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特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第4回 D:廃棄以降 [公文書管理委員会]

公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html

そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。

特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf

第4回はD:廃棄、E:研修、F:雑則について。
取り上げる項目は第1回を参照

D-1 特定歴史公文書等の廃棄
(1) 館は、特定歴史公文書等として保存している文書について、劣化が極限まで進展して判読及び修復が不可能で利用できなくなり、歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、内閣総理大臣に協議し、その同意を得て、当該特定歴史公文書等を廃棄することができる。
(2) 館は、(1)の規定に基づき特定歴史公文書等の廃棄を行った場合には、廃棄に関する記録を作成し、公表するものとする。


公文書館に移された文書の廃棄に関する規定。
法律制定時には、何か隠すために使われるのではと危惧されていたが、結局「劣化」以外の理由では使えないことになった。
解説でも「外形的な要素のみがその理由として是認される」との限定がある。

基本的に保存されている文書が「劣化」して読めないレベルにまでなるというのは、あまり想定できない。そういう文書は先にマイクロフィルム化されて、そちらで読むようになることがほどんどであろう。
なので、実際にはほとんど使われることのない条項になりそうである。


第E章 研修
E-1 研修の実施
(1) 館は、その職員に対し、歴史公文書等を適切に保存し利用に供するために必要な専門的知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(2) 館は、(1)の他に、△△省(△△法人)の職員に対し、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(3) 館は、(1)及び(2)の研修の実施に当たっては、その必要性を把握し、その結果に基づいて研修の計画を立てなければならない。
(4) 館は、(1)及び(2)の研修を実施したときは、研修計画の改善その他歴史公文書等の適切な保存及び移管の改善に資するため、その効果の把握に努めるものとする。


これは、第1回でも少し書いたが、公文書管理法第27条第2項に列記された「利用等規則」に書かなければならないものに含まれていない。
だが、各行政機関の規則用の「行政文書の管理に関するガイドライン」において、この「研修」が独立させておかれることになったことに合わせたのだと思われる。

この制度がうまくいくかは、結局は現場の人たちの意欲や技術の問題が非常に大きい。
予算をきちんと研修に配分して貰うためにも、この項目は独立させて入れておく必要があると思う。


F-1 保存及び利用の状況の報告
(1) 館は、特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
(2) 館は、(1)に規定する報告のため、必要に応じて調査を実施するものとする。


この報告する項目は、解説によると以下の通り。

○ 報告すべき事項として、具体的に、以下のものが考えられる。 ・保存している特定歴史公文書等の数量、書架延長、媒体別の数量
・保存している特定歴史公文書等の分類状況
・目録の作成状況
・年間移管冊数、媒体別の数量
・B-1(3)に定める事前審査の方針
・著作権の処理状況
・利用制限事由に関する審査を行った件数(事前審査によるもの、利用請求によるものを分けて記載)
・複製物の作成計画及び実績(数量、内容)
・利用件数、閲覧・写しの交付の内訳
・移管元行政機関等による利用件数
・手数料収入その他の収入の実績
・利用請求されたもののうち、利用制限が行われたものの件数
・利用制限事由の適用の内訳
・審査の所要日数別内訳(即日、30日以内、60日以内、それ以上)
・異議申立件数、処理件数
・異議申立てから公文書管理委員会への諮問の期間(即日、30日以内、90日以内、それ以上。90日を超えた場合にはその理由も併せて報告)
・異議申立の結果及び館における反映状況
・答申を受けてから決定までの期間(30日以内、60日以内、それ以上。60日を超えた場合はその理由も併せて報告)
・訴訟件数、処理件数
・C-14に定める展示会の開催等の計画及び実績
・見学者受入総数
・外部貸出しの実績
・レファレンスのための体制
・廃棄冊数
・実施規程各種


非常に詳細である。審査期日についての報告などが入っているのは重要。
なお、公文書管理法第26条第2項にはこの「概要」を公表すると書いてあるので、これについてもきちんと解説の中に書き込んでおくべきだろう。


F-2 利用等規則の備付等
館は、本規則について、閲覧室に常時備え付けるほか、インターネットの利用等により公表するものとする。


もちろんこれも重要。
さすがに利用規則については、これまで書陵部も外交史料館も公表しているので、問題はないと思う。


以上で解説は終わりです。

全体を通して気になることとしては、8月まで行われていた「行政透明化検討チーム」での情報公開法改正の動きとの連動性についてです。
今回のガイドラインは、「現在の」情報公開法を参考にして書かれた文章が数多くあります(開示までの期日、開示期日が守られなかった際の「みなし規定」など)。
これらは、情報公開法改正がなった際にはどうするつもりなのか。そのあたりは、きちんと委員会の場ではっきりさせておいた方が良い気がします。

このガイドラインに則って、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の規則が作られることになります。
また、日銀アーカイブなどの関係施設も、実質的にはこのガイドラインを参照して規則を作ることになると思います。

自分の研究に関係のある研究者の方、アーカイブズ関係の方など、是非ともこのガイドラインに興味を持ってくれることを期待しています。そして、気づいた点をパブリックコメントとして送っていただければと思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html

相変わらずの長さですが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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