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【連載第10回】(上)「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

第1回はこちら
「中間報告」まとめ前編はこちら/後編はこちら
第9回はこちら

「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の続きです。
今回は第10回目(9月4日)の議事録を取り上げます。
まだ議事録が公開されていませんが、歴研のシンポジウム前に8月15日まで募集していた意見募集の結果について先に紹介しておきたいと思います。

その前に少しこの会議について余談を。

この9月4日の会議は、すでにブログで書いたとおり、福田首相が退任宣言をした直後に行われたものであり、福田首相も冒頭に出席して話をしていた。
要旨が有識者会議のHPに載っていたので前半部分を引用しておきます。(読みやすいように改行を入れます。)

 委員の皆様は御多忙の中この会議に出席いただき、また、本年3月から議論いただき感謝。
 公文書館制度の強化への取組について日本は世界に後れを取っており、本来もっとしっかりしていないといけなかったが、ぽっかり穴があいたようになっている。
 4年前にも重要政策の一つとして取り組んだ。
 そもそも公文書は、国民に政府の情報を提供する、世の中に事実を知らしめるための民主主義の原点であり、国民共有の財産である。
 文書をきちんと作って、収集していかねばならない。しかし、我が国の公文書制度は残念な状態と言わざるを得ない。
 他の国のように立派なものに追いつかないといけない。文明国である我が国としてふさわしい制度や施設が必要。
 具体的な姿は作っていただきつつあるが、最終報告に向けてさらに御議論をいただき、よろしくご指導をお願いしたい。
 お願いしておきながら、ご存じのように総理を引くこととなってしまい申し訳ない。私自身関心のある分野。機会があれば、新しい立場でもまたしっかりやっていきたいと思っている。
 政権は変わるが、重要政策は変わらない。


また、前回の有識者会議で、改造前の大臣であった上川陽子氏が、中間報告を福田首相に提出したときのことを次のように語っている。

 当日は10分ほどの、大変お忙しい中でのお時間をとっていただきましたが、結果的に見ますと、30分を優に超えるようなお時間となりまして、大変細部にわたってのご意見等も承ることができました。特に、印象深かったことといたしましては、総理の方から、将来の人員規模について、ここでの最後の議論になっておりましたけれども、数百人とした点につきましては評価をいただくことができました。
 また、専門的な人材、そしてその確保の必要性、また養成のあり方、このことにつきましても触れていただきましたし、電子文書化、そしてデジタルアーカイブへの取り組み、このことについてもお触れをいただきました。
 また、そうしたことに取り組む組織のあり方ということについてもお触れをいただきまして、このことにつきましては、この有識者懇談会の中でも大きなご議論になってきた点でありますし、同時にこれからの積み残された課題ということでの取り組みもこれから精力的に行っていただくべきことであるということでありまして、そういう意味では中間報告の方向性とそして総理のお考えが一致しているということを確認したわけでございます。
第9回議事録P20-21)

こういう発言を読んでいると、本当に福田首相はこの問題をよく理解していたのだなあと改めて実感する。特に人員規模の部分が重要だと福田の方から指摘しているところなどは、どこに一番要点があるかをよくわかっている。
何度も書いているけど、なんでこの時期に政権を投げたのか。絶対この法案の成立に、一議員としても関わり続けてほしいと願っている(今度の選挙で引退とかしないでしょうね!)。

さて、本題。
このブログでも紹介したように、8月15日まで、有識者会議の「中間報告」に対する意見募集が行われていた。
私も自分の周囲の人に呼びかけたり、他の団体などにも呼びかけて話を広げてもらった。
もちろん私も書いて送った。

その意見が、匿名にされた上で有識者会議の資料としてアップされている。→こちら
それで意見総数なのだが、

合計71名(内訳 個人57名 団体14)

・・・・。
うーん。また微妙な数だ。
パブリックコメントは多くの省庁が募集するが、積極的な広報が全くなされないため、ほとんどが数件しか来ないのが普通。
その中では健闘したとは言えるんだろうが・・・。せめて100は行くかなあと思ったが、そこまでも行かなかったか。

個人のコメントの内容から見て、確実に歴史研究者と思われるのは20数件、アーカイブズ関係者が10数件。
私から見ると、この問題に歴史研究者よりも関係のあるアーカイブズ関係者らしきコメントが少ないことが気になった。
もちろん、記録管理学会など、団体として意見を送付している人が多いということもあるだろうが、別に団体で送った後に自分で意見を送ったって良いはず。
歴史研究者の関心がなかなか向かないというのは、自分の実感からしてわからんでもなかったが、思ったよりアーカイブズの方でも関心が低いんだろうか。少し気になるところだ。

さて、内容であるが、ほぼ中間報告礼賛と言って良いと思う。
特に、「レコードマネージャー」や「アーキビスト」といった専門家の養成という点に意見が多かった。これは団体の意見の多くがここに触れていたというのも大きい。
また、強力な公文書管理機関を要望する声も非常に多かった。

300字という制限があったからか(実際には無視している人も多かったが→もっと書けば良かった(泣))、中間報告に沿った意見が多く、それほど突拍子のない意見があるという感じではなかった。
ただ、人によって力点が違っており、様々な人がこの政策に期待をしているのだなということはわかった。

あと宮内庁への不満を書いているのは私だけではなくて驚いた(苦笑)。
外交史料館と書陵部をこの制度の中にどう組みこんでいくのかは、私にとっては一番重要なので、同士がいて心強く感じた。

詳しくは意見募集の結果の冒頭に、意見を要約したものが書いてあるのでそちらを見ていただければ。

第10回の(下)は議事録が公開された後に書きます。→アップしました
しかしこのペースだと10月の最終報告まで、あと2回ぐらいしかないのではないかなあ。少し時間が足りなくないか?
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