全史料協2010年大会の感想(上) ポスターセッションと資料保存ワークショップ [情報公開・文書管理]
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)の2010年大会が11月24,25日に京都で行われました。
大会内容についてはこちらを↓
http://www.jsai.jp/taikai/kyoto/index.html
全史料協は、文書記録を中心とする記録史料を保存するアーカイブズや、それに携わる人たちなどで構成される団体。
日本のアーカイブズ業界における一番大きな団体組織と言ってよいと思う。
私はこれまで大会に参加したことはなかったが、友人に誘われたのと、自分自身も興味のあるテーマだったこともあり、参加をしてきた。
以下で感想を述べていきたいと思います。
なお、私は「非会員」という立場で参加していた数少ない人物だと思うので、関係者の人がなかなか言いづらいようなこともきちんと書いておきたいと思います。
もちろん、書いた内容は「個人的な感想」です。
1日目の研修会と記念講演については略します。
○ポスターセッションについて
今回から初めて導入されたとのこと。
あまり歴史の学会ではポスターセッションというのは行われないので、実は見たこと自体初めての体験だった。
この試みはなかなか良いと思う。
大会の講演自体がすべて主催者側の「企画」で成り立っているので、会員が主体的に参加できるセッションは重要だと思う。
大会において、会員が「お客様」にならないようにするためにも、この試みはもっと積極的に進めて良いと思う。
また、こういったセッションは、若手の顔やテーマの売り込みにもなるし、普段話せないような人からのコメントを受ける機会にもなる。
会全体で若手を育てていくためにも、こういった機会は必要不可欠だと思う。
個々のセッションについてのコメントはしないが、参考になるものが多かった。
なお、機関会員(各アーカイブズ)のポスターでは、「なにをポスターで訴えたかったの?」と首をひねらざるを得ないようなものが散見された。
自分の館の基本的な紹介だけをするのは、正直意味があまり無いように思う。大会自体、業界の中の人しかいないし。
個人会員の発表の方に、絶えず人だかりがあったことは、決して偶然ではない。
「何かを伝えたい」という思いの大きさが、その違いなのだと思う。
もちろん機関会員の中にも、テーマが明確であった所は盛況だったことも指摘しておきたい。
○資料保存ワークショップ
5団体による共同展示。
せっかくなので5団体の紹介。
元興寺文化財研究所
京都造形芸術大学日本庭園歴史遺産研究センター
国宝修理装潢師連盟
京都府立総合資料館歴史資料課
歴史資料ネットワーク
非常に興味深いワークショップだった。
どうしてもこういうワークショップがあると、「最新技術の展示会」みたいな感じになるという印象だったが、良い意味で裏切られた。
主催側に「できることからやっていこう」「保存修理の敷居を下げよう」という意図が明確に出ていたため、初心者にも非常に取っつきやすかったように思う。
個人的には、やはり歴史資料ネットワーク(史料ネット)の仕事が興味深かった。
史料ネットは私の所属している歴史学研究会との連携もあり、活動内容自体は知ってはいた。
しかし、その活動の一端を実際に見ることができて、色々と得心がいった。
史料ネットは阪神・淡路大震災の時に設立された。
活動内容は、簡単に述べると「災害時に破損した歴史資料(文化財)を緊急修復する」ということを目的としている。
詳しくは史料ネットのブログを見ていただくとわかるが、例えば昨年あった兵庫県佐用町での台風水害の際には、現地の民家などに所蔵されている泥まみれになった古文書などを救出した。
その救出の「やり方」というのが非常におもしろい。
あくまでも緊急処置だが、高価な機械をほとんど使わない。
キッチンペーパーと市販の消毒用エタノール、霧吹きや竹べらといったどこでも売ってそうなものばかり。
エタノールで消毒して、あとはひたすらキッチンペーパーで水分を吸い取っていくだけ。
これは、資料の多くが「和紙と墨」であるからできることのようだ。これらは濡れても文字が消えない。
なので、ざっくりとした言い方だが「水洗いできる」。
初めて作業の映像などを見たが、視覚的に見ると、活動がものすごくわかりやすい。
史料ネットは、今回配布したビラや映像を、どこかでまとめて見れるようにネット上に上げておいた方が良いのではないかと思う。
普段史料ネットは歴史系の学会に近いところで活動をしていることが多いように思うので、おそらくアーカイブズ関係者の人にとっても、その活動は興味深かったのではないだろうか。
個別報告については(中)以降で。
大会内容についてはこちらを↓
http://www.jsai.jp/taikai/kyoto/index.html
全史料協は、文書記録を中心とする記録史料を保存するアーカイブズや、それに携わる人たちなどで構成される団体。
日本のアーカイブズ業界における一番大きな団体組織と言ってよいと思う。
私はこれまで大会に参加したことはなかったが、友人に誘われたのと、自分自身も興味のあるテーマだったこともあり、参加をしてきた。
以下で感想を述べていきたいと思います。
なお、私は「非会員」という立場で参加していた数少ない人物だと思うので、関係者の人がなかなか言いづらいようなこともきちんと書いておきたいと思います。
もちろん、書いた内容は「個人的な感想」です。
1日目の研修会と記念講演については略します。
○ポスターセッションについて
今回から初めて導入されたとのこと。
あまり歴史の学会ではポスターセッションというのは行われないので、実は見たこと自体初めての体験だった。
この試みはなかなか良いと思う。
大会の講演自体がすべて主催者側の「企画」で成り立っているので、会員が主体的に参加できるセッションは重要だと思う。
大会において、会員が「お客様」にならないようにするためにも、この試みはもっと積極的に進めて良いと思う。
また、こういったセッションは、若手の顔やテーマの売り込みにもなるし、普段話せないような人からのコメントを受ける機会にもなる。
会全体で若手を育てていくためにも、こういった機会は必要不可欠だと思う。
個々のセッションについてのコメントはしないが、参考になるものが多かった。
なお、機関会員(各アーカイブズ)のポスターでは、「なにをポスターで訴えたかったの?」と首をひねらざるを得ないようなものが散見された。
自分の館の基本的な紹介だけをするのは、正直意味があまり無いように思う。大会自体、業界の中の人しかいないし。
個人会員の発表の方に、絶えず人だかりがあったことは、決して偶然ではない。
「何かを伝えたい」という思いの大きさが、その違いなのだと思う。
もちろん機関会員の中にも、テーマが明確であった所は盛況だったことも指摘しておきたい。
○資料保存ワークショップ
5団体による共同展示。
せっかくなので5団体の紹介。
元興寺文化財研究所
京都造形芸術大学日本庭園歴史遺産研究センター
国宝修理装潢師連盟
京都府立総合資料館歴史資料課
歴史資料ネットワーク
非常に興味深いワークショップだった。
どうしてもこういうワークショップがあると、「最新技術の展示会」みたいな感じになるという印象だったが、良い意味で裏切られた。
主催側に「できることからやっていこう」「保存修理の敷居を下げよう」という意図が明確に出ていたため、初心者にも非常に取っつきやすかったように思う。
個人的には、やはり歴史資料ネットワーク(史料ネット)の仕事が興味深かった。
史料ネットは私の所属している歴史学研究会との連携もあり、活動内容自体は知ってはいた。
しかし、その活動の一端を実際に見ることができて、色々と得心がいった。
史料ネットは阪神・淡路大震災の時に設立された。
活動内容は、簡単に述べると「災害時に破損した歴史資料(文化財)を緊急修復する」ということを目的としている。
詳しくは史料ネットのブログを見ていただくとわかるが、例えば昨年あった兵庫県佐用町での台風水害の際には、現地の民家などに所蔵されている泥まみれになった古文書などを救出した。
その救出の「やり方」というのが非常におもしろい。
あくまでも緊急処置だが、高価な機械をほとんど使わない。
キッチンペーパーと市販の消毒用エタノール、霧吹きや竹べらといったどこでも売ってそうなものばかり。
エタノールで消毒して、あとはひたすらキッチンペーパーで水分を吸い取っていくだけ。
これは、資料の多くが「和紙と墨」であるからできることのようだ。これらは濡れても文字が消えない。
なので、ざっくりとした言い方だが「水洗いできる」。
初めて作業の映像などを見たが、視覚的に見ると、活動がものすごくわかりやすい。
史料ネットは、今回配布したビラや映像を、どこかでまとめて見れるようにネット上に上げておいた方が良いのではないかと思う。
普段史料ネットは歴史系の学会に近いところで活動をしていることが多いように思うので、おそらくアーカイブズ関係者の人にとっても、その活動は興味深かったのではないだろうか。
個別報告については(中)以降で。
いつもブログ勉強になります。
こんなに詳しく、かつわかりやすく解説できるというのは、すごいですね。瀬畑さんは公文書館にお勤めの方なのですか?
by 住谷 (2011-01-12 22:06)
> 住谷さま
コメントありがとうございました。
私は公文書館には勤務しておりません。
あくまでも、歴史研究者という「利用者」の立場から、この問題に関心をもって取り組んでおります。
今後もご愛読をよろしく御願いいたします。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2011-01-13 20:03)