに入ることができたことで、文書館設置へと大きく舵を切ることになったそうだ。
現在公文書管理法に基づく「国立公文書館等」への申請を行っており、4月1日には認定される予定である。
よって、大学の法人文書の受入が可能な施設となる。
なお、「文書館」と名前を付けようとしたところ、諸事情で反対があったため、それなら「アーカイブズ」でということになったそうである。
現在のスペースは798平方メートル(うち書庫は464平方メートル(書架延長2.09km)。担当者の話だと、1300平方メートルまで増える予定があるとのことである。
書庫の中はまだ何も入っておらず、移管はこれから受けるとのこと。
ただ、建物の強度の関係で移動書架を置けなかったため、固定書架のみの設置となっている。
閲覧室はかなり広い。
スタッフは
○アーカイブズ―室長1(教授併任)、専任教員1(准教授(任期付))、兼任教員12名
○総務課文書管理室―室長1(総務課長併任)、室長代行(再雇用の非常勤)1、室長補佐(常勤)1、事務補佐員(非常勤)2
という体制となっている。
アーカイブズの事務を総務課文書管理室が引き受けており(情報公開請求や現金出納への対応も担当)、アーカイブズに4名の職員が常駐している。
なお、室長代行に元情報推進部長だった方を再雇用で雇っているとのこと。そのため、他部局の事務職員とも連絡が取りやすくなっているとのことである。
学内的な位置づけは「管理運営組織」。
他大学は「教育研究組織」に位置づけられているが、阪大は異なるそうである(つまり図書館や博物館とは別系統の組織)。
そのため、独立組織のようなものになっているようだ。
大阪大学アーカイブズ規程に基づいて設置されている。
ただ、管理運営組織であっても、特にやることは変わらないとの話だった。
■「国立公文書館等」指定問題
「国立公文書館等」の指定を受けなければ、法人文書を移管することができない。
ただ、多くの大学では、管理運営のための基準である「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」の要件がきついということで尻込みをしているところがある。
特に受入後1年以内の排架を原則とすることや、永久保存するための施設要件(くん蒸施設など)が厳しいということが言われている。
阪大アーカイブズは「国立公文書館等」への指定を受けることになっている。
ただ、「大阪大学アーカイブズ」全体が指定を受けるが、「特定歴史公文書等」を扱うのは「法人文書資料部門」に限り、それ以外の資料を扱う「大学史資料部門」については「歴史資料等保有施設」の指定を受けるとのことである。
つまり、ガイドラインに従うのは「法人文書資料部門」のみに限るということのようだ。
私もよく仕組みがわかっていないのだが、公文書管理委員会で審議される「利用等規則」の適用を、移管された法人文書のみに限るという方法を採っているようである(広島大学文書館がモデル)。
そのため、「特定歴史公文書等利用等規程」という形を取り、それ以外の資料にも別の利用規程を作るという二本立ての形を取っている。
国立大学法人で「国立公文書館等」の指定を受けている館は、
・「全体で受けて、中で分ける」ケース・・・広島大、阪大
・「組織自体を2つに分けて、片方だけ指定を受ける」ケース・・・東北大
・「法人文書以外のものも全部一括して指定を受ける」ケース・・・残りすべて
という3つのタイプに分かれているようだ。
「全体で受けて、中で分ける」というのは、内閣府も容認しているようである。
東北大方式を取る場合、両部門に専門の担当職員を置く必要があるが、広島大方式を取ると、全体を担当する職員がいればよいということになる。
このように分けると、法人文書以外の資料(教職員からの寄贈資料など)を原則1年以内に配架するという義務がなくなる。
ただ、内閣府からは、特定歴史公文書等とそれ以外との「書庫を分けろ」ということを強く言われるそうである。
「この書棚からこの書棚まで」とかいう分け方ではダメらしい。
あと、施設要件である害虫駆除用の「くん蒸」などの施設だが、阪大では「冷凍庫」を買ったことでOKになったそうだ(型落ちで30万だったらしい)。
除湿器は家庭用のもの、空調機は備え付けのもの(元々事務室だった)、窓は遮光カーテン(ただし脇から光が漏れるのでマジックテープを付けている)で問題なかったそうだ。
内閣府が要求する施設要件については、かなり緩くなっているという印象を受けた。
なお、学内での移管廃棄の規則については、現在改訂作業中とのこと。
お話しをうかがい、施設を見学させていただいたが、先行した大学の経験を生かした制度設計をされているということを強く感じた。
スペースはかなり多く確保できていることも重要だと思われる。
公文書管理法が施行されて以後、国立公文書館等の新規の申請は阪大が初である。
阪大の経験をのちに続く大学が活かしていくことが重要なのではないか。
なお、阪大アーカイブズのスタッフは任期付の教員1名(+総務課の事務職員)しかいない。
労働契約法改正の関係で、阪大は任期付は5年以内に雇い止めにする方針とのことなので、今後運営がきちんとできるのかが不安が残る。
きちんと必要なスタッフは常勤化する必要があるのではないかと思う。
次回は神戸大学。
せっかくなので、簡単な見学記を。
なお、ここでの記述は、私が見聞きしたことを私の解釈で書いているものです。よってその施設の公式見解では無いことはあらかじめお断りしておきます。
大阪大学アーカイブズ
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/ed_support/archives_room
■概要
大阪大学アーカイブズは2012年10月1日に設置された。一般公開は2013年4月1日予定。
場所は箕面キャンパス(旧大阪外国語大学)の管理棟(事務があった所)にある。
大阪大学は2006年に文書館設置準備室が作られたが、その後、なかなか文書館の設置が決まらない状態が続いた。
特に「場所」の問題が大きかったようだ。
だが、合併した外語大の管理棟が空き、そこに入ることができたことで、文書館設置へと大きく舵を切ることになったそうだ。
現在公文書管理法に基づく「国立公文書館等」への申請を行っており、4月1日には認定される予定である。
よって、大学の法人文書の受入が可能な施設となる。
なお、「文書館」と名前を付けようとしたところ、諸事情で反対があったため、それなら「アーカイブズ」でということになったそうである。
現在のスペースは798平方メートル(うち書庫は464平方メートル(書架延長2.09km)。担当者の話だと、1300平方メートルまで増える予定があるとのことである。
書庫の中はまだ何も入っておらず、移管はこれから受けるとのこと。
ただ、建物の強度の関係で移動書架を置けなかったため、固定書架のみの設置となっている。
閲覧室はかなり広い。
スタッフは
○アーカイブズ―室長1(教授併任)、専任教員1(准教授(任期付))、兼任教員12名
○総務課文書管理室―室長1(総務課長併任)、室長代行(再雇用の非常勤)1、室長補佐(常勤)1、事務補佐員(非常勤)2
という体制となっている。
アーカイブズの事務を総務課文書管理室が引き受けており(情報公開請求や現金出納への対応も担当)、アーカイブズに4名の職員が常駐している。
なお、室長代行に元情報推進部長だった方を再雇用で雇っているとのこと。そのため、他部局の事務職員とも連絡が取りやすくなっているとのことである。
学内的な位置づけは「管理運営組織」。
他大学は「教育研究組織」に位置づけられているが、阪大は異なるそうである(つまり図書館や博物館とは別系統の組織)。
そのため、独立組織のようなものになっているようだ。
大阪大学アーカイブズ規程に基づいて設置されている。
ただ、管理運営組織であっても、特にやることは変わらないとの話だった。
■「国立公文書館等」指定問題
「国立公文書館等」の指定を受けなければ、法人文書を移管することができない。
ただ、多くの大学では、管理運営のための基準である「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」の要件がきついということで尻込みをしているところがある。
特に受入後1年以内の排架を原則とすることや、永久保存するための施設要件(くん蒸施設など)が厳しいということが言われている。
阪大アーカイブズは「国立公文書館等」への指定を受けることになっている。
ただ、「大阪大学アーカイブズ」全体が指定を受けるが、「特定歴史公文書等」を扱うのは「法人文書資料部門」に限り、それ以外の資料を扱う「大学史資料部門」については「歴史資料等保有施設」の指定を受けるとのことである。
つまり、ガイドラインに従うのは「法人文書資料部門」のみに限るということのようだ。
私もよく仕組みがわかっていないのだが、公文書管理委員会で審議される「利用等規則」の適用を、移管された法人文書のみに限るという方法を採っているようである(広島大学文書館がモデル)。
そのため、「特定歴史公文書等利用等規程」という形を取り、それ以外の資料にも別の利用規程を作るという二本立ての形を取っている。
国立大学法人で「国立公文書館等」の指定を受けている館は、
・「全体で受けて、中で分ける」ケース・・・広島大、阪大
・「組織自体を2つに分けて、片方だけ指定を受ける」ケース・・・東北大
・「法人文書以外のものも全部一括して指定を受ける」ケース・・・残りすべて
という3つのタイプに分かれているようだ。
「全体で受けて、中で分ける」というのは、内閣府も容認しているようである。
東北大方式を取る場合、両部門に専門の担当職員を置く必要があるが、広島大方式を取ると、全体を担当する職員がいればよいということになる。
このように分けると、法人文書以外の資料(教職員からの寄贈資料など)を原則1年以内に配架するという義務がなくなる。
ただ、内閣府からは、特定歴史公文書等とそれ以外との「書庫を分けろ」ということを強く言われるそうである。
「この書棚からこの書棚まで」とかいう分け方ではダメらしい。
あと、施設要件である害虫駆除用の「くん蒸」などの施設だが、阪大では「冷凍庫」を買ったことでOKになったそうだ(型落ちで30万だったらしい)。
除湿器は家庭用のもの、空調機は備え付けのもの(元々事務室だった)、窓は遮光カーテン(ただし脇から光が漏れるのでマジックテープを付けている)で問題なかったそうだ。
内閣府が要求する施設要件については、かなり緩くなっているという印象を受けた。
なお、学内での移管廃棄の規則については、現在改訂作業中とのこと。
お話しをうかがい、施設を見学させていただいたが、先行した大学の経験を生かした制度設計をされているということを強く感じた。
スペースはかなり多く確保できていることも重要だと思われる。
公文書管理法が施行されて以後、国立公文書館等の新規の申請は阪大が初である。
阪大の経験をのちに続く大学が活かしていくことが重要なのではないか。
なお、阪大アーカイブズのスタッフは任期付の教員1名(+総務課の事務職員)しかいない。
労働契約法改正の関係で、阪大は任期付は5年以内に雇い止めにする方針とのことなので、今後運営がきちんとできるのかが不安が残る。
きちんと必要なスタッフは常勤化する必要があるのではないかと思う。
次回は神戸大学。
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