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【連載第11回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

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「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の続きです。
今回は第11回目(9月25日)の議事録を取り上げます。
最終報告の直前なのに、前回は中山恭子氏、そして今回は小渕優子氏と大臣が2回も替わる羽目になってしまった。本当に福田首相は大変な時期に辞めてくれたものだと改めて感じる。

今回の中心議題は、司法・立法の文書移管問題である。
現在、国立公文書館には、最高裁等の司法文書や、衆参両議院の立法文書は一切移管されていない。
有識者会議では、国立公文書館を国家機関に戻すか、特別な法人として位置づけるかについて議論を行ってきたわけだが、司法立法の文書移管を受ける場合に、どちらの方が良いのかということも、今回のヒヤリングの目的でもあった。

さて、まずは司法の方からである。
今回初めて知ったのだが、司法関係文書はおもに3つに分かれる。
①司法行政文書(裁判所の日常の業務で作成される文書)
②裁判文書(民事・家事・少年事件)
③裁判文書(刑事事件)


そして、これらは保存場所が異なる。
①は各裁判所、②は第一審の裁判所、③は第一審の裁判所に対応する検察庁、である。
さらに、保存年限も法律で定まっており、例えば死刑判決が出た刑事裁判の場合、裁判書(判決書など)は100年保存となっている。
そして保存年限が来た場合、学術的に必要と判断されない限りは破棄するということのようである。

ただし、期限の切れた民事判決原本は国立公文書館にすでに移管されており、つくば分館で公開されている。
また、今回のヒヤリングでも、基本的には文書の国立公文書館への移管には肯定的な姿勢を見せていた(ただし刑事訴訟の証拠などは否定的)。司法側にとっては、国立公文書館が国家機関だろうが独法だろうがあまり関係がないらしい。
「司法の独立性」ということは話していたが、公文書管理についてはそれほど抵抗はないという感じではあった。

次に立法である。
国会は憲法第57条で衆参両議院の議事録を保存公開することを義務づけられている。これはネットでもすでに検索できるようになっており、私もよく利用している。

しかし、問題は他の文書についてである。
まず、衆議院と参議院の文書管理システムは基準が揃っていない。また、「現有文書」にしか目が行っていなくて、保存公開という概念がほぼ無い。
保存した文書は憲政資料館に送られているらしいが、あまり移管もされていないみたいだし、憲政資料館が衆議院管轄だから、参議院の文書は一切送られていない。
別に、衆議院が参議院を嫌っているということではなく、そういったことを考えたことがないようなのだ。

それにつけても、出席している担当者の答弁もレベルが低すぎて愕然とする。
ヒヤリングに出席するというのだから、一番この問題に詳しい人が来ているはずなのに、応答が意味不明にも程がある。

例えば、議員の要望に応じて調査してまとめた書類は表に出せないと衆議院は主張している。
どうも、衆議院の解釈では、頼まれて作った文書は「私文書」のように捉えているみたいなのだ。
ここに菊池光興国立公文書館長が噛みついて、そういう書類も各省庁は公開対象にしていると主張したのだが、笑えるくらいに答えがとんちんかんなものしか返ってこない。(P28-29)
菊池館長が最後キレ気味になっているのを見て、共感せざるを得なかった。

衆議院や参議院は、これまで情報公開制度も一切無く、職員の裁量で見せるか否かを決めていた。(今年4月に一部の資料(これも調査資料は含まれていない)は請求に応じるようになった。)
つまり、文書管理や情報公開への関心が全くないのである。

この答弁を見ていて、おそらく情報公開法施行前の各省庁はこんなだったのかもしれんなと思った。
そう考えると、現在の各省庁の対応がいかに改善されたかがわかるから、法律ができることは偉大だと改めて思う。
やはり、公文書管理法を制定し、そしてきちんと運用をすれば、10年後には絶対に文書管理も情報公開も進むのだと確信を持って主張できる。

この後に、最終報告案の話があるのだが、今回は省略。最終報告が出たときか、次回最終回の第12回の議事録とともに解説をしようかと思います。
今回はここまで。

最終報告(上)へつづく
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