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【連載】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の「最終報告」を読む(上) [【連載】公文書有識者会議]

第1回はこちら
「中間報告」まとめ前編はこちら/後編はこちら

11月4日に「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」が、小渕優子公文書管理担当相に「最終報告」を提出した。速報
そして小渕担当相から麻生首相にも報告がなされた。
朝日新聞の4日の夕刊によると、「報告を受けた首相は「公文書は開かれた民主主義のインフラ。保存体制の整備は必要だ」と述べ、組織改編を求められた公文書館についても「しかるべき所に場所やら(職員の)人数やら今後検討していきたい」と語った。 」そうである。

そして、次の通常国会には、この報告書に基づいた公文書管理法が提出される予定である。
福田前首相とは異なり、麻生首相のこの問題への関心度は低いと思っているので、小渕担当相には是非とも頑張ってもらいたい。

さて、今回から3回にわたり、この「最終報告」についてコメントをしてみたいと思う。
なお、この連載の順番から言うと、本来なら第12回目の有識者会議(10月16日)の議事録についての解説があるべきなのですが、この会議が最終報告をめぐる議論であったため省略することにしました。

まず2回かけて、「最終報告」が「中間報告」からどのように変化したのかについて解説してみたい。そして連載最終回の3回目で、公文書管理法が実際に法案として提出された際にどこに注目すべきかを、現在の私の視点から書き残しておきたい。
なお、「最終報告」の多くの部分は「中間報告」と同文であるので、変わっていない部分については中間報告について書いた記事を参照してほしい(この問題についてあまり詳しく知らない方は、まず「中間報告」の解説からみてほしい)。
「中間報告」まとめ前編はこちら/後編はこちら


それでは前置きはここらにして本文に入ります。
今回は「中間報告」で曖昧になっていた、「公文書管理担当機関」のあり方をめぐる話について取り上げます。

まず「公文書管理担当機関」についておさらいから。
現在の公文書管理を担当している機関は、内閣府と総務省、そして独立行政法人国立公文書館の3つに分裂している。しかも、横の連携が取れているとも言い難い状況にある。
また、文書の移管先である国立公文書館に権限が全くないため、各省庁が勝手に公文書を捨てたりすることができるようになっている。
この杜撰な公文書の管理体制が、年金問題などの元凶になっていることは記憶に新しい。

今回の改革は、公文書の移管や廃棄だけでなく、文書作成、保存といった根本の所から公文書管理担当機関が監視・介入できるシステムを作り上げるということに主眼がある。
そのためにはどのような組織がよいかということが議論の中心として常に存在していた。

そこで「中間報告」では二つの案を併記することにした。

(共通部分)内閣府に公文書管理事務を集中させ、
①国立公文書館を中心として内閣府に公文書管理機関を設立する
②内閣府に公文書管理事務を担当する部局(公文書管理室など)を設置した上で、国立公文書館は「特別な法人」として現在より権限を強くする。


つまり、国立公文書館を国家機関に戻すか、「特別な法人」として独立した機関とすべきかという争点である。
そして、「最終報告」では②の方を正式に採用することとした。
その理由は以下のようなものである。(「最終報告」P20-21)

1.国家機関であった場合、単年度主義である予算に縛られて、長期的かつ柔軟な活動ができない。
2.国家機関であった場合、人事面で公務員の採用方法や人事異動の縛りがきついため、専門的な職員などを十分に採用できない。
3.司法や立法からの文書移管が行われる場合は、行政府の一機関であるより、独法の方がメリットがある。


私から見ると、「独法化するメリット」というよりは、むしろ「国家機関であるデメリット」から独法が選ばれたというような感じがする。
特に、人員の面については、各省庁が行政改革推進法によって5年間で国家公務員を5%削減するノルマを課されており、人員を増やすためには他の部署を削るしかないというのが現状である(しかも法律で縛っているから、簡単には改正できない)。
また、実際に国立公文書館は、独法化してから公文書専門の担当官を採用することができたということもあるようだし、きちんと予算が配分されるのであれば(←ここ重要!)、独法の方がメリットは大きいだろう。

ただ、委員の高橋滋氏がたびたび会議の中で警告を発していたのだが、国立公文書館が国家機関でないことで各省庁が公文書の移管を渋ることは十分にありうる。そのためにも、公文書管理法の中に国立公文書館の権限を書き込むだけでなく、国立公文書館法自体の改正も必要となるだろう。

また、「中間報告」からすでに書かれていたが、公文書管理担当相の常設化も必要だと思われる。そうしなければ、実際に国立公文書館が法的権限を持っても、実行力を伴わない可能性が高い。
今回の麻生内閣での担当相の扱われ方(私の記事参照)を見ても、法的に常設することを明記させる必要があると思う。

さて、この話に関連して、「中間報告」よりも踏み込んだ書き方がなされた部分がある。
それは、「公文書管理担当機関」が各省庁の文書管理に介入できることを明記した点である。

例えば、「中間報告」で文書の延長について書かれた部分は次のように書かれていた。

○保存期間の延長や延長期間の適正性を確保するため、公文書管理担当機関が基準を策定するとともに、公文書管理担当機関や各府省の文書管理担当課等がチェックする仕組みとする。(P9)

そして、その分担については「要検討」という注が付いていた。
しかし、「最終報告」では次のようになった。

○ 保存期間の延長や延長期間の適正性を確保するため、公文書管理担当機関が定める基準に基づき、各府省の文書管理担当課がチェックする仕組みとする。
○ 各府省において基準に基づき適切な判断が行われているかについて、公文書管理担当機関がチェックする仕組みとする。
(P9)

つまり、「中間報告」ではチェックするのは「公文書管理担当機関や各府省の文書管理担当課等」が行うと書いていたのだが、「最終報告」では「公文書管理担当機関」のみになっているのである。
これと同様に「移管・廃棄」の部分でも同様の書き換えがなされており、「公文書管理担当機関」の権限を大幅に強化する方向に変化したことが伺える。

この点は今回の改革の「肝」と呼べる部分である。
繰り返しになるが、今回の改革は、公文書の移管や廃棄だけでなく、文書作成、保存といった根本の所から公文書管理担当機関が監視・介入できるシステムを作り上げるということに主眼がある。
そして、各省庁に政策について説明責任が果たせる文書を作成させるだけでなく、保存期限が切れた文書を国立公文書館に移管させ、一般に公開させることを意図しているのである。
そのためにも、権限を強める方向に有識者会議がさらに一歩踏み込んだことは評価できる。

長くなったので今回はここまで。(中)に続く。
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