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【連載】公文書管理法案を読む(第4回)―問題点(2) 延長・移管・廃棄の権限 [【連載】公文書管理法案を読む]

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公文書管理法案を読むの第4回です。
公文書管理法案の問題点についての続きです。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第4回 問題点(2) 延長・移管・廃棄の権限

今回は、公文書管理法案の第5条第4項~5項と第8条第1項の問題点について取り上げます。これらの条文は、行政文書の整理(保管、期限延長、移管、廃棄)に関わる部分です。
まずは条文を引用します。(第5条は前がないとわからないと思うので、全部載せておきます。)

(整理)
第五条 行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。

2 行政機関の長は、能率的な事務又は事業の処理及び行政文書の適切な保存に資するよう、単独で管理することが適当であると認める行政文書を除き、適時に、相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間を同じくすることが適当であるものに限る。)を一の集合物(以下「行政文書ファイル」という。)にまとめなければならない。

3 前項の場合において、行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書ファイルについて分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。

4 行政機関の長は、第一項及び前項の規定により設定した保存期間及び保存期間の満了する日を、政令で定めるところにより、延長することができる

5 行政機関の長は、行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前にあらかじめ、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない。

(移管又は廃棄)
第八条 行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、第五条第五項の規定による定めに基づき、国立公文書館等に移管し、又は廃棄しなければならない。


さて、今回引用した部分は、はっきり言って今回の法案の最大の問題点と言っても過言ではない。
というか、有識者会議の議論、最終報告書をここまでコケにした法文も無いだろうという点で、怒りを通り越して呆れている。

今回の公文書管理法の作成で大きな問題となっていた一つに、「国立公文書館への公文書の移管が進まない」「公文書を勝手に各省庁が廃棄している」「移管したくないが故に勝手に保存年限を延長している」ということが挙げられていた。
そしてその原因は、「移管・廃棄・延長の権限を各省庁が握っているために起こっている」ことは明白であった。

この問題の解決のために、公文書管理担当機関をどのような形態にするか、国立公文書館の権限をどう拡大するかということが有識者会議の中でずっと議論されてきた。
まさしく、この問題は有識者会議の議論の核となってきた部分であった。
そして、管理担当機関のあり方として、事務を内閣府に集中させ、国立公文書館を「特別な法人」として権限を強化することが最終報告書に盛り込まれた。

有識者会議の最終報告書には、「延長・移管・廃棄」の部分に次のような文言がある。(P9~10)

〔延長に関しての具体的方策〕
○ 保存期間の延長や延長期間の適正性を確保するため、公文書管理担当機関が定める基準に基づき、各府省の文書管理担当課がチェックする仕組みとする。
○ 各府省において基準に基づき適切な判断が行われているかについて、公文書管理担当機関がチェックする仕組みとする。
※ 基準において、延長期間の上限を設けることも考えられる。


〔移管・廃棄に関しての具体的方策〕
○ 移管・廃棄の是非について、より適切かつ効率的に判断できるよう、移管・廃棄基準の具体化・明確化を図り、移管基準に適合するものについては、原則移管とするとともに、公文書管理担当機関の判断を優先する仕組みを確立する。
○ 具体的には、①各府省において、ファイル管理簿にファイルを登録する際、保存期間満了時の移管・廃棄の扱いについて、公文書管理担当機関が定める統一的基準に基づき一次的な評価・選別を行う、②各府省の一次的な評価・選別の結果について、公文書管理担当機関がチェックする、③各府省及び公文書管理担当機関の評価・選別の判断について、文書管理に関する専門家(レコードマネージャー、アーキビスト等)が適切にサポートする仕組みとする。
※ このような仕組みを採る場合、ファイル登録時に判断できないものについては、その後の適切な段階(例:中間書庫(集中書庫)への引継ぎ時やその後の保存時)において判断することも可能とすべき。


これを見た後に法案を見てみると、その理念の違いがよくわかる。

有識者会議の最終報告では、主語のほとんどに「公文書管理担当機関」が入っている。担当機関がチェックする、基準を作る、ということが明確に描かれている。
特に、移管・廃棄については「原則移管とするとともに、公文書管理担当機関の判断を優先する」と、どう読んでも公文書管理担当機関の判断に基づいて移管・廃棄がなされるべきであるということが明確になっている。

これに対し、公文書管理法案は、主語が全て「行政機関の長」、つまり自分の省庁の大臣となっている。
そこに公文書管理担当機関の影は形すら見えない。
つまり、延長・移管・廃棄の権限は全て各省庁が握ったままで、公文書管理担当機関にそこに踏み込む権限は一切無いのである。

この法文で、これまで問題になってきた移管・廃棄の問題は解決されるだろうか。

100%ありえない。

むしろ、延長、廃棄、移管は完全に各省庁の権限であることに法的根拠を与えてしまう。
これによって、今まで問題になってきた文書隠しや廃棄が多発することは明白だ。

さらに、この問題に関連して、有識者会議の最終報告に載っていて、法案から抜け落ちたものがある。
それは、国立公文書館の権限の強化の問題である。

有識者会議の最終報告では、国立公文書館の権限を強めるために、現在の独立行政法人のままではあるけれども「特別の法人」とすること、公文書管理担当大臣を設けること、そして国立公文書館長をアメリカのNARA(国立公文書記録管理局)長官の地位(大統領による指名)を参考にしつつ、より格の高い存在として位置づけることも考えられる、との記載があった。(P20-22)

しかし今回の公文書管理法案の中には、国立公文書館の機能についての記載は文書の移管・公開・保存以外のことはほとんど書かれていない。
また、公文書管理法案には国立公文書館法の改正案がセットになっているが、これを読んでも、正直言って、「特別の法人」となったようには全く思えないのだ。。→こちら参照

つまり、これは明らかに「意図的に」権限の強化を見送られているのである。
延長・移管・廃棄に公文書管理担当機関が絡めなくなっているということは、官僚側はその権限を手放さないことを宣言したと同然である。
そのために、国立公文書館の権限の強化もあいまいに処理されているのである。

なんでこんなことになったのだろうか。
もちろん、官僚達がただ権限を手放したくなかったということもあるだろう。
でも、それ以上に、「現状のシステムの延長上として公文書管理法を捉えようとした結果」がこうなったのではないかと思うのだ。

つまり、官僚達は、今現在のやり方が変わることへの不安から、自分たちにとって使いやすい公文書管理法を目指した。
そして、国立公文書館の体制は貧弱であり、今は「移管廃棄を指揮するのは不可能」という「現状認識」から、こういった「実効性のある」(もちろん皮肉)法案を出したということなのではないのか。

でも、そもそもこの公文書管理法の原点は、官僚の仕事そのもののあり方を変えようという意図があったはずである。
それを忘れて作られた法案がザル法になるのは当然である。

しかし、官僚の抵抗がここまでとは私にも予想がつかなかった。
たぶん、非公開部分の拡大などには色々と注文が付くだろうというのは予想していたが、根本的なところをひっくり返してくるとは思わなかった。

よって、私は、公文書管理法案の第5条及び第8条の条文は、公文書管理担当機関の移管・廃棄に関する「優先的な」権限をきちんと書き加えた上で、原則的に保存期限が切れた文書は移管することを明記するべきだと考える。

以上で第4回は終わり。次回は文書の非公開問題についてです。→第5回


追記(3/9 16:00)
なお、公文書管理法第9条に、行政機関の長は文書管理について内閣総理大臣に報告義務を負っていること、また内閣総理大臣は、問題があるときには各省庁に資料の提出を求め、実地調査が行えること、また第10条に管理規則を決める場合には総理大臣の許可が必要という2つの条文から、各省庁が恣意的に移管や廃棄を行えないという解釈を導いている方もおられるかもしれない。

だが、私はそれこそ官僚の思うつぼだと思う。
あくまでも「報告」というのは、「事後」である。つまり、「廃棄してしまった後」にいくら調査をしても、捨てたものは返ってこないのだ。
もし、この2つの条文だけで制度を有効にしたいのであれば、誤って廃棄した際には罪に問えるという条文ぐらいがないと抑止力にはならないと思う。

追記2
上記の移管廃棄の問題については修正された。詳しくは下記の記事へ。
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2009-06-13
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