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防衛省防衛研究所と公文書管理法 [2010年公文書管理問題]

ツイッターでつぶやいたら、えらい勢いでリツイートされたので、どうやら関心のある方は多いのだなと思って、あらためてブログに書き残しておきます。

防衛省防衛研究所の旧陸海軍資料の扱いが、来年4月の公文書管理法施行でどうなるのかという話。
ちょうどいま、公文書管理法の解説に関する原稿を書いていたので、多少改変した上で、下に貼っておきます。

公文書管理法
第2条 4  この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める研究所その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)

5  この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
四  別表第二の上欄に掲げる独立行政法人等が保有している文書であって、政令で定めるところにより、専ら同表下欄に掲げる業務に係るものとして、同欄に掲げる業務以外の業務に係るものと区分されるもの


注目したいのは、第4項、第5項の双方の第3号に掲げられた「施設」のことである。
おそらく、ここで対象となる「施設」は、現在の情報公開法による、歴史的・文化的な資料などを保存する施設として指定を受けた所と同じになると思われる。
具体的には、宮内庁書陵部図書寮文庫、国立大学法人の図書館、大学共同利用機関法人(国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館など)の資料保存部局、独立行政法人の博物館や美術館(国立科学博物館、国立西洋美術館など)がその対象となるだろう。

これらの施設で管理する文書は、自らの運営に関するものは「行政文書」や「法人文書」になるが、歴史的・文化的資料や学術研究用の資料にあたるものは、「行政文書」や「法人文書」からは「外れる」ということになる。
ただし、公文書管理法施行令案第四条、第五条では、この特別な「資料」の管理方法についての以下のような規定がある(第5条はほぼ同文なので略)。

(法第二条第四項第三号の歴史的な資料等の範囲)
第四条 法第二条第四項第三号の歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料は、次に掲げる方法により管理されているものとする。
 一 当該資料が専用の場所において適切に保存されていること。
 二 当該資料の目録が作成され、かつ、当該目録が一般の閲覧に供されていること。
 三 次に掲げるものを除き、一般の利用の制限が行われていないこと。
  イ 当該資料に行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第五条第一号及び第二号に掲げる情報が記録されていると認められる場合において、当該資料(当該情報が記録されている部分に限る。)の一般の利用を制限すること。
  ロ 当該資料の全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法第二条第七項第四号に規定する法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は個人から寄贈又は寄託を受けている場合において、当該期間が経過するまでの間、当該資料の全部又は一部の一般の利用を制限すること。
  ハ 当該資料の原本を利用させることにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該資料を保有する施設において当該原本が現に使用されている場合において、当該原本の一般の利用の方法又は期間を制限すること。
 四 当該資料の利用の方法及び期間に関する定めが設けられ、かつ、当該定めが一般の閲覧に供されていること。
 五 当該資料に個人情報(生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下同じ。)が記録されている場合には、当該個人情報の漏えいの防止のために必要な措置を講じていること。


これを見ると、この指定を受けた施設は、専用の場所での資料保存、所蔵資料目録の作成・公表、一部の利用制限を除き資料を全て公開、規則の作成・公表、個人情報漏洩防止措置、に取り組む必要がある。
ただ、これは第5号を除くと、現在の情報公開法施行令(行政機関第3条、独法第2条)とほぼ同文なので、実際には大きな変化はないということになるだろう。

なお、防衛省防衛研究所もこの「施設」にあたることになり、「国立公文書館等」(外交史料館や宮内庁書陵部宮内公文書館など)にはならない。
よって、国立公文書館等に保存される資料と防衛研究所で保存される資料では、扱いが大きく変わってくる。

行政文書が国立公文書館や外交史料館などに移管された場合は、公文書管理法における「特定歴史公文書等」になるのだが、同じ行政文書であった旧陸海軍文書は、事実上「民間文書」として「研究所その他の施設」にて管理されることになるのである。
「特例歴史公文書等」にあたれば、公文書管理法に基づいた公開方法を取らなければならず、そこに法的な拘束力が発生する。
しかし、「特定歴史公文書等」から外れた文書には、上記の公文書管理法施行令第4条の制限しかかからない。
出自は同類の文書にも拘わらず、施設の違いでこのような差が出るのは、本来ならばおかしいと言えよう。

以上が原稿の一部ですが、防研の話は11月8日に担当者から電話で直接うかがった話です。
その際に、その担当者の方は「今と変わらないと聞いている」とおっしゃってました。

なお、なぜ「国立公文書館等」にならないかということを聞いたところ、「文書の移管を受けないから」という回答でした。
別に移管を受けなくても、「国立公文書館等」になって問題はないのだけれども、結局色々な規制のある制度にわざわざ加わらなくてもということなのでしょう。

この上記の問題は、施行令のパブコメの中で、かなり細かく指摘をされている方がおられます。
それも参考になるかと思います。(45頁、意見146)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu1.pdf
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