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「眞子様萌え~」!―皇族の萌えキャラ化に思う [天皇関係雑感]

以前から紹介したかったのだが、うまく分析できなくて書こうか迷っていたネタを、話題提供としては面白いと思うので書いてみようと思う。
論じるというよりも、「どう考えればよいのだろうか」という疑問提示みたいなものです。

まずは、こちらを見てほしい。
ちなみに、かなり「電波」な曲が大音量でくるので、そういったことに免疫がない人は、見ずに下の文章へと行ってほしい。(周りに人がいないことを確認した方がよいかも。)


↑ニコニコ動画のアカウントを持っていない人は、You tube→こちらへ

流れている曲は「ひれ伏せ愚民どもっ!」という曲で、IOSYSという音楽集団が作成したもの。
東方Projectという同人シューティングゲームの音楽をアレンジしたものらしい。曲で「かぐや」と言っているのは、この曲が蓬莱山輝夜(かぐや)というキャラクターをモチーフにしているからのようだ。(Wikipediaでここまでは調べたがそれ以上は私にはよくわからない。)

さて、別に取り上げようと思ったのはこの曲の方ではない。
「絵」の方である。
どこかで見たことのあるような・・・、とは思わないだろうか。
「秋篠宮眞子内親王」である。
それをデフォルメして、萌え絵にしてあるのだ。
皮肉でもなく、本当に「うまい」と思う。良く特徴を捉えている。

この画像をまとめてみたい場合は、こちらのサイトを見てほしい。
秋篠宮眞子様御画像保管庫
このページの「マコリンペンイラスト保管庫」を見ると、絵の一覧がある。

初めてニコニコ動画でこれを見たとき、天皇制研究をしている私でもカルチャーショックがあった。
皇族を「萌え」の対象にするというアイデアがそもそも考えつかなかった。
もちろん、女性週刊誌などによる皇族の子どもたちを愛でる報道などは、現皇太子が子供の頃からあったし、そのときに3兄妹は「なるちゃん」(徳仁(なるひと))、「あーや」(礼宮(あやのみや))、「さーや」(清子(さやこ))と呼ばれていたことも知っている。
でも、それは大人が子供を「かわいい」ものとして見る視点であったように思う。

この「萌え」は、「かわいい」の延長上にあるんだろうか。
「かわいい」と聞くと、すぐに大塚英志氏の論考を思い出す。
大塚氏は、昭和天皇が重態であった1988年末に、記帳に来る女子高生が天皇を「かわいい」と述べたことを、少女達が自分の中にある「無垢」と「孤独」を天皇に見いだしたのではないかと述べた。(「少女たちのかわいい天皇」『中央公論』1988年12月号)
でも、これとは違うような気がする。

むしろ、松下圭一氏の「大衆天皇制」に近いというべきか。
皇族の商品化が進んだという意味では、石田あゆう氏が女性週刊誌の皇族女性の写真分析で述べているような「現代消費社会のファッション天皇制」の延長で見た方が良いのだろうか。(『ミッチーブーム』文春新書)

私はサブカルの知識は少しはあるけど、これをどう分析して良いのかは正直とまどう。
ネット上の言説をいくつか見ていると、「不敬」と罵る人がいる反面、「萌え絵にすることこそ敬愛の証」という人もいるようだ。

残念ながら、今のところこのぐらいしか書きようがない。サブカル研究の人で誰かこういうことを研究してないんだろうか?探せばでてくるのかしらん。

最後に、一番納得した説。
「眞子様は漫画やゲームに出てくる「お姫様」をリアルに表現できる数少ない日本人」
なるほどなあ。

↓おまけ。

女皇の帝国 内親王那子様の聖戦 (ワニノベルス)

女皇の帝国 内親王那子様の聖戦 (ワニノベルス)

  • 作者: 吉田 親司
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2007/06/05
  • メディア: 新書



女皇の帝国2 内親王那子様の聖戦 (ワニの本 WANI NOVELS 254)

女皇の帝国2 内親王那子様の聖戦 (ワニの本 WANI NOVELS 254)

  • 作者: 吉田 親司
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2008/02/21
  • メディア: 新書



少女たちの「かわいい」天皇―サブカルチャー天皇論 (角川文庫)

少女たちの「かわいい」天皇―サブカルチャー天皇論 (角川文庫)

  • 作者: 大塚 英志
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫



ミッチー・ブーム (文春新書)

ミッチー・ブーム (文春新書)

  • 作者: 石田 あゆう
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 新書


(追記)2008/3/29
『論座』の3月号に、森暢平氏と東浩紀氏の対談が載っていて、ヒントになることが書いてあった。簡単に抽出してみると、

天皇制がすでに国全体を象徴する全体性を喪失してきており、その中では皇室はサブカルチャー的な消費をされるのは不可避であるという。(それだけでなく、皇室もまたサブカルチャーの内部に入っていく。)
インターネットの普及によって、天皇制への語りは様々な人が多様に表出するようになってしまった。そのため、昔の語りをし続ける皇室記者や皇室ジャーナリストの語りが「浮いて」きているのではないか。
そして、天皇制というものを考えることが、日本の中心を考えることではなく、むしろ周辺の問題となってしまったのではないか。

私としても、このあたりは実感としてそれなりに同意できる点が少なくない。
天皇制を研究している自分が、まさしく歴史学の周縁に属しているというのは、おそらく30年前には考えられなかったのではないだろうか。(それが悪いことだとは思わないが。)
また、天皇制そのものが、中心性を失ってきているというのも、ずっと前から私自身が考えてきていることでもある。
(私は、「日の丸」「君が代」すらも天皇制と切り離されていると考えている。)

ただ、ではなぜ天皇制をいま研究するのかという問いが立つ。私の現状認識は近代的天皇制が変容しているというものであるのに、研究自体は近代的な(特に戦後)天皇制の形成過程である。
私自身は、形成過程を見ることによって、現在の変容の原点を浮かびあがらせようと考えて自分を納得させているのだが、そのズレが自分の研究上の悩みにつながっているのかなとも思う。

最近、自分の先生からは、学部の卒論でやっていたような、戦後の世論調査や皇室アルバムの視聴率の変遷などから見た国民の天皇制意識の変遷みたいな研究に戻った方が良いんじゃないのかということも言われたりしているのだが、「歴史研究者」という自己規定からの意地もあって、まだそういう「ウケ」そうなネタには移行できない。

今日、歴研の総合部会で、安丸良夫氏の近著『文明化の経験』の合評会があって、聞いてきたのだが、「歴史研究者の生き様」とはどのようなものであるのかということを考えさせられた。自分の「歴史研究者」としての主体形成への悩みは、産みの苦しみなのだと思いたい。

内心吐露みたいな話になってしまった。
ちなみに、この『論座』の特集は面白い。出ている人が皆違うことを述べていて、全く統一感(同じ土俵すらあるのか)がないのも、現在の天皇制論議の特徴なのかなと思う。
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ダグラスリーフ

象徴天皇制又は戦後天皇制は、自分なりに考えると、天皇が日本国根本原理から離脱した制度と考えています。
もっとも日本国原理とは何ですかと問われると、答えに窮するのですが。
しいて言えば欧米にあるキリスト教のようなものでしょうか。
伊藤博文は大日本帝国憲法を起草するにあたって、天皇・皇室を日本国を支える根本原理に位置づけようとしたと、どっかの本で読んだ気がします。
本の名前が思い出せずごめんなさい。
戦後日本政治は、良くも悪くも根本原理なきままに、その場その場で行ったものと考えています。
しかし、経済発展に関してだけは、比較的容易に国民同意が得られたと思います。
高度成長の原因の一つは、象徴天皇制にあるのかと、個人的に考えています。
天皇制は、過去を見ると、中心部に鎮座するかと思えば(後醍醐天皇など)、思いっきり周縁部(江戸時代など)に行くなど、まるでシーソーゲームです。
象徴天皇制を研究する瀬畑さんは、間違ってないと私は思います。
上記の素人考えの文中については、独断、偏見が入っている事お許しください。

by ダグラスリーフ (2011-06-04 01:37) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> ダグラスリーフさま

最近の保守系の論者の人は、むしろ現在の象徴天皇制が根本原理みたいな話をする人が増えましたね(帝国憲法下がむしろ例外みたいな)。
中曽根とかは昔からそういうことを話してますけど。

by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2011-06-04 15:30) 

ダグラスリーフ

最近の保守系論者が、象徴天皇制こそ根本原理である、と言っている事にびっくりしました。
しかも、そう主張する人が増えている事にあらためてびっくり。
中曽根さんが、昔から上記の事を話している事、はじめて知りました。
何が何やら、頭がこんがらがってきました。
図書館に行って、大日本帝国憲法など、色々勉強したいと思います。
瀬畑さん、ありがとうございます。
by ダグラスリーフ (2011-06-05 00:01) 

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