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宮城歴史資料保全ネットワークでボランティアをしてきた [雑感]

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2012年2月22日から24日にNPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク(宮城資料ネット)においてボランティアを行ってきた。
勤務校の先生が、ゼミ生を連れてボランティアに行くので同行したい方がいればというお誘いをうけたので、それに乗っかったのである。

宮城資料ネットは「宮城県内の歴史研究者や大学院生、あるいは文化財行政に関わる自治体職員などを中心に立ち上げられた、歴史資料の保全活動をおこなう組織」であり、「被災地域において、貴重な歴史資料の救出活動や、資料が置かれている状況の調査などをおこない、歴史資料の散逸や消滅を防ぐ」役割を果たしてきた。詳しくはこちらを。

今回の東日本大震災が起きた際も、被災地を回って歴史資料の保全活動を行うだけでなく、「宮城資料ネットニュース」を数日おきに発行して、被災地における歴史資料の状況を知らせていた。
私自身、このネットニュースの配信を通じて活動を知っていた。

ボランティアでやったことは、津波で被災した石巻のあるお医者さんの家の文書のクリーニング作業であった。
基本的には、泥やホコリを刷毛ではらう、カビを落とす、エタノールをかけて消毒するという作業
初心者でもできる(?)作業を回していただいていたこともあるが、特に専門技術がいるというわけではなく、むしろ必要なのは根気と体力という感じであった。
今回担当した資料が、近現代文書(特に昭和戦前期)が多かったので、資料自体に興味があって特に作業が大変だとは思わなかった。

ただ、改めて思ったのは、こういった被災地における資料救出作業は、歴史研究者のためではなく「被災者のため」であるということだ。
今回担当した資料には、本や冊子が多く含まれていたが、おそらくこれらはどこかの図書館に行けば入手可能な物だろう。
でも、その一つ一つのモノがおそらく所有者にとっては思い出につながるものだと思う。
そうした「想い」を救出しているのだなと。

あとで宮城資料ネットの平川新先生(東北大学)に、「今回救出した資料は被災者にお返しするのでしょうが、もし先方がもう引き取れないと言われたときにはどうされるのですか?」とうかがったところ、「もし相談を受けたら、博物館なり資料館なり寄贈できそうなところを紹介する。ただし、こちらから「この資料は貴重だから寄贈しましょう」とは絶対に言わない。あくまでも先方が相談してきたときにそういう話をする」とのお答えがあった。

自分が担当した中に写真帳があったんだが、ほとんどが表面が剥がれてしまっていて見えなくなっていたのだが、1枚だけかろうじて見える写真が残っていてなんだかほっとした。

2日目の作業後に、平川先生から宮城資料ネットの活動について色々とお話しがあった。
聞いた話の中で印象に残っているのは、
「震災がおきてからでは遅い。日頃から歴史資料の所在リストを作っておかないと、活動がスムーズにいかない。」
「各地の被災自治体が「歴史と文化の再生と継承」を復興計画の中にうたっている。言葉としてはわかるが、これをどう具体化していくのか。そのサポートを歴史資料を基にしてどのようにできるのかが今後重要になってくる。」

ということである。
特に後者はどう考えればよいのか。歴史研究者として考えざるをえないが、自分でも何とも答えがわからない。

今回ボランティアをやってみて、手に技術が無くてもそれなりに役立つことがあるのだなということがわかった。
どうしても「技術がない自分が行ってどうなるのか」という考えが先に立ってしまうところがあって、躊躇してしまうところがあった。
今後は思いついたときには躊躇せずに手を挙げようと思った次第。

なお同行した渡辺尚志先生が書いた感想が、宮城資料ネットニュースの160号に掲載されています。
http://www.miyagi-shiryounet.org/03/news/2011/201111/151kara.htm#160

追記(3/8) さらに同行した佐藤美弥氏の感想も161号に掲載されています。

余談。
このボランティアの後、石巻を見に行った。
被災地にもやはり躊躇があって行くことができなかった。
でもボランティアをやった勢いで沿岸部まで行った。

当日は大雪だった。雪がない方がショックは大きかったかもしれない。

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宮城資料ネットが保存に関わった本間家土蔵。

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まだ取り壊されていない建物がぽつぽつと残っている。

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お墓だけは撤去されずに残っている。

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被災した門脇小学校。

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沿岸部にあった瓦礫の集積場。

正直、どう反応して良いかわからない風景だった。
何もない。あっても壊れた家やお墓。道行く車はほとんどがトラック。
人と全くすれ違わない(これは大雪のせいもあろうが)。

やはり行ってよかったのだと思った。
日本現代史を教える研究者として、最低限見なければならない風景だったと思う。
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くらはら

どうもお世話になってます。
被災地での作業、お疲れ様でした(これも一つの救助ですね)。
今回のボランティアのお話、クラハラみたいな部外者でも行けるんですか?
by くらはら (2012-03-12 19:17) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> くらはらさま

どうもです。
誰でも行けるかと思います。特に専門技術は必要ないようですので。
宮城資料ネットの方に直接連絡を取ってみたらいかがでしょうか。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2012-03-13 20:08) 

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