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自民党が野党の資料請求を事前検閲していた話について [情報公開・文書管理]

昨日(今日の朝刊)の朝日新聞の記事。

「野党の資料要求、事前提示を」 自民が全省庁に要請
2008年10月2日21時35分 朝日新聞

 自民党国会対策委員会が全省庁に対し、民主党など野党から資料要求があった場合は事前に自民党側に提示するよう求めていたことが2日、明らかになった。内閣総務官室が自民党国対の要請を取り次ぎ、すでに実施していた省もある。野党側は「事前検閲だ」と反発。国会議員の調査活動が自民党の都合で狭められる懸念も出ている。

 内閣総務官室によると、自民党の村田吉隆国対副委員長が9月12日、各省庁の官房長に「民主党の国対委員長に、各府省の事務負担軽減の観点から資料要求のあり方などについてのルール作りを申し入れている。既存の資料を除き資料要求の実態を把握するため、事前に個別に自民党国対に相談して欲しい」と要請。内閣総務官室が各省庁の国会担当者に指示したという。

 これを受け、農水省が9月12日付で「野党からの資料要求には、各省庁限りの判断で資料を提出することは厳に慎み、自民党の国対筆頭副委員長に相談すること」という文書を作成し、省内に通知していたことがすでに明らかになっている。

 財務省の杉本和行事務次官は2日の記者会見で、事実関係を認めたうえで「議院内閣制なので、国会対策などで政府と与党が連絡を取ることは特に問題はない」と強調。村田氏は1日、記者団に「ルールづくりのために実態把握が必要なのでご相談くださいと申し上げた。資料を止めたことは全くない」と語った。

 麻生首相は2日の参院本会議で、「実態を把握するため、自民党から各省に情報提供を依頼したものと理解している。与野党間でルール作りを進めていただくことも期待している」と答えた。

 国会議員による資料要求は憲法に基づく国政調査権の発動とは異なり、あくまで任意の請求。しかし、ねじれ国会で、各省庁とも野党の要求を無視できなくなり、「居酒屋タクシー」や「消された年金」などが民主党の資料要求で明らかになっている。

 野党の資料要求についての自民党国対との協議は、以前から一般的に行われていたとみられ、杉本次官は2日の会見で「従来から必要に応じて与党の国対と相談している。相当昔からやっている話で、改めて今回(要請が)あったと理解している」と語った。

 民主党の菅直人代表代行は2日の記者会見で「与党が直接、役所の資料の管理までコントロールするのは民主主義を破壊する行為だ」と批判。同党は6日から始まる衆院予算委員会でも追及する方針。

 内閣総務官室は内閣の事務部局として国会との連絡に当たり、内閣が予算案や法案を国会に提出する際の窓口。
(引用終)

さて、この問題、ずっと私がブログで取り上げている「公文書管理問題」とものすごく関連が深いのである。
私が注目したのは、太字にしておいたが「各府省の事務負担軽減の観点から」、野党の資料請求を「調整」しようとしているという点である。
つまり、記事を見ると、民主党などからの資料請求が「多すぎる」から、それを「減らす」ためのルールを作ろうということを自民党と各省庁が検討しているということのようなのだ。

野党からの資料請求が「多い」から困るというのは、それは省庁側が説明責任を放棄しているという事に他ならない。
本来そこでやらなくてはならないのは、「請求を減らす」ということではなく、「請求に迅速に対応できるシステムを作る」ということに他ならない。

「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」が7月に出した「中間報告」では、「公文書管理のあるべき姿」として、まず第一に公文書の「作成・整理・保存」の問題が取り上げられている(4~8頁)。
そこでは、各省庁において、文書の書式やファイルの編集方法のルールが明確でないことや、個人単位で文書を持っているためにファイリングが職員任せになっているなどが問題点として取り上げられ、その改善の必要性が強調されている。
つまり、なぜ野党の要求が「面倒」になるのかというのは、日頃からファイルに系統立って資料をまとめるという「整理術」がないからである。
もし、ある問題についてきちんと一つのファイルに情報をまとめていたのであれば、要求があったときにそれをそのままコピーして渡せばよいだけである。
これが日常的にできていないので、請求があったときにあわててかき集めるから時間も労力もかかるのである。

また、請求があったのならそのまま渡せば良いのである。自民党国対に相談するというのは要するに隠れ蓑であり、省庁側が都合の悪い資料を選別して相手に渡そうとするための方便である。
その選別にも時間を掛けているから、「事務負担」がかかるのである。何も考えずに全て渡してしまえば済む話なのだ。

そもそも、公務員の仕事は、国民に対する説明責任を負っている。
そして、文書を整理すると言うことは、自分たちの仕事をやりやすくするためだけではなく、最終的にそのファイルを見れば説明責任を果たせるという考え方で行われなければならないのだ。

今回の問題で、各省庁の発想が、公文書管理で今行われようとしている改革の逆を行っていることが、これでまた一つ浮き彫りになったと思われる。
この問題は「自民党の検閲」が問題なのではない。その根本にある考え方そのものに問題があるのだ。
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