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【連載第2回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

第1回はこちら

「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の第2回です。

前回説明し忘れていましたが、連載1回=議事録1回分という考えでやっています。
なので、前回は第1回目(3月12日)の分の解説だったわけです。
ちなみに、議事録や参考資料は、上記の有識者会議のリンク先ですべて公開されています。

今回は、第2回目(3月31日)の解説をします。

第2回で話し合われたのは、主に「国立公文書館のありかたをどうするか」という点である。
前回説明したように、国立公文書館は「独立行政法人」になっており、「国家機関」ではない。
そのため、文書管理に関与しようとした場合、国家機関でない国立公文書館に権限が賦与されることは考えにくいのである。


さて、本論に入る前に、今回の重要な裏事情(裏ってほどではないが)を先に説明。

国家公務員は定数が法令で決まっている。
例えば、宮内庁ならば、侍従は何人までとか、どの部署に定員が何人までとかいったように、人数が厳しく統制されている。
そのため、ある部署で足りないから配置を換えるという企業ではあたりまえのことが、簡単にはできないシステムになっている。

さらに、行政改革推進法の影響で、国家公務員の定数削減が義務づけられている。→詳しいことを知りたい人はこちら
そのため、どの省庁も定数削減ノルマを一律に課されている。
だから、どこかを増やそうとした場合、どこかの部署を減らさなくてはならない。

法で決まっているわけだから、これを変えようとするには国会での議決が必要になる。
しかし、どこの省庁も自分たちの所が減らされているわけだから、特例でどこかの省庁の定員を増やすということには、横並び体質から反発が起きやすい。
つまり、定数を増やす場合には政治的判断(政治的突破力と言ってもよい)が求められるのである。

これが前提の話。


さてそれでは今回の解説。
まず今回の重要資料の紹介。

資料1 文書管理行政と国立公文書館について(案)〔PDF〕
資料2 文書のライフサイクルにおける課題(例)〔PDF〕

資料1は、文書の作成から廃棄(保存)までの管理を行う場合、官庁と国立公文書館の関係をどう変えればよいかという案を4点出している。
今回の話の肝なので、詳しく説明する。(○はメリット、×はデメリット)

1.内閣府に公文書管理庁を置く。(アメリカ型) 
 ○文書管理サイクルを通じた一括管理が可能となる(アメリカのNARA(連邦文書管理庁)がモデル)。
 ×官僚組織の組み替えの困難さ。組織・定員の問題。

2.現在の体制を維持したままで、機能の強化を図る。
 ○現行制度をベースとするので、スムーズに強化に乗り出せる。
 ×独法である以上、権限拡大には疑問符。

3.国立公文書館を「特別な法人」として、関係省庁と強力に調整ができる権限を与える。(英国型)
 ○法人の独立性と権限強化を両立できる。
 ×そのような法人は存在していないので、新たな概念を作る必要。また結局は独法であることは変わらないので権限強化に限界。

4.独法化以前のように、内閣府の一部局として国家機関に戻す。
 ○国家機関としての位置づけが明確になる。
 ×国家公務員制度の中に入るため、定数や予算の縛りがきつくなる。元に戻るだけでは内閣府の一部局になるにすぎない。

また、2頁目に外国の国立公文書館が、政府内でどのような位置づけがされているのかを一覧表にしたものがある。

資料2は、現在の文書のライフサイクルにおける課題をわかりやすく表にしたものである。
例えば、「そもそも重要文書が作成されない」「ファイル管理簿とファイルの保存状況が一致しない」「重要文書が勝手に廃棄されたり、保存延長されたりする」などがある。
非常にわかりやすくまとめてあると思う。

さて、それでは議事録を見てみる。
今回は、内閣府の方から、資料の説明があり、具体的に文書のライフサイクルを管理するにはどうすればよいのかについて、特に管理機関をどのように位置づけるかということが話し合われた。

委員の意見の圧倒的多数が、資料1の1案の支持者である。
これは結構意外ではある。
どうしてもこういった会議では、現実的な落としどころへと誘導されるという傾向が強いように感じるが、この中では一番困難な道である(と同時に、実行できれば一番効果が高い)1案を推す意見が圧倒的に多い。
前回最後に紹介した戸井田みのる政務官が、「公務員の定員数がどうのというのは気にせず、どれが理想なのかを打ち出して欲しい」と主張しているように、政治家の側もある程度理想主義的なものが出てきて構わないという感じも見受けられる。
ただ、官僚の答弁者は、定数の変更の困難性については強く主張していたが。

今回は個々の委員の発言を取り上げて解説しないが、大まかに次のような意見が主流だったように思う。
・公文書管理庁設置が理想。国立公文書館も国家機関へ。ただし、人事や定数の自由(専門家を雇い入れるなど)の確保を法律の文章に入れる必要がある。
・実際に、公文書の作成から廃棄保存までの全てに関わる機関を作ろうとした場合、1案以外には考えにくい。

そして、4案を支持する人も一部いたのだが、その発言に対して、オブザーバー参加の菊池光興国立公文書館長が、「ただ昔の立場に戻るだけなら、保管・保存業務だけをやっていれば良いという話になりかねないし、それは世界の主流に反している」とやんわりとではあるが、かなり強力に反対をしていたのが印象的であった。
国立公文書館としても、できれば1案で行きたいと思っているのかなと感じた。

いずれにしろ、議論の流れは、明らかに文書管理業務を担当する部門に、強力な管理権を与えるべきというのが、官僚・政治家も含めての流れのように感じる。
この流れで行くなら、中間報告は「公文書管理庁」設立案として出てくる可能性が強いのではないだろうか。
こういった流れを止める傾向のある官僚が、強い抵抗をしているようにも見えないので、やや期待している。

以上第2回はおしまい。
会議で議論になっていた「どのような種類の文書まで残すのか」という話は、次回の高橋滋氏の報告と絡めて書きます。

あと、ちょっとうれしかったこと。
高橋伸子氏と尾崎護座長のやりとり。少し長いけど引用。(P15~16)

○高橋委員 
ただ、各省庁の中で気になる点が幾つかあるんですけれども、1つは宮内庁ですが、これはどうなるんでしょうか。私も学生時代に宮内庁の書陵部には入れていただいたことがあるんですが、今も歴史的なものは一般閲覧をしているようですが、文化的とか学術的研究の部分というのをどこまで公開してくれるのかというあたりをどうするのかという問題が気になります。
それともう一つは、外交、防衛ということで、外務省とか防衛省の持っているものに関しては(中略)外務省とか防衛省のほうは国家機密とかセキュリティーの問題でいろんなことの公開に関してかなり独自の判断がおありのようなんですね。ですので、そういったものがどうなるのかということに関しても国民的に関心を持っておりますので、御検討いただけたらと思っています。
○尾崎座長
宮内庁のことは余り考えてみたことがなかったんですけれども、なるほど、そうですね。外交資料、防衛資料についてはちょっと特殊性はあると思いますけれども、今はだからちょっと考えが分かれていますね。それをどうするかですね。諸外国の話を聞くときに一度そこを聞かせていただきたいと思います。

よくぞ、宮内庁、外務省、防衛省のことを取り上げてくれた!
この点は重要な話なので、ぜひ忘れないでほしい。

次回へつづく→第3回
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