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【連載】公文書管理法修正案の解説(第1回)第1条~第6条まで [【連載】公文書管理法案を読む]

6月11日に公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)が衆議院を通過しました。
法案についての解説はすでに以前の連載(全八回+補遺三回)でやっておりますが、今回は修正された部分の解説をしたいと思います。
2回かけて修正案の解説、あと1回で附帯決議の内容について解説します。

修正案の比較表→こちら

第1回 第1条~第6条まで

まずは第1条(目的)から。赤字が加わった部分。

第一条
 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得る物ものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。


この第一条の変化は、「国民」が主語の文面が入ったということである。
以前の法文は、行政側の説明責任が中心に書かれており、国民の側がそれを利用するという言葉がなかった。
今回の修正で、事実上の国民の「知る権利」にあたる部分が入ったことになる。

この「知る権利」という言葉自体は、官僚達の抵抗が激しかったために入らなかったが、言葉の代わりに「実」が入ったということになるだろう。
公文書市民ネットで一緒に活動していたまさのあつこさんによれば、行政法で「国民」が主語である目的規定が入ったのは初めてではないかと述べているぐらい、画期的なことである。


次に第4条の文書の作成。
まず前提として、「第2章 行政文書の管理」として第4条から10条まで全てまとめられていたのが、節で「第一節 文書の作成」(第4条)と「第二節 行政文書の整理等」(第5条から10条)に分けられた。
第4条だけを別にわけたことで、文書の「作成」の部分が重要だと明示されることになったのは大きいと思う。

それで、第4条。

第四条
 行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 一 法令の制定又は改廃及びその経緯
 二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
 四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
 五 職員の人事に関する事項


ここは、今回の修正の中で最も良くなった点。よくここまで頑張ったと評価したいところ。内閣委での枝野幸男議員の発言などを見ると、ここが一番揉めたところなようだ。

以前の案に対する批判として、作成しなければならない文書が「意思決定」のみとしか読めず、この文章で「意思決定過程」が残ることは絶対にあり得ないということを書いた。→こちら
今回の修正は、それをかなりの部分で直すことができた。
「経緯」や「過程」といった言葉がしっかりと文面に入ったこと、「合理的に跡付け」「検証」できるといった、国民の利用を視野に入れた部分具体的な内容についての列記。そして、列記した物だけではないということを示すために「次に掲げる事項その他の事項」という言葉が入ったこと。
これらは、全て非常に重要な点である。

なお、これだけ細かくなったがゆえに、「政令で定めるところにより」という文面が落ち、これ以上の細かい点は公文書管理委員会のチェック無しで決められることになった。
だが、さすがにここまできちんと「経緯」とか「過程」とか書かれていれば、それを作成しないでよいという政令が作られることはないだろう。
法律としては十分な物が書き込めたと思う。あとは実効性をどう担保するかが課題となるだろう。


次に第5条(整理)の第5項。

5 行政機関の長は、行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない。

ここは「あらかじめ」→「できる限り早い時期」に変わった。
これも細かい変化だが、レコードスケジュールを決めるのは保存期間が切れる直前ではないよということを明示したということで、政令での紛れを減らしたということだと思う。


次に第6条(保存)。第1項は変わらず、第2項が増えたのですが、とりあえず第1項から載せておきます。

第六条
 行政機関の長は、行政文書ファイル等について、当該行政文書ファイル等の保存期間の満了する日までの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。
2 前項の場合において、行政機関の長は、当該行政文書ファイル等の集中管理の推進に努めなければならない。


第1項は非常にわかりにくい。政府側は「必要な場所」=中間書庫という解釈だと説明をしていた。しかし、そこだけではいまいちわかりにくかった。
そこで、第2項の「集中管理の推進」というのを入れることで、中間書庫の設置をきちんと入れなければという方向性を見せたということになるだろう。
ただ、中央での集中管理というよりは、各省庁個別に中間書庫が置かれるという方向での話になりそうである(衆議院附帯決議の三。第3回で説明)。
また、「中間書庫」という言葉自体は入らなかったこともあり、少々不完全燃焼な条文になってしまったように思う。

今回はここまで。次回は第7条から最後までです。
第2回→こちら
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