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公文書管理法案、修正案に与野党合意 [2009年公文書管理法問題]

今日の各新聞の朝刊に、自民公明両党と民主党の間で行われていた公文書管理法の修正協議が終了したことが報じられました。とりあえず一番詳しかった産経の引用。

公文書管理法案成立へ 「廃棄には首相同意」3党合意
6月5日7時59分配信 産経新聞

 衆院内閣委員会は4日の理事懇談会で、自民、公明、民主の3党が公文書の管理・保管のあり方を決める公文書管理法案について、文書を廃棄するには首相の同意がいることなどの修正に合意した。社民、共産両党の対応をみた上で10日にも採決するが、3党が修正に合意したことで、法案は今国会での成立が確実になった。

 公文書は平成11年の情報公開法に基づき、作成、分類、保存期間を府省ごとの規則で定めてきた。だが、実態は各部局で管理方法が異なり、公開請求した資料が見つからないことも多かった。保存期間が終了した文書は、首相と行政機関の長が「歴史的資料」として合意した場合は国立公文書館に移管されるはずだが、移管率は1%未満で、約90%が廃棄されていた。

 加えて、年金記録問題や薬害C型肝炎の関連資料を倉庫に放置していたなどのずさんな管理実態が明らかになったことを受け、福田康夫首相(当時)が平成20年2月末、有識者会議を設置。政府は有識者会議の報告書を基に3月、法案を国会に提出していた。

 自民、民主両党の実務者による修正案では「政令で定める」としていた作成・保存すべき文書の定義を意思決定過程や事業の検証ができるよう明示的に列挙。▽文書の廃棄に首相の同意が必要▽首相が必要性を認めた文書は行政機関の長に保存を要請▽国会や裁判所の文書管理方法についても検討▽施行5年後の法案見直し-などが追加された。

 これにより、文書の作成から廃棄、保存まで一貫したルールができるほか、行政機関の判断で文書を廃棄できなくなる。

 一方、民主党が求めた公文書の一元管理を担う「公文書管理庁」や、文書の散逸を防ぐために保存期間終了前に文書を集約する「中間書庫」の設置は、今後の検討課題として残された。
(引用終)

また、朝日新聞に載っていた「公文書管理法案、修正協議での主な追加点」によれば、

・文書の廃棄
 首相の同意を義務化。保存の必要があると認める場合は首相が廃棄を差し止める
・文書作成の対象を明記
 法令の制定、改廃、その経緯▽閣議、省議の決定、了解、その経緯▽職員の人事に関する事項など
・法律の目的
 公文書は民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源で、国民が主体的に利用しうるもの
・研修
 省庁、独立行政法人は公文書管理を適正に行うため職員に必要な研修を行う
・付則
 法施行後5年をめどに公文書の範囲などを検討。国会、裁判所の文書のあり方も検討

とある。

修正案の要綱は某所からもらっているので、ここに書かれていることは間違いないと思う。(本来なら修正案要綱を全部載せてしまいたいのだが、「案」と書かれているものをもらっているので、確定したものとは違う可能性があるので載せません。)

今回の修正によってかなり前進したことがある。

・第1条の目的についてだが、、「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであること」と明記されることになった。
「共有財産」という言葉が内閣委では問題になっていたことはすでに記載したが、結局「財産」という言葉は諦めて、実質的な内実を取ったということだと思われる。ここはこれで十分ではないかと思う。

・作成すべき文書の内容については、要項を見ると朝日の記事にあるような点を法案にきちんと書き込むことになるようである。
もちろん、「これ以外の物は作らなくて良い」と思われたら困るが、重要な文書はそれなりに網羅される可能性が高まってきた。あとは運用面でどう改善していくかがカギになると思われる。

廃棄については、首相の同意が必要となる文面が加わることになった。これで、各省庁が勝手に廃棄することができなくなるので、これは大きい修正だ。
もちろん内閣府や国立公文書館がどこまでチェックできるだけの体制を整えられるかという点も課題にはなるが、少なくとも恣意的な廃棄はこれでかなり無くせることは間違いないと思う。
また、記事にはなっていないが、行政文書は保存満了前のできる限り早い時期に満了後の措置(移管・廃棄)を定めなければならないとの一文も入るようであり、管理体制は間違いなく改善されるであろう。

・研修の充実化も法文に入れられることになった。
これも予算を付けるためにもあったほうが良い条文だったので、入って良かったと思う。

・記事になっていないが、統合・廃止される機関の文書保存についても条文が加わるようである。
過去にさかのぼっては無理だが(国鉄(JR)や電電公社(NTT)など)、今後への対策は取られることになりそうだ。郵政民営化が今後行われる時に、公的機関時代の「公文書」をどう残させるかがこの条文との関係で重要になるかもしれない。

・法施行5年後に法律の見直しを行う事項が入った。これも必要なのでよかった。また、国会や裁判所の文書についても、検討を行うことが附則に入るようである。5年間の猶予の間に、きちんと国会に調査機関を置いて、しっかりと検討してほしいと思う。

さて、この修正案を見ると、たぶんここが限界点なんだろうなと思う。
少なくとも、私が以前から主張している「行政文書の定義の拡大」と「移管廃棄権限を各行政機関に持たせてはならない」という2点については、現状では精一杯の前進がはかられたと思う。
他の部分もかなり良い方向に修正がなされていると感じる。まず及第点はあげられるのではないだろうか。

惜しむらくは、公文書管理庁の設置が見送られたことである。執行機関が弱いということは必ず今後問題になってくるだろう。
あとは中間書庫の問題だが、中央に集中的な中間書庫が置かれるということについては、産経の記事にあるように今後の課題となりそうだが、修正案の要綱には「集中管理の推進」という用語が第6条に加わるようなので、全く進まないということでもないようだ。

さて、今後であるが、付帯決議で何を付けられるかという問題に移ってくるだろう。
これは国会での議論が重要になってくると思われるので、そちらもまた追っていきたい。

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