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民主党「閣僚の指示すべて文書化します」報道について [2009年公文書管理法問題]

本日の産経新聞の記事。引用します。

「閣僚の指示すべて文書化します」民主党方針 公文書管理法先取り
2009.8.2 01:00 産経新聞

 民主党が、平成23年施行の公文書管理法を先取りし、閣僚や副大臣らの政策判断や指示などを原則として全面文書化し、公開する方針を固めたことが1日、分かった。政策立案過程を透明化することで、年金記録紛失や薬害肝炎などで問題視された行政の責任逃れを防ぐ狙いがある。外交・安全保障上の国家機密などは対象外とする方針だが、公開・非公開の基準作りは難しい。例外を多く認めれば、「全面公開」の趣旨が形骸(けいがい)化し、事務作業ばかりが煩雑化する恐れもある。

 複数の民主党筋によると、民主党政権になれば、閣僚や副大臣ら政治任用の特別職と各省庁幹部が政策協議の詳細をすべて文書化。閣僚らの指示や省庁幹部の報告なども文書に残す方針だという。

 現行では閣議決定など最終決定事項しか文書化されないが、途中経過を文書化することにより、政策ミスや不祥事が起きた場合に責任の所在を明確化できる。加えて協議の経過を記録すれば、反対意見や採用されなかった提案も付記されるため、最終決定段階でより慎重な判断が可能となる。政官癒着を防ぎ、「口利き」や「天の声」などを排除する効果も期待できる。

 民主党は、党内協議についても文書化と情報公開も検討している。

 「全面文書化」構想は、先の国会で成立した公文書管理法の与野党修正協議を通じて浮上した。

 民主党は政府案に対し、「国民の知る権利」の明記などの修正を要求。最終的に「行政機関における経緯も含めた意思決定過程や行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡(あと)付け、または検証できるよう、文書を作成する」との一節が盛り込まれた。

 公文書管理法の施行は23年4月だが、民主党はこれを先行する形で文書化を進め、公文書化の対象や範囲、開示時期などのルールを策定していく方針だ。

 ただ、政府の政策・情報には、外交・安全保障、防衛など機密事項が少なくない。民主党はこれら機密事項に加え、人事や調査研究にかかわり、公にすることで不利益や支障を来す恐れのある情報は開示対象から除外する方針だが、公開・非公開の線引きは困難だ。

 また、文書化・公開を避けるため、非公式協議が増える恐れもある。各省庁は文書化や文書管理などにより事務作業が増大し、「行政のスリム化」と矛盾が生じる可能性もある。

 民主党はマニフェスト(政権公約)で、行政のムダをなくすため、「行政刷新会議(仮称)」を設置し、政府のすべての政策・支出を検証することを約束した。国会議員約100人を政府内に配置なども明記し、政治主導の政策立案・決定もうたっている。
(引用終)

産経の論調は「どうせできねえだろうよ」みたいな悪意を感じなくもないが、この内容自体は非常に重要なことである。

政策決定過程の可視化ということは、まさに公文書管理法のカギとなる重要な点であった。
それを民主党は本気でやろうとしている。

しかも、党内協議についても情報公開すると言っている。
政党は公的機関ではないので、どのような内部決定がなされているのかはブラックボックスで良くわかっていない。
出席者が記者に「洩らす」という形で内容が伝わっており、ある種、情報操作にも使われているのが現状だ。

よく、多くの人は、「所詮、自民党も民主党も同じ保守だ」という言い方をするが、こういう所を見ていても、やはり全く違う政党なのだなと改めて思う。

マニフェストを見てよくわかったのだが、自民党はあくまでも「自分たちに任せろ」と主張している。国民への「情報公開」という文字は一言たりとも入っていない。
それに対し民主党は、あくまでも「情報公開」をしようとする。「情報公開」とは、国民を信頼し、国民を政策作成過程に巻き込むための手段なのだ。
つまり、一緒に政治を作ろうという呼びかけなのだ。

もちろん、どこまでその理想が貫徹するかはわからない。政権を取ったら豹変する可能性もあるだろう。
だが、少なくとも今の民主党は「政治家や官僚任せにしない政治」を目指そうとしているのではないのだろうか。
つまり、この両党では「民主主義のやり方」が全く異なっているのだ。

また、この問題は、立法府の公文書管理と大きな関わりがあると考える。
以前私が書いたが、国会の公文書は今回の公文書管理法の枠外であり、改めてどうするか考えなければならない。
だが、今回の民主党の方針は、政府に入る100人の議員が関わった政策の公文書をきちんと作成すると主張していることになる。
つまり、これは立法府の公文書管理法へのたたき台としても、重要な意味を持つと思うのだ。

是非とも、かけ声だけに終わらずに、実行してもらいたいと思う。


最後に、産経の最も悪意のある文章には反論しておきたい。

「各省庁は文書化や文書管理などにより事務作業が増大し、「行政のスリム化」と矛盾が生じる可能性もある。」

情報公開や公文書管理は「ムダな」行為なのか?
そうやって管理に時間を掛けずにおろそかにしてきた結果として、今の年金問題などが起きていることを理解しているのか?
「スリム化」という言葉に踊らされていて、本質的な問題が見えてないのではないか?

むしろ文書をきちんと残して、以後の政策判断の材料となるように整理し管理すること、情報を公開して説明責任を果たすこと、これこそが重要なのだ。
「スリム化」すれば行政は良くなるのか?違うだろう。
「良くするためにどう行政を変えなければならないのか」が問われなければならないのではないのか?

私はこのブログで以前から主張しているが、文書管理担当の職員は「増員」する必要がある。
そうしなければ、公文書管理法は張り子の虎にしかならない。
むしろ「スリムにしてはいけない」部署であるのだ。

こういう記事を見ると、公文書管理法の重要性はまだまだ理解されていないと痛感する。
公文書管理問題についての民主党への期待を高めるという意味では、この記事は非常に嬉しいものだが、もうちょっと書き方がなんとかならんかったのかと思う。
まあ、おそらく反民主党の産経にそれを望むのは難しいということなのかもしれんが・・・。
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