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【連載】公文書管理法成立後の課題―第2回 公文書管理法の実効性 [【連載】公文書管理法成立後の課題]

公文書等に関する法律(公文書管理法)が成立、公布されました。
そこで、全8回にわたって、成立後の課題について書いてみたいと思います。

第1回 政令事項
第2回 公文書管理法の実効性←今回
第3回 国会の公文書
第4回 国立公文書館等の規則の共通化(上)
第5回 国立公文書館等の規則の共通化(下)
第6回 国立大学法人の文書移管
第7回 地方公文書館設立運動の推進
第8回 歴史学的素養と行政法的素養

第2回 公文書管理法の実効性

公文書管理法案が国会に提出されてから、「公文書」というキーワードでよくブログサーチをかけていた。
大体は最近話題の第三種郵便の「公文書偽造」の話がひっかかってくるのだが、その中で公文書管理について、系統だって述べている方のブログを見つけた。

「お役所最適化計画」
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann

管理人のhirajimukannさんは、地方の出先機関の公務員とのこと。その立場から、役所における文書管理の問題について、以前より記載されていた。そしてこの公文書管理法案についてもいくつかの記事を書かれている。
その中で、最もよく指摘をされていたのは「公文書管理法の実効性」の問題である。

特に次の3本の記事は、是非ともリンク先で読んできていただきたい。
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57786922.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57811722.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57910523.html

特に私自身が注目したいのは、公文書管理法を実効性のあるものにしようとした場合には、文書の作成方法の共通化を行う必要があり、そのためには仕事そのものの見直しをしなければならないという点である。
つまり、小手先に文書の作り方を変えるとか、意識を変えるとかいうレベルでは済まない話ではないかとの指摘なのである。

私自身は全く行政職の経験がないので確たることは言えないが、今回の公文書管理制度改革は、公務員にとっても仕事をやりやすくなるような形での改革が目指されていたことは確かである。
そして、今回の法制化は良い機会なのだと思う。是非とも、現場レベルからの仕事の見直しをきちんと行ってほしいと思う。

ただ、全省庁共通ルールの策定はおそらく困難を極めるだろう。それは、各省庁の分担管理原則(縦割り組織)にその原因があるからである。
だが、hirajimukannさんが「こういうテーマに本気で取り組めば抜本的な行革が可能となる。文書管理の改善に本気で取り組むことは必然的に役所の事務そのものの改善に取り組むこととなる。単なる職員や役所の数を減らす数あわせではなく、こういう地味なテーマに本気で取り組むことが真の行革だと思う。」とおっしゃっているのは、全く同感である。

そのためには、公務員が無理をしなくても文書が残るようなシステムの導入も必要だろうし、文書管理を専門に行えるような人材の配置(増員)も考えなくてはならないだろう。
修正によって「研修」という条文が入ったことは予算獲得の上でも良かったと思うが、研修だけではすまない改革が必要だということは、もっと理解されてよいのではないかと思う。

システム面の話は、さすがに私では手に負えない。
ただ、最近知り合った駿河台大学の廣田傳一郎さんが、この面については色々と活動されていることを知った。
廣田さんはNPO法人行政文書管理改善機構(ADMiC)の理事長であり、さまざまな自治体での文書管理システムの改善に取り組まれてきた。
この廣田さんのおっしゃられている「行政ナレッジファイリング」(AKF)というシステムが、どれほど歴史的に重要な文書を残せるのかは私にはわからないが、システム面で改善される余地は色々とあることはよくわかる。

廣田さんがおっしゃることで、私がもっとも納得したのは、文書の検索システムを構築するために、文書を全ての職員で共有化し、わかりやすいファイル名を付けたりすることが重要であり、担当者がいなくても30秒以内で検索可能であるようにならなければならないという点である。

この関連で、ADMiCのウェブサイトで公開中の下記の連載(3回)の論考は非常にわかりやったので、興味のある方は是非とも読んでいただきたい。
http://www.npo-bunshokanri.jp/parts/article_7.pdf
http://www.npo-bunshokanri.jp/parts/article_9.pdf
http://www.npo-bunshokanri.jp/parts/article_10.pdf

また、日本経済新聞の6月23日の朝刊29面に、廣田さんが一文書いておられるのでそちらも御参考に。

さて、最後に、やはり「人員」の問題は書いておきたい。
現在の内閣府公文書管理課の職員は合計で10名。それに国立公文書館が42名。
昨年国立公文書館は非常勤を11名雇ったが、それを足してもそれほど多くない。

hirajimukannさんも書いているが、一年間に作られる文書の数は100万は超える。
その中で、どこまで廃棄文書の中から、重要な文書を救い出せるのだろうか。

レコードスケジュールを作ることになる今後作成される文書については、廃棄するかを判断するのが楽になる可能性が高い。
ただ、それ以前に作られた膨大な文書にはレコードスケジュールが存在しない。それらの移管・廃棄作業をどうするのか。これはこの人数ではどうしようもなくなるのは明白である。

だからこそ、やはり公文書管理庁の設置は絶対に必要である。(最低100人規模)
公文書管理庁は、今回作られた公文書管理法を改正しなくても設置可能である。
以前にも書いたが、3条委員会として位置づけるために公文書管理庁設置法を作り、公文書管理課の機能を移せばよいだけである。

また、上記したが、各省庁でも文書管理を担当する職員の確保が必要である。これは、衆参両議院の附帯決議でもあるように「究極の行政改革」であるのだから、是非とも「定員削減」とは別枠で、きちんと人員を確保して欲しい。
もし政権を取ったならば民主党には検討していただきたい点である。

以上で第2回は終わりです。→第3回
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コメント 2

hirajimukann

 このように大きく取り上げていただき恐縮です。
 文書管理を通じた行革については、今年の骨太方針で打ち出された「質の行政改革」のなかで「業務工程改革」に取り組むこととされたことから、この取り組みが上手く文書管理の問題と結び付けられれば、本当の行革が進むのではないかなどと、あまり期待していないながらも考えています。
 最後に、おかげさまで当ブログのアクセスも通常の5割増。ありがとうございます。
by hirajimukann (2009-06-29 23:22) 

h-sebata

> hirajimukannさん

コメントありがとうございました。
なかなか現場の声というものを知ることができないので、hirajimukannさんのブログは重宝させていただいております。
少しでもアクセス数に貢献できたのであれば幸いです。

hirajimukannさんが取り上げてくださったのはこれですね。

「骨太の方針09」のP19
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizai/kakugi/090623kettei.pdf
「質の行政改革」に関する取組方針
http://www.gyoukaku.go.jp/kyougikai/honbun.pdf

私も公文書管理法にうまく結びつけてくれれば良いなと思います。
ただ、所管が総務省行政管理局ということで、内閣府と変な縄張り争いにならなければよいなと思いますが・・・。

これからもよろしくお願いいたします。
by h-sebata (2009-06-30 00:11) 

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