「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」を読む 第2回 [2013年公文書管理問題]
2013年2月25日の公文書管理委員会で、「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」が公開されました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-1.pdf
要約版
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-2.pdf
公文書管理法第9条(行政機関)、第12条(独立行政法人)、第26条(国立公文書館等)において、毎年管理状況を内閣総理大臣に報告する義務が各機関に課せられており、それをまとめたのが今回の報告書ということになります。
2011年4月1日から2012年3月31日までが今回の対象時期です。
この報告書の解説をします。
第1回はこちら。
では第2回。
③移管・廃棄の概況(9~11頁)
保存期間満了時の移管や廃棄の状況を、それ以前の「行政文書の管理状況調査について」のデータと並べてみる。
今回のものとそれ以前との数が大きく異なるのは、「行政文書の管理状況調査について」は「各省庁から国立公文書館に申出のあったファイル数をもとに算出」していたため。
一昨年度までのデータは「申出があった」数を元にしており、すべてでは無かったことに、今回いまさらながら気づいた。
なお、移管数や延長数を見ると、パーセンテージは下がったが数はそれほど変わっていない。
このことから、いままで国立公文書館に知らせずに廃棄していた省庁の報告が加わったので、廃棄数が増えたということになるだろう。
よって、あまりパーセンテージを見ても仕方がないかもしれない。
まず移管数であるが、対象データが100万件増えたにも関わらず、1000件減っている。
さらに移管数を細かく見ると、国立公文書館へは6087、宮内公文書館304、外交史料館4138となっている(10529しかないのは、移管事務が年度内に終わらなかったため)。
2010年度のデータが国立公文書館のデータのみであることを考えると、実質的には国立公文書館への移管数は大幅に減ったと見るべきだろう。
情報公開法が施行された時にも直後の数年は移管数が減少した。公文書管理法に対する警戒なのかわからないが、思ったよりも移管数が増えてこないなというのが率直な感想。
公文書管理法によって移管対象文書は増えると私は考えていたので、増えるどころか減ったのは問題があるように思う。
なお詳しいデータが資料4(24頁)にあるが、ファイル数との比率で考えると、内閣官房、警察庁、公安調査庁、検察庁、国税庁、防衛省あたりの移管数の少なさは気になる。
というより、移管に積極的な機関とそうでない機関との差が激しいのが特徴といえるだろう。
④廃棄へのチェック(11~12頁)
公文書管理法によって、行政文書を廃棄するためには内閣総理大臣の同意が必要となった。
これによって、各機関が廃棄指定した文書を内閣府や国立公文書館がチェックできることになった。
このチェック機能が働くかは、恣意的な廃棄を止めるためには重要なことである。
データを見ると、廃棄協議数2,125,146のうち、廃棄同意は507,823(23.9%)、不同意は243(0.01%)、協議中1,617,080(76.1%)となった。
まず4分の3が協議中ということから、処理が明らかに滞っていることがわかる。
これは当たり前のことで、今の内閣府公文書管理課や国立公文書館の職員数で200万件の文書のチェックをするというのがそもそも無理である。
これが毎年積み重なっていけば、どんどん処理できない文書が溜まっていくことになる。
もちろん、毎年やっていれば経験値が上がるので次第に廃棄の判断は速くなるとは思うが、それにしても件数が多すぎる。
早急に人数を増やすなどの対策が必要となるだろう。
また、不同意=廃棄文書から永久保存へと変わったものは243件に留まった。
しかも細かく見ると、外交史料館が187件を占めており、実質的には外務省内でのチェックで見つかったものがほとんどである。
つまり、国立公文書館や内閣府の所では、廃棄から保存に変わったものはほとんど無いということである。
好意的に取れば事前にきちんと廃棄と保存の分類ができていたということになろうが、今までの経緯から考えると、チェックが機能していないというように思える。
前述したが、これは公文書管理課や国立公文書館の問題というよりは、物理的に人員が足りていないということから来るものだと思われる。
私は以前からずっと主張しているが、こういったチェック体制は「気合い」でどうなるものではない。
適切な人員と予算が必要だと強く思う。
⑤延長の内容(12-14頁)
延長措置についても、その内容が公開された。
表8を見ると、保存期間を30年以上延長したものは4316件(2.8%)、通算の保存期間が60年以上になるもの7173件(4.7%)ある。
林野庁や国土交通省といった土地や林野などの権利関係の書類を持っている省庁は、長期の延長をかける傾向があるようだ。
ただこの数字は昨年度満了になった文書に関するデータでしかない。
例えば宮内庁などでは、すでに情報公開法施行時に長期の延長を行っており、こういったデータは今回の調査では出てこないと思われる。
なので、7173件は氷山の一角でしか無いだろう。
第3回へ続く。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-1.pdf
要約版
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-2.pdf
公文書管理法第9条(行政機関)、第12条(独立行政法人)、第26条(国立公文書館等)において、毎年管理状況を内閣総理大臣に報告する義務が各機関に課せられており、それをまとめたのが今回の報告書ということになります。
2011年4月1日から2012年3月31日までが今回の対象時期です。
この報告書の解説をします。
第1回はこちら。
では第2回。
③移管・廃棄の概況(9~11頁)
保存期間満了時の移管や廃棄の状況を、それ以前の「行政文書の管理状況調査について」のデータと並べてみる。
総数 | 移管 | 廃棄 | 延長 | |
2011年度 | 2,339,901 (100%) |
17,140 (0.7%) |
2,164,048 (92.5%) |
158,713 (6.8%) |
2010年度 | 1,475,761 (100%) |
18,303 (1.2%) |
1,306,582 (88.6%) |
150,976 (10.1%) |
2009年度 | 1,272,071 (100%) |
13,062 (1.0%) |
1,131,259 (88.9%) |
127,755 (10.0%) |
今回のものとそれ以前との数が大きく異なるのは、「行政文書の管理状況調査について」は「各省庁から国立公文書館に申出のあったファイル数をもとに算出」していたため。
一昨年度までのデータは「申出があった」数を元にしており、すべてでは無かったことに、今回いまさらながら気づいた。
なお、移管数や延長数を見ると、パーセンテージは下がったが数はそれほど変わっていない。
このことから、いままで国立公文書館に知らせずに廃棄していた省庁の報告が加わったので、廃棄数が増えたということになるだろう。
よって、あまりパーセンテージを見ても仕方がないかもしれない。
まず移管数であるが、対象データが100万件増えたにも関わらず、1000件減っている。
さらに移管数を細かく見ると、国立公文書館へは6087、宮内公文書館304、外交史料館4138となっている(10529しかないのは、移管事務が年度内に終わらなかったため)。
2010年度のデータが国立公文書館のデータのみであることを考えると、実質的には国立公文書館への移管数は大幅に減ったと見るべきだろう。
情報公開法が施行された時にも直後の数年は移管数が減少した。公文書管理法に対する警戒なのかわからないが、思ったよりも移管数が増えてこないなというのが率直な感想。
公文書管理法によって移管対象文書は増えると私は考えていたので、増えるどころか減ったのは問題があるように思う。
なお詳しいデータが資料4(24頁)にあるが、ファイル数との比率で考えると、内閣官房、警察庁、公安調査庁、検察庁、国税庁、防衛省あたりの移管数の少なさは気になる。
というより、移管に積極的な機関とそうでない機関との差が激しいのが特徴といえるだろう。
④廃棄へのチェック(11~12頁)
公文書管理法によって、行政文書を廃棄するためには内閣総理大臣の同意が必要となった。
これによって、各機関が廃棄指定した文書を内閣府や国立公文書館がチェックできることになった。
このチェック機能が働くかは、恣意的な廃棄を止めるためには重要なことである。
データを見ると、廃棄協議数2,125,146のうち、廃棄同意は507,823(23.9%)、不同意は243(0.01%)、協議中1,617,080(76.1%)となった。
まず4分の3が協議中ということから、処理が明らかに滞っていることがわかる。
これは当たり前のことで、今の内閣府公文書管理課や国立公文書館の職員数で200万件の文書のチェックをするというのがそもそも無理である。
これが毎年積み重なっていけば、どんどん処理できない文書が溜まっていくことになる。
もちろん、毎年やっていれば経験値が上がるので次第に廃棄の判断は速くなるとは思うが、それにしても件数が多すぎる。
早急に人数を増やすなどの対策が必要となるだろう。
また、不同意=廃棄文書から永久保存へと変わったものは243件に留まった。
しかも細かく見ると、外交史料館が187件を占めており、実質的には外務省内でのチェックで見つかったものがほとんどである。
つまり、国立公文書館や内閣府の所では、廃棄から保存に変わったものはほとんど無いということである。
好意的に取れば事前にきちんと廃棄と保存の分類ができていたということになろうが、今までの経緯から考えると、チェックが機能していないというように思える。
前述したが、これは公文書管理課や国立公文書館の問題というよりは、物理的に人員が足りていないということから来るものだと思われる。
私は以前からずっと主張しているが、こういったチェック体制は「気合い」でどうなるものではない。
適切な人員と予算が必要だと強く思う。
⑤延長の内容(12-14頁)
延長措置についても、その内容が公開された。
表8を見ると、保存期間を30年以上延長したものは4316件(2.8%)、通算の保存期間が60年以上になるもの7173件(4.7%)ある。
林野庁や国土交通省といった土地や林野などの権利関係の書類を持っている省庁は、長期の延長をかける傾向があるようだ。
ただこの数字は昨年度満了になった文書に関するデータでしかない。
例えば宮内庁などでは、すでに情報公開法施行時に長期の延長を行っており、こういったデータは今回の調査では出てこないと思われる。
なので、7173件は氷山の一角でしか無いだろう。
第3回へ続く。
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