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【連載】公文書管理法案を読む(第2回)―公文書管理法案の内容 [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回はこちら

公文書管理法案を読むの第2回です。
今回は公文書管理法案の内容を紹介していきたいと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

第2回 公文書管理法案の内容
・公文書管理法案の簡単な説明

第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 行政文書の管理(第四条―第十条)
第三章 法人文書の管理(第十一条―第十三条)
第四章 歴史公文書等の保存、利用等(第十四条―第二十七条)
第五章 公文書管理委員会(第二十八条―第三十条)
第六章 雑則(第三十一条・第三十二条)
附則

公文書管理法案は上記のような6章32条で構成されている。箇条書きで説明を付けます。
なお、青字にした部分は私から見て評価できる点。赤字にした所は問題点です。青字の所は今回解説します。赤字の部分は次回以降解説します。
なお、逐条解釈については、最終回の時に、表にして配布する予定です。

第一章は総論部分。
・法案の理念(1条)
言葉の定義(2条)
・公文書管理についてはこの法律が基本法であること(3条)

第二章では、行政機関における公文書管理について書いてある。
・意思決定文書の作成義務(4条)
整理管理規則(5条)
・保存義務(6条)
・ファイル管理簿への記載義務(7条)
移管廃棄規則(8条)
・管理状況の報告義務(9条)
・管理規則作成(10条)

第三章は、独立行政法人における公文書管理について。第二章の独法バージョンなので省略。

第四章は、国立公文書館等(「等」には宮内庁書陵部、外務省外交史料館が入っていると思われる)における文書管理のあり方について。
「国の機関(行政機関を除く)」(国会や裁判所)からの国立公文書館への文書移管を可能とする条文(14条)
・文書保存の方法(15条)
不開示にできる場合の規程(16条)
・情報対象の本人が請求してきたときの対応(17条)
請求された文書に自分に関連する情報が記載されている第三者からの公開への反論権(18条)
・文書の利用方法(19条)
・資料複写料(20条)
異議申し立て(21条)
・異議申し立て手続き(22条)
・資料の利用促進(23条)
・移管元機関からの利用に不開示無し(24条)
・資料の廃棄手続き(25条)
・管理状況の報告義務(26条)
・利用規則作成(27条)

第五章は、内閣府に作られる公文書管理委員会について。
・委員会の定義(28条)
・委員会へ諮問しなければならないこと(29条)
・委員会からの各行政機関・公文書館への資料等請求権(30条)

第六章は、その他。
・首相による行政機関への改善勧告権(31条)
地方公共団体への文書管理施策の要請(32条)

附則は、関係法の改正や施行日など。情報公開法や国立公文書館法の改正が書かれている。


・公文書管理法の理念の説明(1条)

まず、理念の話だけは先に。1条の法文は以下の通り。第1回の連載も参照。

この法律は、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

私は基本的にはこれで良いのかなと思う。「現在及び将来の国民に説明する責務」も入ったので。
ただ、以前にブログに記載した、私も呼びかけ人に入っている、「市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク」の設立趣意書にあるように、「公文書が公共財であり、市民の共有財産である」という記述が欠けている。
有識者会議の最終報告書でも公文書は「国民の貴重な共有財産」との記載がある(P1)ので、官僚が法案作成時に意図的に落とした可能性もある。

大きくはいじる必要がないとは思うが、付け足すべき条項がまだあるような感じがする。またここについては追記するかもしれません。


・青字の評価点について

青字で書いた部分は特に評価できる点です。簡単に説明します。

14条の国会や裁判所からの文書移管に道を開いたことについては重要。
これまで、国会や裁判所の文書は例外的なものを除いては全く移管されていない。しかも、あまり公開されてすらいない。情報公開法の対象外でもある。
しかし、このいずれも歴史的には重要な機関である。政策決定に関わってきた国会や、重要な判決をいくつも出してきた裁判所の資料は、歴史的価値も非常に高い。
この条文を入れることで、将来的な移管の可能性を作ったのは良いと思う。

次に21条の異議申し立てについて。
もし不開示部分があったときに、公文書管理委員会に対して異議申し立てができる。
これまでは、国立公文書館では館長に対してしか申し立てができなかった。また外交史料館や書陵部は、全く不服申し立てができなかった。
この法律で、第三者である委員会に対して異議申し立てできるのは大きい。特に今まで無かった外交史料館と書陵部は大きい。私にとっては特に。

最後に32条の地方への波及について。
都道府県レベルでも公文書館があるのは30にとどまる。残りの17県には存在していない。
この条文が入ることで、公文書管理の進展と、公文書館の設立が各地で進む可能性が高くなる。
ただ、できることならば、公文書館法にある附則「2 当分の間、地方公共団体が設置する公文書館には、第四条第二項の専門職員を置かないことができる。」の廃止もセットで行ってほしい。

この附則はアーカイブズ関係者から悪評の高い条文である。
この「専門職員」というのはアーキビストのことである。
専門職員がいなければ、文書の選別や保存などにも大きな影響を及ぼす。
専門職員の配置義務の記載された公文書館法第四条の2「公文書館には、館長、歴史資料として重要な公文書等についての調査研究を行う専門職員その他必要な職員を置くものとする。」を全館の義務にさせなければならないと思う。

ここで第2回は終わり。次回は赤字で記載した問題点のうち、第2条の公文書の定義の問題について書いてみたいと思います。→第3回
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