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【連載第3回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

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連続更新も3日目。
「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の第3回です。

今回は、第3回目(4月9日)の解説をします。
第3回目は、委員である高橋滋氏と宇賀克也氏の二人の行政法学者の報告を中心にして議論がなされた。

資料1が高橋滋氏の報告レジュメ。
資料2が宇賀克也氏の報告レジュメである。

まずは高橋滋氏の話から。全部は紹介しきれないので、要点のみ。(レジュメ自体が文章化されているので読んでもわかりやすい。)
高橋氏は、1月に行われた歴史学研究会総合部会で私と一緒に報告をされた方である。
その時は、2006年に行われていた「公文書管理法研究会」の政策提言の話をされていた(一番下にAmazonのリンク)。
これは、福田官房長官時の公文書の有識者懇談会の答申を受けて、実際に文書管理法を作ったらどのようになるかということを、NIRA(総合研究開発機構)の委託事業として行われたものである。
高橋氏は、この研究会の座長をされていた。
今回のレジュメのP1の「はじめに」の③で「「公文書管理法研究会」の作業からは、積極的な方向に一歩進んだ段階にあるものと認識している」と高橋氏が述べているということは、研究会案よりももっと厳格な公文書管理法の制定を想定しているということが伺える。

さて、高橋氏のレジュメの中で一番重要だと思うのは、「2 定義に関すること」の④「組織共用文書」の概念の拡大の問題である。
情報公開法は、その公開対象となる文書を「組織共用文書」に限っている。
つまり、個人が作ったメモとかは公開対象にならない。あくまでも、「組織」が「共用」している文書のみである。
そのため、どうしても「決裁文書」(最終的に政策が決まった時の文書)しか残らないのである。

だが、これだけでは残す意味が非常に低下する。
普通、公文書の公開を要求する人は、「どのような経緯でその政策が決まったのか」に興味があるはずである。
でも、現在はそのような「経緯」の文書については、「組織共用文書」の枠外に置かれているケースがほとんどである。
しかし、個人のメモのレベルまで残せと言われた場合、その管理やファイリングの仕方などが煩雑になりすぎる。

そこで高橋氏は「記録保存型文書管理」の視点から文書管理を行うべきだとする。
そして、その「適切な管理保存」とは、、「当該意思決定の存在、過程、経緯を後に合理的に跡付けることができるために最低限度必要となる資料を残す」ということであると明確に定義した(P5)。
言われてみれば当たり前のことなんだが、要するに「個人のメモ」か「組織共用文書」かという問題ではなく、「その政策がどうやって決定された(決定されなかった)のかがわかるように文書を残す」ということである。

それ以外にも、高橋氏は、公文書担当官庁に公文書の作成保管を評価監視する権限を与えるべきだと主張されており、これは前回の資料1の1案(アメリカ型)の構想に非常に近いものだと思う。
また、最後に公務員の文書管理に関する技能習熟の必要性について強調されていたのが印象的である。
これは後の議論の中で出てきていたのだが、ドイツでは、公務員の職に就くために行政専門の学校に3年間通わなければならず、そこで行政文書の作成から保存までのやり方を徹底して学ばせるという。そのぐらい、文書管理の重要性を公務員にたたき込んでいるのは素晴らしいと思う。


次に、宇賀克也氏の話であるが、3回前のブログで書いた講演会の話と内容が完全に重複するので、4月24日のブログを参照してほしい。

1点だけ繰り返しを承知で述べておくと、文書管理の「司令塔」となる官庁(部局)の必要性を強調しているので、やはり高橋氏と同様、前回の資料1の1案(アメリカ型)の導入を強く主張しているというのが印象的である。

これに基づいて討論がなされたわけだが、気になる発言をいくつか拾ってみたい。

・アメリカのNARA(連邦記録管理庁)の権限についての質問。
→NARAは、長官が大統領によって任命されるために非常に地位が高い。また、文書を捨てるか残すかも全てNARAが権限を握っていて、勝手に捨てると罰則がある。つまり、文書の作成から破棄保存までの、全ての文書のライフサイクルを管理する権限を有している。

・国民、公務員、国立公文書館のそれぞれにメリットが生まれることをアピールするべきである。
→これは最近のアーカイブズ学者や公文書館関係者の方が強調されることでもある。つまり、国民にとっては情報公開、公務員にとっては情報の整理、公文書館にとっては公文書のライフサイクルの掌握、という三者にとってメリットがあるということ。
これは、抵抗勢力である官僚向けによく使われる言説である。

官庁として設置する法律は、結局政治の判断の問題である。(前回も書いたように公務員の人数を増やすことには、行革推進法のために、全体的に消極的になっている。)
→朝倉敏夫委員が「超党派議連という形でなぜできない」(P26)と主張しているのは全くもって同感。今回の公文書管理問題は、自民党と公明党だけでなく、民主党や社民党、ひょっとすると共産党ですら乗ることができる話のはず。そうすれば、抵抗勢力たる官僚に対して、相当なプレッシャーになるはずだ。

やはり全体としては、「公文書管理庁」設立の方向へ向かっているような感じではある。
ただ、やはり最後まで残るのは、公務員の定数の問題となる可能性が高い。つまり、高度な政治判断が必要ということである。
福田康夫政権が次の通常国会まで命脈を保っていれば、たぶん首相判断で行けると思うがどうやら可能性は微妙な感じ。
さて変わった場合、麻生政権?でも民主党政権でもいいけど、首相がその「決断」をしてくれる力を持てるかどうか。

以上で3回目おしまい。
4回目以降は、6月上旬に、また今回のようにまとめて集中連載をする予定。
こんなに長い文章を3回分お読みいただき感謝します。少しでも、この問題に興味を持っていただけたら幸いです。

第4回をアップロードしました。

政策提言-公文書管理の法整備に向けて

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本



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